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崩壊
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卒業という素晴らしい旅立ちの日を祝うように晴れ渡る青空の下、セレナたちは卒業式の真っ最中だった。
何日も書いては消してを繰り返し、ようやく完成させたスピーチは不安をかき消すほどの拍手をもらった。
二年連続務めた生徒会長は楽ではなかった。完璧であることが当たり前とされるローズソーンアカデミーの生徒会長。二年生で選ばれたとき、前年の生徒会長が言った言葉は今でも忘れられない。
『死なないでね』
耳を疑ったその言葉の意味はすぐに理解できた。
教師陣──特に校長からの期待と圧が凄まじかった。
飴と鞭というには落差が極端で、完璧な成功のみが成功と認められ、ほんの小さなミスは大失敗と捉えられる。その失敗の全責任は生徒会長にあり、二時間ほど詰問される。最低でも十枚の反省文を書かされ、何十回と謝罪を口にしなければ反省していると認められないと話を聞いたときは驚いたが、セレナにとってはヴァレンタイン家の延長線上にローズソーンアカデミーがあるだけだと思った。地獄は結局、地獄にしか繋がっていないのだと。
幸いにも、セレナは生徒会長として失敗することは一度もなかったため、そういったことはなかったのだが、慣れていない人間にとっては究極の選択に追い込まれるほどのことだったのだろう。
比較的、穏やかに過ごせたと思っている。アネットと一緒に卒業したかった思いは消えない。ピンクのスカーフを巻いて、満面の笑みを浮かべながらハシャぐ彼女を見たかった。校長室まで残した道のりを歩きながら見慣れた景色を見ているとやはりそう思ってしまう。
「あなたは、このローズソーンアカデミーの歴史の中で最も優秀な生徒であり、立派に生徒会長を務め上げました。私は校長として誇らしく思います」
「ありがとうございます」
「セレナ・ヴァレンタインの名は生涯忘れることはないでしょう」
「光栄です」
「あなたの未来が素晴らしいものであるよう祈っています」
ゆっくりとカーテシーをして校長室から出ると卒業式独特の賑やかさに目を細める。
親に強制的に入学させられた者がほとんどであり、卒業によって解放を得た令嬢たちの喜びは品がないと叱られたところで抑えられるものではない。
セレナもそうだ。三日前に届いたエドモンドから手紙では明日、婚約発表すると書いてあった。今日はシルバークレストカレッジも卒業式であるため迎えには行けないが、明日、二人揃って発表しようと。それを思い出すと表情がニヤケそうになる。家族から解放され、エドモンドの傍にいられる。本当ならこの場で笑いながら一人踊りたいほど舞い上がっていた。
「セレナ様、卒業ですわね」
「そうですね。あっという間の三年間でした」
「明日からは婚約者探しですの?」
「どうでしょう」
「あら、もう目星はついているという感じですわね?」
「秘密です」
アネット以外とは特別な友情はなかったが、こうして声をかけてもらえることは嬉しい。笑顔が出てしまいそうになるのを堪えながら馬車に向かっていると黄色い声が聞こえてきた。
「ルカ様よ!」
「ルシア様を迎えに来られたのよ!」
セレナの表情が怪訝なものへと変わる。
「シルバークレストカレッジも今日が卒業式のはずでは……」
「ですわね。毎年同じ日に卒業式ですもの」
ローズソーンアカデミーとシルバークレストカレッジでは敷地から校舎から生徒数から全ての規模が桁違い。そのためローズソーンと違って卒業式にはかなりの時間がかかる。同じ時間に終わるなどあり得ない。それなのにシルバークレストカレッジの生徒であるルカ・フィリバートがここにいるのはおかしい。
「彼は卒業生ですよね?」
「ええ、ルシア様と同学年ですもの」
「まだ卒業式の途中では──」
ルカが花束を持って馬車を降りるとルシアは少し手前で立ち止まっていた。待っているのだ。結婚までは女遊びを許していたが、卒業したら結婚する。今日からルカは自分だけのものになる。自分だけが触れていい男だと喜びに満ちていた。頬を染め、目の前までやってくるのを待っていたルシアの横をルカは通り過ぎた。
