不運な死神はへんてこ魔導具でなんとか助かる!〜パーティーの落ちこぼれリーダーは胃痛が悩み〜

藤白ぺるか

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10話 冒険者学園へ

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 翌日、ベッドから起き上がりシャワーを浴びて、適当に朝食をとる。うちのパーティーは皆自由なので、クランにいるうちは、誰かがご飯を作ってくれることはない。……悲しい。

 まだ一階の大広間は昨日の食べ物や飲み物が散乱していて、疾風の爪痕のメンバーが率先して、後片付けをしている途中だった。

「よお、グレン。昨日はよく眠れたか?」

 アルトが元気に挨拶してくれる。輝く白い歯を見せてニッコリと笑いかける。飲んでも次の日に持ち越さないのは、彼のしっかりしている所でもある。

「アルト、おはよう。昨日は久々にお酒飲んだからね。ベッドに入ったら一瞬で寝ちゃったみたい」

「今日は、これからどっか行くのか?」

「あぁ、黒竜の素材を取りに解体場までね」

「そっか~シオンちゃんにでも渡すやつか? あの子喜ぶだろうな~」

 察しが良いのもアルトの良いところだ。欠点が無さすぎて、隙を付くのが難しい人物だ。ただ、女好きなので、女には弱い。

 僕はアルトとの挨拶もほどほどに、解体場へ向かう。
 ギルドの裏まで来ると、昨日と同じ姿でパワー溢れるガルダさんがいた。

「グレン、待ってたぜ!」

 また、返り血を浴びてるグローブのまま僕の肩を叩こうとしてきたので、咄嗟に避ける。

「ーーーーー」

「ガ、ガルダさんおはようっ! 僕、今日お酒臭いからあんまり近寄らない方がいいよっ」

 人に避けられるって結構心抉られるからね。適当な嘘で自分の方が悪いという言い方をする。

「そ、そうか。とりあえず黒竜の角は取っといたぞ。ほらあそこに置いてある」

 ガルダさんが指を刺した先には色々な黒竜の素材が集められて置かれていた。その中に、人間3人分くらいの長さがある大きな黒い角が置かれていた。

 あ、そういやこれどうやってシオンに持っていかせよう。時空収納袋は貸すわけにはいかないし。
 となれば、かなり大きめの馬車を使って引いていくしかないけど、その分重いし時間がかかってしまう。
 うーん。これ僕も一緒に行くしかないのでは? ライムも自由行動してるし、僕も4年ぶりに学園に顔出してみるのも面白いかもしれない。というかその選択肢しかもうないよね。

『シュルっ……』

 とりあえず角だね時空収納袋に吸わせて、僕はシオンとの待ち合わせのクランの建物に戻ることにする。




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 私は朝早く起きて、グレンさんの建物の水場を借りて顔を洗う。今日は身体の疲れも取れてスッキリしてる。

 今日はグレンさんとの待ち合わせ前に、一人で教会に行くつもりだ。朝の準備を整えて、一人で向かう。

 大広間まで降りると、アルトさん達が片付けをしていてくれていた。挨拶してから、手伝おうとしたが、止められてしまった。
 手伝わせてくださいと言ったものの、全部任せろとアルトさん達に言われたので、しぶしぶ任せることにした。

 その足でクランを出て、王都の教会に到着した。王都の教会はかなり大きくて、神父やシスターも数が多い。
 なので、来訪する民間人や冒険者も多くなる。

 この教会でステータスの確認をするには、一人の神父が担当しているようだった。少しだけ列はができており、一人4,5分ほどで、次々と列が減っていった。

 20分ほど待つと私の順番まで回ってきた。
 ステータスの確認は、神父と自分しか確認できないように個室に案内され、そこで行う。

 私は個室に案内されると、威厳のありそうな厳しい顔をした老人の神父が鎮座していた。

「どうぞ、そちらにお座りください」

 怖そうな印象だが、思ったより優しく誘導してくれる。
 私は銅貨1枚を机の上にあるボックスに投入した。これがステータス確認の対価となるお金だ。
 そのあと着席するとステータス確認がはじまった。神父が両手を重ね、祈るように言葉を紡ぎ出す。

