ひこうき雲

みどり

文字の大きさ
上 下
25 / 85

平次の親分③

しおりを挟む
その日、めずらしく平次は早く帰宅した。


そして、いつもと違う居間の雰囲気にすぐに気づいた。

平次は食卓の椅子に腰掛けながら

「何かあったのか?」と聞いた。


男児たちから夕方の出来事を聞いた平次は

ゆいと一緒に晩ご飯を食べながら

「それは杏たちが悪いな。」と言った。


「もう反省したから!ご飯食べさせてよ。」

と杏が言った。

男児たちは「腹減った」の大合唱をした。


「でも、ばーちゃんが晩メシ抜きって言ったんだろ?じゃあ抜きだ。」

平次がそう言うと、男児たちはガッカリした。


「おじいちゃんは、トミさんに、許してあげたら?って言わないの?」

とゆいが言った。

「トミさんの言うことには逆らえないからだ。」

と平次は言った。


ゆいは「どうして逆らえないの?」と聞いた。

「それはな、おじいちゃんがトミさんの子分だからさ。」

いたずらっ子みたいな顔をして平次は言った。


「おじいちゃんがトミさんの子分⁉︎」ゆいは目を丸くした。


「そうか、みんなはまだ知らなかったのか?そうか、そうか。」

平次は居間を見渡しながら笑った。


「ちょっとやめてよ。子どもたちが信じちゃうじゃないの。」

台所からトミが言った。


「すみません、親分!」

平次は背筋をピンとしてふざけてそう言った。

トミと平次、ゆいは笑った。


「親分、お願いします。もうしません。許してください。」

と杏が言った。

それを見た弟たちは「お願いします」「許してください」

と口々に言った。


「仕方ないね。じゃあ許してあげるよ。そこ片付けて。

 大きい子はこっちからご飯運んでちょうだい。」

男児たちの顔がパアッと明るくなって、配膳が始まった。

トミはちゃんとみんなの分のご飯も用意していた。


平次はゆいにウインクした。




しおりを挟む

処理中です...