「え……」
黄色い声は一瞬で消え、ルシアが驚いた顔で振り返る。花束を持ってどこへ行くのか。
セレナは嫌な予感がした。ルカの目が、狩人のような目がこちらを見ている。その足は目的地がわかっているかのように真っ直ぐこちらに向かっている。彼が持っているのはローズソーンアカデミーの卒業式に相応しいバラではなくライラックの花束。
隣の令嬢を見て、別れの挨拶をして、急いで馬車に乗り込まなければならないのに、セレナは視線を逸らすことも、後ずさることもできないでいた。隣の令嬢が驚きの顔でルカとセレナを交互に見る。
あくまでも想像でしかない。最悪の想像でしかない。それが現実になるとは限らない。だけど、想像だけで終わるには彼の歩みに迷いがない。
「いや──」
「ルカ様!?」
思わず漏れた声はルシアの声によって掻き消された。
「卒業おめでとう、セレナ」
ルカがセレナを名前で呼んだことで黄色い声を出していた令嬢たちがザワつく。誰とも噂がなかったセレナが、あのセレナ・ヴァレンタインがルカと知り合いだったのかと。
婚約者であるルシアを通りすぎてお祝いの言葉をセレナに贈ったルカをルシアが慌てて追いかける。しかし、ルシアが追いつくより先にルカがその場で片膝をついた。花束を地面に置き、ポケットを探る。そこから小箱を取り出すのに時間はかからなかった。逃げる一瞬の隙も与えないほど滑らかな動きで蓋を開ける。
「結婚しよう」
まるで約束でもしていたかのように笑顔で告げるルカがセレナは心底恐ろしかった。
今日は素晴らしい一日になる予定だった。卒業式のスピーチは完璧で、家に帰ったら父親から褒めてもらい、ご馳走を食べる。デザートはセレナの希望で豪華なパフェの予定だった。明日のためにエステを受け、ようやく誰の前でも笑顔を見せることが許されるはずだった──……
ルカはあえてこの日を選んだ。エドモンドとの婚約を知っているからこそ、今日を選んだのだ。
「どういうことですの!?」
ようやく追いついたルシアが金切り声を上げる。
「その指輪……」
自分が欲しがっていた指輪ではない。フィリバート家に代々受け継がれてきた指輪ではなかった。ルシアにとってそれはとてつもない違和感を覚えるもので、怪訝な顔で二人を見る。
「彼女と知り合いでしたの?」
「俺が惚れたんだよ。彼女以上の女は世界中どこ探しても見つからない。俺はもう決めたんだ。彼女と結婚するってな」
「何を……そんなの認められるはずありませんわ!」
「誰の許可もいらねぇんだよ。俺は俺が見つけた相手と俺の意思で結婚する。一度きりの人生を親が決めた女と結婚して潰すなんざごめんだね」
「そんな……!」
「領地で一緒に過ごしてわかったんだよ。ああ、俺の運命の相手だって」
何を言っているんだ。セレナは奇しくもルシアと同じ気持ちでいた。
「領地でって……あなた、冬季休暇はストーン伯爵のところに居たって……」
「運命的だよな。悪天候で馬車が走らなくなって困ってたとこに彼女の馬車が通りかかったんだよ。そこから彼女の領邸でお世話になることになってさ。一緒に狩りして、捌いて、食って……ああ、夜中に小屋の中で二人きりで他愛無い話もしたな」
「違う……そんなことしてない……」
「あれ? これは内緒にしてたほうがよかった? ごめんごめん。嬉しくて話しちまった」
悪意を具現化したような人間がいるとすればルカ・フィリバートがそうだろうとセレナはぼんやりとした頭で思った。
彼は壊しに来ているのだ。セレナの幸せを、人生を。彼にとって、アネットがそうだったように、自分も玩具。遊んでいた玩具が壊れてしまったから次ので遊ぶ。その程度の感覚なのかもしれない。
当然、ルカのプロポーズはローズソーンアカデミーに混乱をもたらした。
男子禁制の場に男が侵入し、婚約者の目の前で他の女にプロポーズしている。しかもその相手はあのセレナ・ヴァレンタイン。セレナに婚約者の話はなかったが、相手が悪い。相手の男は婚約者持ちで、ルシア・レヴィ。幸いなのはどちらも公爵家の人間であること。