「女神イシズ様。私、フランネス・オルコットの名において、親愛なる我が子供たちに、今一度自らを顧みる祝福を与えたまえ」

 そう祈りを捧げると、頭の中に自分のステータスが流れ込んでくる。どういう仕組みなのか誰もわからないが、そうなっている。ただ、数字として見えるわけではないので、感覚の問題になる。

 その瞬間、膨大な魔素のエネルギーを感じた。

「ッッッ……!?」

「こっ、これは……」

 フランネスさんもそれを感じて、驚きの表情を見せる。神父の方も対象と同じで、ステータスを感じることができる仕組みだ。

「あはは……」

 私は半笑いで返すしかなかった。今まで感じたことのないとんでもない魔素量。頭の中が破裂しそうなほど、脳みそが一杯一杯だ。

「では、どうされますか?」

 能力値の割り振りも神父が行う。こちらが言った通りに割り振ってくれる。

「では、全ステータスを均等にお願いできますか?」

 かなりノーマルな選択ではあるが、これだけの能力アップなら、均等に割り振っても相当なパワーアップだ。

「わかりました。ではその通りに。ーー女神イシズ様。親愛なる我が子の選択の通りに、その願いを叶えたまえ」

 神父の言葉と共に頭の中の魔素が消え、その膨大なエネルギーは肉体の糧へと変換されていく。

「すごい……」

 朝起きたばかりのはずなのに、内側から迸る漲る力を感じて、全身が目覚める。

「私も長く生きてきた中で、これほどの魔素を溜め込んでいたのを見たのは久々です。とても頑張ってこられたのでしょう。これからのあなたのご活躍もお祈りしています」

「うっ……うっ……」

 私はなんて泣きやすいんだろう。見た目で人は決めてはいけない。怖そうな神父さんは、長く生きてきただけあって、その言葉の重みが違う。

 私が頑張ってきたかどうかは、私自身にもわからない。でもグレンさんとの運命の巡り合わせで、今、私には相応しくないであろう力を手に入れた。
 いきなりパワーアップしても、正直自信がない。でも神父さんに言われた言葉を素直に受け止めることができた。それは、私が少しは成長したということなのだろうか。

「ありがとうございます……」

 震える声を絞り出し、私は教会を出た。
 その途中で、私が泣きながら歩いてる姿を見られて怪訝な目を向けられたが、それを気にしている余裕はなかった。

 シオンは知るよしもないが、通行人たちシオンが泣いている姿に反応したわけではなかった。その内側から溢れ出る強者のオーラに当てられていただけだった。

 私はその足のまま、グレンさんと約束したクランの建物まで向かう。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「グレンさんっ! お待たせしてしまいましたか?」

 僕はシオンよりも早くクランの大広間に来ていた。ただ、ほとんど待ってはいない。解体場から帰ってきて5分というくらいだろう。

 彼女を見た瞬間、雰囲気が全然変わっていた。確かに目元が少し赤い感じがしたが、そこではない。
 雰囲気が変わったというのは、言葉に表すことが難しい見た目の違いだ。ステータスアップした瞬間は特にその反応が顕著に出る。

「大丈夫だよ。昼前くらいって言ってただけで、細かい時間も決めてなかったしね」

「いえっ、すみませんっ! ……あと、私、教会に行ってきました」

 少し溜めてから、教会に行ってきたことを話した。
 やはりか。ステータスを見て魔素を割り振ったということだろう。
 つまり、目の前にいるシオンは、昨日のシオンとは全くの別人と言ってもいいくらいの人物なはずだ。

「そうかそうか、それは良かった! シオン、おめでとう」

「あっ、ありがとうございますっ! 正直色々とまだ受け入れられないのですが、全部グレンさんのおかげです!」

 いきなりあのクラスの魔素を吸収しちゃうとね、驚くよね。教会で何があったのかわからないけど、泣くほどの感動でもあったのかな。それとも、あの怖そうな神父になんか言われたのかな?
 僕はいつも変な目で見られてるからね。全然魔素が集まってないのに、何度も教会に行くから……。

