135 / 247
第一部
リュドヴィック【2】
しおりを挟む
それから、途方に暮れていたモニカたちに気づいた他の使用人によって、三人は応接間に案内された。
さすが侯爵家と言えばいいのか、客間は赤い絨毯が引かれており、調度品も豪華なものであった。
そんな部屋を眺め回していると、パタパタと足音が近づいてきて、客間の扉が勢いよく開かれたのだった。
「マキウス! モニカさん!」
「姉上!」
「お姉様!」
客間に駆け込んで来たヴィオーラは、どこかに出掛けようとしていたのか、外出着であった。
ヴィオーラはソファーから立ち上がったモニカに抱き着くと、安堵の息をついたのだった。
「良かった……! 騎士団から貧民街で強盗に襲われていたと聞いたので……。マキウスのことだから、大丈夫だとは思っていましたが……。無事で本当に良かったです」
「お、お姉様……」
急に義姉に抱きしめられて、緊張と困惑でどうすればいいか分からず戸惑っていたモニカだったが、ヴィオーラはすぐに身体を離すと、マキウスと同じアメシストの様な目を細めて、泣きそうな顔で笑ったのだった。
「すみません、お姉様。ご心配をお掛けして……」
「いえ。いいのですよ。それよりもリュドヴィック様をお連れ頂き、ありがとうございます。これから、探しに行こうと思っていました……」
すると、ヴィオーラは一点を見つめまま、アメシストの様な目を見開いて固まっていた。
ヴィオーラの視線を辿って振り返ると、そこには同じ様に、澄んだ青い目を見開いてヴィオーラを見つめ返すリュドヴィックの姿があったのだった。
「貴方が……リュドヴィック様ですね」
「ええ。ご挨拶が遅れました。私はリュドヴィックと申します。この度は我が身元をお引き受け頂きありがとうございます」
「こちらこそ、お迎えが行き違った様で申し訳ありません。
私はヴィオーラ・シネンシス・ブーゲンビリアと申します。現在のブーゲンビリア侯爵です」
ヴィオーラが一礼するのに合わせて、リュドヴィックも胸に片手を当てて、二人は優雅に挨拶を交わしたのだった。
ヴィオーラの説明によると、リュドヴィックを迎えに行かせた侯爵家の使用人から、リュドヴィックが待ち合わせ場所に現れなかったと聞いて、使用人たちと行方を探していたらしい。
その最中に、モニカたちが貧民街で強盗に襲われていたと騎士団の関係者から聞いて、心配していたとのことだった。
さすが侯爵家と言えばいいのか、客間は赤い絨毯が引かれており、調度品も豪華なものであった。
そんな部屋を眺め回していると、パタパタと足音が近づいてきて、客間の扉が勢いよく開かれたのだった。
「マキウス! モニカさん!」
「姉上!」
「お姉様!」
客間に駆け込んで来たヴィオーラは、どこかに出掛けようとしていたのか、外出着であった。
ヴィオーラはソファーから立ち上がったモニカに抱き着くと、安堵の息をついたのだった。
「良かった……! 騎士団から貧民街で強盗に襲われていたと聞いたので……。マキウスのことだから、大丈夫だとは思っていましたが……。無事で本当に良かったです」
「お、お姉様……」
急に義姉に抱きしめられて、緊張と困惑でどうすればいいか分からず戸惑っていたモニカだったが、ヴィオーラはすぐに身体を離すと、マキウスと同じアメシストの様な目を細めて、泣きそうな顔で笑ったのだった。
「すみません、お姉様。ご心配をお掛けして……」
「いえ。いいのですよ。それよりもリュドヴィック様をお連れ頂き、ありがとうございます。これから、探しに行こうと思っていました……」
すると、ヴィオーラは一点を見つめまま、アメシストの様な目を見開いて固まっていた。
ヴィオーラの視線を辿って振り返ると、そこには同じ様に、澄んだ青い目を見開いてヴィオーラを見つめ返すリュドヴィックの姿があったのだった。
「貴方が……リュドヴィック様ですね」
「ええ。ご挨拶が遅れました。私はリュドヴィックと申します。この度は我が身元をお引き受け頂きありがとうございます」
「こちらこそ、お迎えが行き違った様で申し訳ありません。
私はヴィオーラ・シネンシス・ブーゲンビリアと申します。現在のブーゲンビリア侯爵です」
ヴィオーラが一礼するのに合わせて、リュドヴィックも胸に片手を当てて、二人は優雅に挨拶を交わしたのだった。
ヴィオーラの説明によると、リュドヴィックを迎えに行かせた侯爵家の使用人から、リュドヴィックが待ち合わせ場所に現れなかったと聞いて、使用人たちと行方を探していたらしい。
その最中に、モニカたちが貧民街で強盗に襲われていたと騎士団の関係者から聞いて、心配していたとのことだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる