ひこうき雲

みどり

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パフェ食べたいです②ショウコ

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あいの教育係ショウコは、この年初めて新人の教育係になった。


「新人に教えていると、自分も新しい発見があるから。」

と上司に言われたものの、年度初めには

難解者を押しつけただけでしょ、と思っていた。


クールビューティーなあいは自分とは正反対だと思った。

苦手なタイプだった。


他のスタッフから、ベラと呼ばれていた。

バレー部だと聞いていたので、

一緒に仕事をする時間は少ないのかと思いきや、

上司にずっと外回りをさせられていた。

本人は気づいていないかもしれないけど、

可哀想な子なのかも知れない、と思った。

すぐ辞められては自分の評価が下がるかもしれないので

ポジティブ発言を心がけた。


1日の業務の中で、あいの褒めるところを探して本人に伝えるという日課は

ショウコの中にも変化をもたらした。


あいは何ごとにも一生懸命で

半年もするとショウコとの息も合ってきた。


仕事柄、外で一緒に食事をすることも多かった。

あいは、いつも大盛りご飯をおいしそうに食べていた。

「あいはいつもたくさん食べるね。見てたら気持ちいいわ。」

「体が資本ですからね。」

「私、あいのことが羨ましいわ。

背高くてスタイルいいし。」

「えー私はショウコさんのことが羨ましいですよ。

いつもニコニコしてて、誰からも好かれるし、頭の回転も早くて

かわいいじゃないですか。」

ショウコは、裏表がなくお世辞を言わないあいのことが好きだった。

「なんか、あいは弟みたいな気がするわ。」

「そうかもしれないです。なかなかサイズの合う女の子の服無いんですよ。

このスーツもオーダーです。」


ショウコは不思議なことに気づく。

商談の途中、あいをつついて合図し

「お願いします。」と言わせると

それまで劣勢だった契約が成立することがある、ということに。

最初は偶然ひじが当たってしまったのだが。

毎回この手を使うのは違う気がする、と思ったショウコは

ここぞという時にのみ、あいをつついてみた。

他にも、取引先には、あいにキツく言われたい、という変なお得意様がいらっしゃった。


ショウコとあいの成績は部内でも上位だった。


私は霊感とかないけど、あのコ何か持ってるのかしら?

だから、バレー部はベラと呼んでいるのかもしれないわ。

たったひとつ言えることは

私は当たりくじを引いたってことだわ‼︎


冬のボーナスの明細書を見てショウコは

心の中でガッツポーズをした。


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