「ううん、僕こそシオンのお陰だよ。この話はもう何度かしたから、もうおしまいね!」

 シオンには感謝されまくっている。僕もシオンに同じことを何度か言っている。もうそろそろ感謝バトルは終わってもいいだろう。

「はい……ありがとうございます」

 終わった所で、僕は次の話題に入る。

「じゃあ、シオンに渡す予定の素材だね。シオンが倒したから、ほとんどシオンに渡したいんだけど、量が多いから、一旦僕たちが預かっておくね」

「もっ、もちろんですっ!! というか、グレンさん達が欲しい分、全部持っていってほしいです! 私は鱗一枚あれば、十分ですから!」

 鱗一枚はさすがにね。それを卒業試験に提出しても拾ったんじゃないかレベルで疑われそうだ。実際、あの森にはまだ拾いきれていない鱗が少し落ちてそうだし。

「とりあえず、黒竜の角をもらってきたんだ。ただ、ちょっと問題があって……」

「問題ですか? 私になにかお手伝いできることはないでしょうか?」

 心配してくれるシオン。純粋でかわいい。

「覚えてると思うけど、その角は人間3人分くらいの大きさだからさ、ちょっと持ち運ぶにも大変で……。だからシオンに渡すのは難しいんだよね」

「えっ……。いやっ大丈夫です! それはグレンさん達がもらってください! 私が持っていてもしょうがないので!」

 ちょっと僕の説明不足で勘違いをするシオン。まだ全部喋ってないからね。

「ううん、そういうことじゃなくてね。僕もうここまできたら、シオンの面倒を最後まで責任もって見ようと思ってさ、時空収納袋を貸すわけにはいかないから、俺が一緒に冒険者学園に同行しようと思って。そこで角を出せば運ぶ手間もなくなるし」

「えええっ!!! グ、グレンさんが一緒にですか!? そこまでは申し訳なさすぎます! 私もう返しても返しきれない恩があるんですから!」

 確かに僕もシオンの立場ならそう言っちゃうかも。でも、もう決めちゃったことだし。

「いいんだ。あと4年ぶりの学園も見てみたいし。久々に教官の顔拝むのもいいかなって」

「グレンさん……本当に言ってます? 私はとても嬉しいのですが、まだ申し訳ないって気持ちが勝っていて……」

「ほんとほんと。卒業試験の期限まで2週間くらいあるしさ、のんびり旅をしながら向かえば、いいかなって(依頼ばっかで休みたいし)」

 嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが混在した表情を見せるシオン。

「グレンさんがいいなら、私はいいです。でもパーティーの皆さんは大丈夫ですか?」

「ああ、それはこれから皆に話す」

「えええぇぇぇぇ!!! 承諾取っているものだと思ってました……」

「うちは結構自由だからさ。パーティーと言っても全員が久々に揃ったのも昨日の打ち上げくらいだよ。だから大丈夫。ちょっと待っててね」

 俺はシェリアルを取り出して、その場で通話をかける。

『トゥルルル……』

「ううっ……。こちらリタです……。 あっ、あわわわ!!! リーダぁでしたか! す、すみません! どうしました?」

 ちょっと眠たそうな声を出しながら、リタは途中で僕から通話が来ていることに気づく。

「リタ、おはよう。 昨日はたくさん飲んでたね。体大丈夫?」

「あっはい! 今起きましたっ! 体ももちろん大丈夫ですっ!」

 通話越しに後ろでベッドから転げ落ちたようなドタドタという音が聞こえた。僕はスルーして話を進める。

「そっか、それならさ。僕ちょっと冒険者学園に用事ができたからシオンと一緒に行くんだけど、それで2・3週間穴空けるね?」

「わかりましたっ!! って、ええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 一人ノリツッコミみたいな状態になる。

