ひこうき雲

みどり

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ねぇ、蹴鞠って知ってる?

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ある日の朝


トミは社員食堂の出入り口をホウキで掃いていました。


すると、それを見たマツが慌てて走って来ました。


マツ  「ちょっとトミ何やってんのよ!」


トミ  「何?って、掃除でしょ。」


マツ  「ダメダメ。トミは社長夫人なんだから!掃除なんかヒラに任せて、時間過ぎてから来ればいいのよ!」


ホウキをマツに取られてしまいました。



トミは食堂の隣にある事務所で掃除を始めました。


ゴミ捨てから帰って来たみちよがホウキを取り上げます。


みちよ  「トミさん、ここは私がしますから、あちらで休んでてくださいね。」


トミ   「あら、私だってお手伝いしたいのよ。みっちゃん毎日大変でしょう?」


みちよ  「大丈夫です。事務員という名の何でも屋にも慣れましたから。」


トミ   「結構みっちゃんをコキ使ってるのね。みんな。」


みちよ  「あっ、いえ。そういう意味では。」


カエデ  「おはようございます。トイレから出てきたらおかあさんって、あれ⁇ 私あがるね。」


みちよ  「夜勤お疲れさまでした。トミさんが事務所も大変だろうからってお掃除してくれてたんです。」


カエデ  「もう、おかあさんは家でも働き過ぎなんだから。ゆっくり座ってお茶でも飲んでてくださいよ。」


トミはつまらないので事務所を出ます。



食堂に行くと早番のスタッフが慌ててしまいます。


「すみません。まだ準備始めたところで。」


「あら、私も手伝うわ。何をすればいいかしら?」


「いえ。そんな。社長の奥さんに立ち上げをさせるなんて。そんな。」


スタッフが困っているのを見て、食堂を後にします。



社員寮の裏にあるスタッフ駐車場の隅のベンチにトミは座りました。


マツ、ナミ、はなは早起きして働いているのに

どうしてみんな私に気を遣うのかしら?

なんか皆よそよそしいし。

普通に「おはよう」って言ってくれたらいいじゃない?


そんなトミの様子を見ていた平次が近づいて来ます。


平次は、ベンチの下にあった100円ショップのボールを

座っているトミに差し出します。


「麻呂と蹴鞠でもしませんかのぅ、トミ姫。」


トミは微笑みます。


トミの機嫌がよくなったと安心する平次。


次の瞬間


立ち上がったトミはボールを蹴り飛ばします。


ボールは駐車場の奥の方へ。


平次は条件反射でボールを走って追いかけます。


「トミちゃん、蹴鞠はこういうのと違うんだけど。」



その様子を遠くから見ていた、マツ、ナミ、はな。


マツ  「あれ、猿じゃなくて犬じゃね~か。」


ナミ  「トミも意外とおてんばなのね。」


はな  「あんなことトミさんにしかできませんよ。」


ナミ  「今日も平和な一日になりそうね。」


マツ  「そろそろ私たちも食堂に行くよ!」


はな  「はい。がんばりましょう♪」

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