大泣きするルシア。困惑する生徒。呆然とするセレナ。駆けつける教師。たった一人、笑顔のルカ・フィリバート。場は騒然とし、晴れやかで終えるはずだった卒業式はルカの登場によって暗雲が立ち込める。
セレナの顔が青ざめていることが証拠だと言わんばかりの生徒たちの視線を見ながら、セレナはこれまで必死に積み上げてきたモノが崩壊していく音を聞いていた。
何日も書いては消してを繰り返し、ようやく完成させたスピーチは不安をかき消すほどの拍手をもらった。
二年連続務めた生徒会長は楽ではなかった。完璧であることが当たり前とされるローズソーンアカデミーの生徒会長。二年生で選ばれたとき、前年の生徒会長が言った言葉は今でも忘れられない。
『死なないでね』
耳を疑ったその言葉の意味はすぐに理解できた。
教師陣──特に校長からの期待と圧が凄まじかった。
飴と鞭というには落差が極端で、完璧な成功のみが成功と認められ、ほんの小さなミスは大失敗と捉えられる。その失敗の全責任は生徒会長にあり、二時間ほど詰問される。最低でも十枚の反省文を書かされ、何十回と謝罪を口にしなければ反省していると認められないと話を聞いたときは驚いたが、セレナにとってはヴァレンタイン家の延長線上にローズソーンアカデミーがあるだけだと思った。地獄は結局、地獄にしか繋がっていないのだと。
幸いにも、セレナは生徒会長として失敗することは一度もなかったため、そういったことはなかったのだが、慣れていない人間にとっては究極の選択に追い込まれるほどのことだったのだろう。
比較的、穏やかに過ごせたと思っている。アネットと一緒に卒業したかった思いは消えない。ピンクのスカーフを巻いて、満面の笑みを浮かべながらハシャぐ彼女を見たかった。校長室まで残した道のりを歩きながら見慣れた景色を見ているとやはりそう思ってしまう。
「あなたは、このローズソーンアカデミーの歴史の中で最も優秀な生徒であり、立派に生徒会長を務め上げました。私は校長として誇らしく思います」
「ありがとうございます」
「セレナ・ヴァレンタインの名は生涯忘れることはないでしょう」
「光栄です」
「あなたの未来が素晴らしいものであるよう祈っています」
ゆっくりとカーテシーをして校長室から出ると卒業式独特の賑やかさに目を細める。
親に強制的に入学させられた者がほとんどであり、卒業によって解放を得た令嬢たちの喜びは品がないと叱られたところで抑えられるものではない。
セレナもそうだ。三日前に届いたエドモンドから手紙では明日、婚約発表すると書いてあった。今日はシルバークレストカレッジも卒業式であるため迎えには行けないが、明日、二人揃って発表しようと。それを思い出すと表情がニヤケそうになる。家族から解放され、エドモンドの傍にいられる。本当ならこの場で笑いながら一人踊りたいほど舞い上がっていた。
「セレナ様、卒業ですわね」
「そうですね。あっという間の三年間でした」
「明日からは婚約者探しですの?」
「どうでしょう」
「あら、もう目星はついているという感じですわね?」
「秘密です」
アネット以外とは特別な友情はなかったが、こうして声をかけてもらえることは嬉しい。笑顔が出てしまいそうになるのを堪えながら馬車に向かっていると黄色い声が聞こえてきた。
「ルカ様よ!」
「ルシア様を迎えに来られたのよ!」
セレナの表情が怪訝なものへと変わる。
「シルバークレストカレッジも今日が卒業式のはずでは……」
「ですわね。毎年同じ日に卒業式ですもの」
ローズソーンアカデミーとシルバークレストカレッジでは敷地から校舎から生徒数から全ての規模が桁違い。そのためローズソーンと違って卒業式にはかなりの時間がかかる。同じ時間に終わるなどあり得ない。それなのにシルバークレストカレッジの生徒であるルカ・フィリバートがここにいるのはおかしい。
「彼は卒業生ですよね?」
「ええ、ルシア様と同学年ですもの」
「まだ卒業式の途中では──」