「だから、他の皆に連絡しておいてもらえると助かる。連絡がつく人だけでいいからさ」

 パーティー最年少なので、リタにはお願いごとを頼みまくっている。

「えっ!? 一人で行くんですかっ!? それなら私もっ!!」

「リタはこれから皆に連絡しないといけないでしょ? 無理に同行しなくても大丈夫だよ」

「いえっ! 私も久々に学園に行ってみたいな~なんて」

 まあリタも同行してもいいが、できれば、仲間たちに連絡完了してからにしてほしい。僕が連絡しろよって思うけど。

「じゃ、じゃあっ! 私が皆さんに連絡し終わって、リーダぁがまだ出発してなかったら、付いていきますっ!」

「それなら大丈夫だよ。クラン前に馬車を止めておくからさ、こっちは準備できたら出発するね」

「はいっ! わかりました! 必ず行きますねっ!!」

 リタとの通話が終わり、僕らも出発の準備に入る。ただ、シオンのスケジュールは全然確認していなかった。

「とりあえず連絡したから大丈夫。というかシオンはこれからやることあった? ごめん今日出発しようと勝手に決めちゃったんだけど……」

「問題ないです! 体も完全回復してますし、今はすごい力が漲ってますからっ!」

 シオンの体から感じる強者のオーラは、今一番凄みがある。自然と体に馴染んでいくと、それも消えていくはずだ。

「わかった。僕も準備するからさ、1時間後にまたクラン前で合流しよう。馬車の手配はこっちでしておくね」

「はいっ! わかりました! 何から何まで本当にありがとうございますっ!!」

 深く、深く、体が折れ曲がった礼をしたシオン。綺麗な青髪が地面につくほどの礼だ。髪は大事にしなよ。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 約束の時間までに、僕が準備することといえば、魔導具チェックだ。
 昨日は寝る前に防魔鈴を、魔力壺に投入して残基を増やしていた。魔力壺はどこからか魔素を回収して、ゆっくりと魔力を放出する壺だ。
 正直この壺はそんなに魔力を生み出してくれるわけではないので、1日1残基分しか防魔鈴をチャージできない。MAXまでチャージされるには5日かかる。マークさんが殴ってくるからわざわざこんなことを……。

 そして次に、ライムに頼んでいたマークさんからもらった魔導具の鑑定結果だ。ライムは言っていた通り、姿はもうないようだが、執務室の机の上に置いていた魔導具の横に紙切れが置いてあった。
 この紙切れにかかれていることがライムの鑑定結果だ。なぜか、ラブレターのような文面から始まっていたが……。


 『かわいい私のグーレン♪ 3ヶ月くらい空けるお願い聞いてくれてありがとう。いつでもグレンのこと考えながら、実験してるから、グレンも私のこと思い出してね。実験が終わったあとの結果発表楽しみにしていてね♡』

 『じゃあ鑑定結果を言うね。この魔導具は『ミドガルズの縄』って言うみたい。効果はそれを投げつけると、近くにいる相手を縛り付けて動けなくして、そのまま猛毒や雷を落とすって。この毒も高位の僧侶でないと解毒できないらしくて、結構危険かも。魔物相手に使うにはいいかもね。あとこれ一度使ったら回収が大変みたい。でもそのまま放置したら大変なことになるから、回収はしたほうが良さそう。お勧めの回収方法は、名前をつけてあげることらしいけど、それ以上詳しいことはわからなかった。ごめんねグレン』

 なんか、突っ込みたい部分があった。まず3ヶ月って期間増えてるし。そういえばマークさんも先に鑑定してから渡してくれても良かったよね。まあそれはいいんだけどさ。
 魔導具に関しては縄って言ってるけど、見た目がそもそも縄じゃない。ピラミッド型の三角で黄金の物体だ。使用したら縄っぽくなるんだろうか。

 さらには、猛毒とか雷とか、なんか結構えげつないんだが。魔導具というか、闇魔導具じゃん。
 間違って自分の近くに落としちゃったらどうなるんだろう。マークさんなんてものをくれたんだ。あと、回収が大変って。名前をつけてあげること? どういう意味なんだろう。

 僕は色々疑問を持ちながらもライムの鑑定結果を見たあと、魔導具部屋に寄る。
 肌見放さず持っているネックレスについている鍵を差し込んで扉を空ける。最初に今回役に立った、スカーフとメガホンを元に戻す。もちろんさっき綺麗に拭いておいた。いつも助けられている物を大事にするのは大切なことだからね。

 今回は何を持っていこうか悩む。いつも悩んでるんだけどさ。冒険者学園に行くだけなら、それほど危険なことはないか。
 冒険者学園は王都から東に3日進んだ場所にある。多少距離はあるので、その間に盗賊や魔物に襲われる可能性だってある。ただ、街道はかなり整備されているので、そういう事態になることは結構少ない。

