弱小種族の冒険譚

わっしー

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第三章

39.チビット族とは・・・。

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通された部屋はミネアさんの実家の部屋よりも豪華な部屋だった。
「凄いな・・・。」
僕は単純に驚いていた。部屋には執務机と椅子が一脚置いてありその横には大きな本棚が置かれていた。
窓には豪勢なカーテンが掛かっている。よく見ると金の刺繍が施されているようだ。
ベッドはキングサイズのモノが使われている。
しかし、それで部屋が圧迫されているような印象はなく余裕がある。
一言で言うのなら物凄く広いのだ。
日本の家屋で考えたら高級ホテルのエントランスの4分の1程度の広さ・・・。
そうやって部屋を見て回っているとドアがノックされた。
「失礼します。ポム様の身の回りのお世話をさせていただくメイドのピムと申します。」
そう言って入ってきたのはチビット族の女性だった。
黒の服に白いエプロンをかけたメイド服に身を包んでいる。
「は・・・はい!よろしくお願いします、ピムさん。」
僕は頭を下げる。
「ピムで結構ですよ、ポム様。貴方様はクラーネ様の大事なお客様なのですから・・・。」
そう言ってピムさんは微笑む。
年は僕より少し上くらいの女性だ。
「は・・・はい。」
「ポム様、夕食の準備が整いました。食堂へ案内いたします。」
そう言ってピムさんは踵を返す。
僕はそんな彼女についていく。
長い廊下を歩いていると、そこかしこにチビット族のメイドや執事が働いていた。
「あの、ピムさん。ここには多くのチビット族の人が働いているんですね。」
「はい。この王城の雑務はチビット族のメイドや執事がほとんどを取り仕切っているのです。」
「他の種族の方はいないのですか?」
「ええ。」
そう言ってピムさんは頷きながら答えてくれた。
「チビット族は戦闘能力がないのですがそれ以外の分野においては優秀な技術を持っているのです。鍛冶や服飾、細工、料理など他の種族に比べると高い水準を維持しております。」
「そうなんですね・・・。」
僕は感心したように頷く。
つまり、チビット族は技術系の分野においては他の種族よりも上ということらしい。
「スラート王国はチビット族と友好な関係を築いたことにより発展した王国です。北のデザード帝国とは違うのです。」
そう言うピムさんの顔が一瞬曇る。
「さて、ポム様。食堂に付きました。お入りください。」
そうピムさんが言った瞬間、両側に控えていたオーガ族の兵士がドアを開けてくれる。
席にはすでにほかの旅の仲間たちが座っていた。
「ポム様、こちらへ・・・。」
そう言ってピムさんが椅子を引いてくれる。
その椅子は僕の身長でも合う高さに合わせてくれたものだった。
僕が席に座るのを確認してから上座に座っていたスラート王国の姫、クラーネ王女が立ち上がる。
「今回はミネア村の防衛、それに重要な情報を持ってきてくれたミネア・ランバルドとその仲間たちに深い感謝を示すためこの食事会を開きました。皆さん、どうか存分にお楽しみください。」
そう言ってクラーネ王女が手を叩くと料理が運ばれる。
どうやらコース料理みたいだ。
その料理の香りはとても良く僕のお腹が鳴る。
そして、僕たちは料理を堪能するのだった。

「料理の方はいかがでしたか?」
クラーネ王女がミネアさんを見て聞く。
「大変美味でした。今回はこのような催しを開いてくださりありがとうございます姫様。」
ミネアさんはそう言って胸に手を置きお辞儀をする。
「お口に合ったのなら良かったです。でも、ミネア。あんまり他人行儀なのはわたくし少し悲しいです。昔みたいにクラーネと呼んでくれても良いのですよ?」
「いえ、わたくしもスラート王国の領主の娘。昔のような無作法を働くわけにはいきません。」
ミネアさんは首を振る。
そんなミネアさんの態度にクラーネ王女は頬を膨らませる。
「ミネアは本当に融通が利きませんね・・・。真面目なのは美徳ですがお父様がいないときくらい肩の力を抜けば良いのに・・・。」
「そうですよ、ミネア様。クラーネ様もこう言っているんですからもっと気を抜けば良いですよ。」
そう言ってエレナさんが伸びをする。
「エレナ!行儀が悪いわよ。」
「でも、堅苦しい食事も終わったんだし久しぶりにいろいろ話をしましょうよ。ね、クラーネ様。」
「そうです!わたくし、ミネアたちが来てくれたことがうれしかったんですよ!それに、こんなに可愛いチビット族を連れてくるなんて!」
そう言ってクラーネ王女が席を立つと僕の方に向かってくる。そして、僕の前に立つと僕を椅子から引き抜く。
「もう!本当に可愛いのだから!!」
そう言ってクラーネ王女は僕を抱きしめる。見た目にはわからなかったがクラーネ王女は着やせをするタイプみたいでフカフカの胸が僕の顔を包み込む。
「むぐ・・・・。」
僕は嬉しいような、苦しいような・・・。そんな訳の分からない状態に陥っていた。
「あ~あ・・・。始まったよ、クラーネ様の悪い癖がよう・・・。」
ドロンさんの呆れた声が聞こえてくるが僕はそれどころではなかった。
「悪い癖、ですか?」
モリナさんがドロンさんに聞く。
「ああ。クラーネ様は昔っからチビット族がお気に入りだったんだよ。それは病的なまでに・・・。」
「そんなにですか?」
モリナさんがドロンさんに問い返すとドロンさんは頷く。
「ああ!部屋にはチビット族のぬいぐるみなんかを置いていてな・・・それがないと眠れないらしい。昔なんてメイドのチビット族を抱いていないと眠れなかったほどだぜ。」
「それは・・・。」
モリナさんが若干引いていた。
「ああ・・・。このモフモフした毛の感触。柔らかい肌に丁度良いサイズの身体・・・。ミネア!このチビット族をわたくしに譲ってくれないかしら!」
「駄目です。ポムさんはわたくしのパーティーのメンバーなのですから!」
ミネアさんがキッパリと断る。
「うぅ・・・。ミネア、意地悪です。」
そう言ってクラーネ王女は僕の身体を力いっぱい抱きしめる。
「うく・・・。」
そこで僕の意識は途絶えた。
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