ひこうき雲

みどり

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ゆいの帰国⑦パクさんからの手紙

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しばらくして


ゆいは飲みものを提供し始めた。


ホソカワやケーサツ官たちにも先ほどのマダムKの話は聞こえていたが

直接本人から話を聞いたわけではなかったので

どう声をかけたらいいのか、彼らにはわからなかった。


ケーサツ官たちの所にゆいが来た。


ゆいは、飲みものを先に窓側席の男に渡した。

「どうぞ」

名前を呼びながら、ワザと彼の手前の方、通路側席の男の前辺りで渡した。

窓側席の男が、気が利かないヤツだな、と思いながら少し手を伸ばして受け取った瞬間に

ゆいはその紙コップに飲みものを注ぎ足したので、紙コップの飲みものは

溢れんばかりになった。

窓側席の男の腕はプルプル震え出した。

「オイ、これ、どうすんだよ!」窓側席の男は言った。

ゆいは無言で通路側席の男を指差した。

「えっ、オレ⁇」

仕方なく、通路側席の男は、窓側席の男が持つ紙コップの縁に唇をつけて飲みものを少し吸った。

量が減ったので、窓側席の男は手を引っこめた。

通路側席の男は警戒していたが、ゆいは何事もなかったかのように飲みものを渡した。

男たちは紙コップを交換した。




ゆいは最後にマダムKたちの所に来た。


飲みものを渡した後ふたりに話しかけられた。


「もう、中国支部から離れるの?」

窓側席の婦人が聞いた。

「はい。籍は置いたままで、しばらくフィンランドに行きます。

先ほど急に決まりました。期間は未定です。せっかくだからちょっと行ってみようと思います。」

とゆいは言った。

「あっ、それで、出勤する前にパクさんから手紙もらいました。

中国語を使わなくなると忘れてしまうかもしれないから、日本語で書きます、と

日本語で書いてくれました。」

ゆいはそう言うと、制服のポケットから手紙を出してふたりに見せた。


「これ見てください。1枚目にはずっと悪口が書いてあるんです。

あなたはご飯食べ過ぎです、とか、書類の仕事は早く片付けなさい、とか。」


「あらまぁ。」


「でも、2枚目にはこう書いてあるんです。

私はあなたの友人です。

困った時や助けが必要な時はいつでも連絡してきてください。

あなたがどこにいても、あなたの近くには私や私の華僑の仲間がいることを忘れないで。

私が行けない時は華僑の誰かが助けてくれる、って。

パクさん、いつもメガネの奥から冷たい目で見て

あなたバカね、っていつも言ってた。

パクさんいいヤツだった。」


「あら、私たちもいいヤツよ。」

「アメリカに来ることがあったら連絡ちょうだいね。

一緒に美味しい紅茶を飲みましょう。」


「はい。ありがとうございます。」

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