 ただ僕は用心深いほうだ。何かは持っていきたいな。一応マークさんからもらった『ミドガルズの縄』、そういや名前をつけてあげたほうがいいんだっけ? 『ミッドちゃん』とでもしておこう。
 魔導具を選ぶ時はいつも直感だ。今はどんな気分だろう。最近シオンと出会ったから、シオンから考えよう。青い髪、スレンダーな体型、弓使い。

 青と言えばこれかな。『碧熱メガネ』。見た目は青いカラーが入ったサングラスだが、その効果は炎の熱波など、全て冷やす効果がある。例えば、熱々のシチューを食べたとしよう。このメガネをかけていればそのシチューは勝手に温度調整されて、冷え冷えの状態になってしまう。冷え冷えというか装着者の周囲が約20度くらいの温度になる。

 さらに真夏であれば、全然暑さを感じないので、めちゃめちゃ快適に過ごせるのが一番の目玉だ。僕は夏の暑い日はいつもこれをつけていた。今はまだ夏には早い春の時期だけどね。ちょうどそれくらいの気温だから、装着してもあまり変わらない。シオンの青髪からインスピレーションを受けたので持っていこう。

 僕はいつも魔導具部屋から二個は何か持っていく。全部持っていけばいいじゃんと思われるかもしれないけど、とっさに思いついて出せるほど器用じゃない。だから、予め制限していたほうがすぐに取り出せるってもんだ。

 シオンの青以外に残ったイメージはスレンダーと弓か。スレンダーと言えば、学園時代にライムが作ってくれたダイエット用ぽい魔導具があったな。『筋トリベルト』。使ったことがないからあんまり効果は理解してないけど、おそらくつけたら勝手に筋トレしてくれるベルトってことだよね? 正直今回の旅に必要だとは思えないけど、直感だしこれでいいか。
 
 じゃあ今回持っていくものは決まりだな。『ミドガルズの縄』『碧熱メガネ』『筋トリベルト』。いつもは2つだけど、せっかくマークさんからもらったし、今回は3つもっていこう。

 準備ができたので外に出て、馬車の用意と近くのお店で色々と旅で消費する食材を購入していく。そのまま全部、時空収納袋に詰め込んでいった。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 1時間後、シオンとの待ち合わせの時間だ。僕がクランの前に向かうとそこにはシオン以外に2人の姿があった。

 まずはリタ。シェリアルで必ず行くって言ってたしね。そしてもう一人は……。

「……アリア!?」
 
 そもそも僕のパーティーではなかった。クランのパーティーではあるけどね。

「リタはわかるけど、アリアはどうしたの?」

「ふふっ、昨日は失態を見せたようだな。私は気にしていないぞ。ちょうど学園に用事があってな。たまたま走り回っているリタを発見した時に話を聞いたら、グレンが行くと聞いてな。それならちょうどいいと思ってここにきた」

 昨日の失態とは、いつもは凛々しくてかっこいいのに、かなり酒に弱いので、酔って僕の足に纏わりついていたことだ。
 記憶はいつも失わないので、恥ずかしいと思っているはずだが、表面上はなかったことのようにいつもの顔になっている。

 ちなみにアリアのパーティー氷の十字架(グレイシア・クロス)のランクは5つ星だ。彼女には教会に関する仕事があり、魔物討伐をメインでやっているわけではないが、十分な成果を出してきている。

「僕は全然構わないけどね。アリアがいるなら心強いよ。何かあったら頼るね」

「ふふっ、昨日も似たような話をしたな。いつも頼っているのは私の方だ。グレンの頼りになれるように精進するばかりだ」

 特にアリアには僕の本当の実力が伝わらない。じゃあ、なんかあったら全部アリアに押し付けてやるんだからな。

「じゃあ、出発しようか。今日はよく使われるルートだから御者はついてる。最初は見張りとか警戒だけリタ、お願いできるかな?」

「任せてください、リーダぁ!!!」

 元気に挨拶するリタ。やはりこの元気なところがいいよね。
 僕たちは馬車に乗り込む。御者合わせて5人の移動となった。これから3日かけての旅となる。


 ーー僕は波乱の幕開けとなる冒険者学園に4年ぶりに向かうことになった。

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