ルカが花束を持って馬車を降りるとルシアは少し手前で立ち止まっていた。待っているのだ。結婚までは女遊びを許していたが、卒業したら結婚する。今日からルカは自分だけのものになる。自分だけが触れていい男だと喜びに満ちていた。頬を染め、目の前までやってくるのを待っていたルシアの横をルカは通り過ぎた。
「え……」
黄色い声は一瞬で消え、ルシアが驚いた顔で振り返る。花束を持ってどこへ行くのか。
セレナは嫌な予感がした。ルカの目が、狩人のような目がこちらを見ている。その足は目的地がわかっているかのように真っ直ぐこちらに向かっている。彼が持っているのはローズソーンアカデミーの卒業式に相応しいバラではなくライラックの花束。
隣の令嬢を見て、別れの挨拶をして、急いで馬車に乗り込まなければならないのに、セレナは視線を逸らすことも、後ずさることもできないでいた。隣の令嬢が驚きの顔でルカとセレナを交互に見る。
あくまでも想像でしかない。最悪の想像でしかない。それが現実になるとは限らない。だけど、想像だけで終わるには彼の歩みに迷いがない。
「いや──」
「ルカ様!?」
思わず漏れた声はルシアの声によって掻き消された。
「卒業おめでとう、セレナ」
ルカがセレナを名前で呼んだことで黄色い声を出していた令嬢たちがザワつく。誰とも噂がなかったセレナが、あのセレナ・ヴァレンタインがルカと知り合いだったのかと。
婚約者であるルシアを通りすぎてお祝いの言葉をセレナに贈ったルカをルシアが慌てて追いかける。しかし、ルシアが追いつくより先にルカがその場で片膝をついた。花束を地面に置き、ポケットを探る。そこから小箱を取り出すのに時間はかからなかった。逃げる一瞬の隙も与えないほど滑らかな動きで蓋を開ける。
「結婚しよう」
まるで約束でもしていたかのように笑顔で告げるルカがセレナは心底恐ろしかった。
今日は素晴らしい一日になる予定だった。卒業式のスピーチは完璧で、家に帰ったら父親から褒めてもらい、ご馳走を食べる。デザートはセレナの希望で豪華なパフェの予定だった。明日のためにエステを受け、ようやく誰の前でも笑顔を見せることが許されるはずだった──……
ルカはあえてこの日を選んだ。エドモンドとの婚約を知っているからこそ、今日を選んだのだ。
「どういうことですの!?」
ようやく追いついたルシアが金切り声を上げる。
「その指輪……」
自分が欲しがっていた指輪ではない。フィリバート家に代々受け継がれてきた指輪ではなかった。ルシアにとってそれはとてつもない違和感を覚えるもので、怪訝な顔で二人を見る。
「彼女と知り合いでしたの?」
「俺が惚れたんだよ。彼女以上の女は世界中どこ探しても見つからない。俺はもう決めたんだ。彼女と結婚するってな」
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何を言っているんだ。セレナは奇しくもルシアと同じ気持ちでいた。
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「違う……そんなことしてない……」
「あれ? これは内緒にしてたほうがよかった? ごめんごめん。嬉しくて話しちまった」
悪意を具現化したような人間がいるとすればルカ・フィリバートがそうだろうとセレナはぼんやりとした頭で思った。
彼は壊しに来ているのだ。セレナの幸せを、人生を。彼にとって、アネットがそうだったように、自分も玩具。遊んでいた玩具が壊れてしまったから次ので遊ぶ。その程度の感覚なのかもしれない。
当然、ルカのプロポーズはローズソーンアカデミーに混乱をもたらした。
男子禁制の場に男が侵入し、婚約者の目の前で他の女にプロポーズしている。しかもその相手はあのセレナ・ヴァレンタイン。セレナに婚約者の話はなかったが、相手が悪い。相手の男は婚約者持ちで、ルシア・レヴィ。幸いなのはどちらも公爵家の人間であること。
大泣きするルシア。困惑する生徒。呆然とするセレナ。駆けつける教師。たった一人、笑顔のルカ・フィリバート。場は騒然とし、晴れやかで終えるはずだった卒業式はルカの登場によって暗雲が立ち込める。
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