弱小種族の冒険譚

わっしー

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第二章

エピローグ2

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私は目を覚ますとベッドに寝ていた。横を見ると、そこにはポムさんが舟をこいでいる。
「・・・ここは?」
そう呟いた瞬間、ポムさんは目をパチリと開けて私の方を見る。
「モリナさん!目を覚ましたんですね!」
そう言ってポムさんは私のベッドに乗って私の背中を押しながら起こしてくれる。そしてその背中に枕を敷くと水差しを取り出す。
「喉渇いていませんか?これ、水です!」
そう言ってポムさんは水差しを私の口に運んだ。私は丁度、喉が渇いていたため水差しから水を飲む。
「あの・・・。ここはどこなのですか?」
「ここは「ミルラ村」の村長の家です。モリナさんは三日ほど目を覚まさなかったので心配したのですよ。」
そう言ってポムさんはベッドの横の椅子に座る。
「そうですか・・・。」
その時、私の脳裏に浮かんだのはあの魔族の男に禍々しい宝石を付けられたこととそれから火を放たれた里の家々の事だった。
「あの!里は!?みんなはどこに居るのですか!?」
そう聞くとポムさんは表情を硬くする。そして、深呼吸した後に答えてくれた。
「モリナさん・・・。里の方は僕たちがゴブリンの軍勢を壊滅させた後に見に行ったのだけど火を放たれて焼失していて跡形もなくなっていた。そして、里の人たちは・・・。」
そこでポムさんは言葉を切る。その手は力を入れ過ぎて白くなっていた。
「ボロスという魔族が埋め込んだ狂化の宝石によって暴走、村に攻め込んだため僕たちが全員打ち取った・・・。」
「え・・・?」
私はポムさんの言葉が分からなかった。みんな死んだ?
「・・・ごめんなさい。モリナさん以外は強化の宝石を砕くと狂化されて化け物に変わってしまった。だから、化け物になる前に全員打ち取らせてもらった。」
「そんな・・・。」
私はポムさんに詰め寄る。
「そんな!!私の他に生き残りはいなかったのですか!?お父様は!?里の皆は!?」
「・・・ごめんなさい。」
ポムさんはそれだけを繰り返した。私はいてもたってもいられずにベッドから降りて立ち上がろうとしたが視界が揺れる。そんな私をポムさんが支えてくれる。
「無理はしないでください。今日は休んでいてください。」
そう言って私を寝かしつけてくれた。
「・・・仲間になにか消化に良いものを用意させます。それまで休んでいてください。」
そう言ってポムさんは部屋を出ていった。
「そんな・・・。嘘よ・・・。コレは悪い夢よ・・・。」
私は夢であってほしいと祈りながら毛布に包まった。

次に目を覚ました時には良い香りがした。
「あ・・・。起きたんですね。」
そう言ったのは私の知らないチビット族の女の子だった。
「貴方は・・・?」
「私は、ポミュ。ポミュ・ホートマスと言います。ポムさん達と一緒に旅をしている者です。」
「そう・・・。」
そう短くつぶやくとポミュさんは土鍋のふたを開ける。そこにはお粥が入っていた。
「ポムさんがモリナ様にはこれが良いと言っていましたので・・・。」
「ポムさんが?」
そのお粥は卵が入ったものだった。私はそれをスプーンで掬うと一口頬張る。
「・・・。」
私は必死になってそのお粥を食べた。その味は昔食べた、母のお粥を思い出して涙が出てきた。
「モリナ様・・・。美味しくなかったですか?」
ポミュさんは心配そうに私を見る。私は首を横に振る。
「いえ・・・美味しいです・・・。とっても・・・美味しいです・・・。」
しかし、涙は止まることはなく私の瞳から流れていく。
「・・・私、一人になってしまったんですね・・・。」
そう言って私は目を押さえる。それでも手の間からは涙がこぼれてしまう。すると、不意に温かなぬくもりを額に感じた。
私は顔をあげるとポミュさんと目が合う。
「・・・辛いですよね。いきなり一人ぼっちになってしまうなんて・・・。心細いし、悲しいし・・・。」
ポミュさんはその小さな手で私の頭を撫でてくれる。
「そんなときは、私たちを頼ってください。私たちはあなたの味方です。」
「あ・・・。」
「だから、泣いてください。悲しいときは涙を流して悲しい気持ちを涙と一緒に流してしまいましょう?」
そう言ってポミュさんは私の目を見る。その目は本当に優しくて見ているだけで安心した。「ね?」
そして、ポミュさんは私に微笑みかける。私はそんなポミュさんに抱き着き子供のように泣いた。

「さて、今回の騒動についてだけど・・・。」
そう言うのはミネアさんだった。その場には僕とアランさん、ドロンさん、エレナさん、ボルドウさんがいた。
「今回の主犯はゴブリンではなく、魔族ということがわかりました。その強さは私たちとは比べ物にならないほど強大でした。」
「確かにな・・・。ワイとアランがまるで赤子の手を捻るみたいに惨敗していたからな・・・。」
ドロンさんが苦い顔をして答える。
「ああ・・・。それに魔力も高かった。あのままあの魔族と戦っていたら俺たちは全滅していたな・・・。」
アランさんが悔しそうにそう言う。
「ええ。それに魔族の目的がチビット族であること・・・。それに、今回使用された魔道具「狂化の宝石」と「魔獣の種」の関係性からも今後もチビット族が狙われることが分かったわ。」
「そうですね・・・。チビット族を使った実験を画策しているようだったし・・・でも、僕達だけじゃ今回みたいなことが起こった場合対処できるかどうか・・・。」
僕がそう言うとその場の全員は何も言えなくなる。
「・・・そうね。今の私たちではあの魔族が来たときに対処は出来ないわ・・・。他の村に居る冒険者たちでも同じことがいえると思うわ・・・。だから、私は国王陛下にチビット族の集団移住を提案しようと思うの。」
「集団移住?」
僕が首をひねっているとミネアさんが頷く。
「ええ。チビット族の皆さんには申し訳ないけどしばらくの間大きな街に疎開してもらう。大きな街なら冒険者の数も多いし王都なら王国兵もいる。チビット族の皆さんを守るのには十分な環境が整うはずよ。」
「なるほどな・・・。確かに守る側としてはそれが一番ベターだと思うがチビット族の奴らが納得するかどうかだな・・・。」
そう言ったのはボルドウさんだった。
「ええ、時間はかかると思います。ただ、チビット族の皆さんから同意が得られれば可能です。」
「国王陛下にはどう言うんだ?それだけの大移動となれば物凄い額の金が使われると思うが?」
「心配なさらないでください、私に考えがあります。」
そのミネアさんの顔は自信に満ちたものだった。
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