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彼の想い
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「僕の兄であるジェラルド王子は正真正銘、完璧な男なんだ。セレナに似てるかもしれないな」
「ジェラルド様が、私に?」
第一王子であるジェラルドは誰が見ても完璧な男。欠点を探すほうが難しいような完全無欠な男だとセレナの印象の中にはあった。誰もがそう思っているだろう。
そんな男と自分が似ているというのはセレナの中ではどうにもしっくりこない。
「兄上は、失敗しない。笑わない。慌てない。常に胸を張って、凛としている。弟から見ても素晴らしい人間だと思う。君もそうだよ、セレナ。君の笑顔は華やかで愛らしい。見ているだけで癒される。君も失敗しない。慌てない。凛としている姿は美しく、婚約者であることが誇らしいんだ」
喜ばしいはずの言葉に喜べないのは、それがどれも「コンプレックス」と言っているように聞こえてしまうから。
彼は自分を完璧ではないと言う。セレナは自分のことはもちろん、完璧だと思っていた父親のことすら完璧ではないのだと思い改めた。だからエドモンドが完璧ではないことを驚きはしない。
「僕もそうありたいと思った。僕は中間子だから、兄でもあり、弟でもある。兄から自慢の弟だと思われたいし、弟たちには自慢の兄だと思われたい。完璧である兄の弟は当然、完璧でなければならない。完璧な長男を持つ弟たちの兄も完璧でなければならない。それは当然のことで、僕は兄の背中を追い、その背中を弟たちに見せることに必死になった」
当然──その言葉がどれほど重いものかをセレナは知っている。
人々は簡単にその言葉を口にするが、完璧であることは当然ではない。そこに至るまで、自分を律し、抑圧し、自由を犠牲にし続けた。そして、時折、自分でも制御できないほどの苦しみに涙する。
周囲からの期待。自己評価による課題。目標を一つ達成しても次から次へと新しい課題が降ってくる。完璧という称号を得るに相応しい人間となるために必要な課題は尽きることなくのしかかってきた。
「でも、どれだけ必死に追いつこうとしても追いつけない。当然だ。だって僕は、弟たちに絵本を読んであげることすらできないんだから。あの言葉はどうやって書くのかと聞かれても答えられない。わからないことは辞書で引くことが大事だと辞書を運んできてやることしかできない兄が完璧になれるはずがない。なんでもできる完璧な王子は兄であって僕じゃない」
今にも泣き出しそうなエドモンドを見てセレナはベッドを降り、抱きしめた。今まで一度だって弱々しいエドモンドなど見たことがない。柔和で、凛とした爽やかな優しい人だった。
でも違った。本当の彼はとても繊細で、脆くて、コンプレックスにまみれた儚い人。必死に周りの理想どおりであろうと努力し続けてきた人。
(ああ……だから……)
セレナはヴィーオを見た。相変わらず冷たい目をしているが、セレナはその理由がルカを刺したからではないことに気付いた。
王子の婚約者が人を刺したことに怒っているのではなく、苦しみながら努力して、理想とは違う現実に、なりきれない完璧を偽り続けなければならない現実に更に苦しみ続けているエドモンドをまた更に苦しめる問題を起こしたことに怒っていたのだ。
ヴィーオはエドモンドが苦しむ姿を誰よりも近くで見て支えてきた。彼の手となり足となるだけではなく、彼はもうエドモンドにとって魂の片割れのような存在なのかもしれない。ヴィーオにとってもそうなのだろう。
「完璧だと言われるセレナ・ヴァレンタインが完璧を強要されることに不満を漏らす。完璧ではなければならないとプレッシャーを感じる君を見て、僕は安堵していたんだ。セレナ・ヴァレンタインは完全無欠なわけじゃない。完璧であろうとしているんだと」
「私は……ううん、私も完璧ではありません。喜びよりも不満が多いし、腹も立てれば中指も立てます」
顔を上げたエドモンドと振り返ったヴィーオが同じ顔を見せることにセレナが小さく笑う。
「私は、完璧な人間ではありません。完璧であろうとしていただけ。一点の取りこぼしも許されない環境の中で自分が生きやすいために必死に努力してきました。笑わないことは平常心を保つためでもあったような気がします。人と仲良くしないことが強みでもあったのだと、アネットを失って気付きました」
「そうだな。親友なんか作らなきゃ、お前が愚行に走ることもなかった」
「親友の存在が私の行動を決めたんじゃない。私が自分を抑えられなかっただけ」
「でも親友がいなきゃお前あんな行動に出ることすらなかった」
「ヴィーオ、やめるんだ」
エドモンドの制止に舌打ちをしてセレナから顔ごと逸らすのを見てエドモンドだけが苦笑する。
「ルカ・フィリバートを刺さなければ彼が私に興味を持つこともなく、殿下にご心配をおかけすることもありませんでした」
「僕のことはいいんだよ。君を信じているからね」
予想どおりの言葉にセレナは思わず目を閉じた。
「殿下は私と結婚するつもりだとおっしゃってくださいました」
「そのつもりだよ」
「ですが、ルカ・フィリバートの興味が消えない限り、いつまでも現れると思うんです」
「俺もそう思う。アイツは執着すると飽きるまで現れる。そいつが迷惑していようと関係ない。自分の欲望を満たすことを優先するんだ」
「ヴィーオは彼と幼馴染だったね」
「ああ。だからアイツの異常性はよく知ってる。いつか、こいつに刺されたってことを言いふらすかもしれねぇ」
セレナもその可能性を危惧していた。証拠は残していなくとも犯人に仕立てることは容易だ。覚えていないを思い出したに変えるだけで警察は動き出す。容疑者として連れて行かれた時点で、世間では犯人確定と噂が広がる。
そうなればさすがに王族も無言ではいられない。
「ルカは金には興味ねぇし、金を積めばどうにかなる相手じゃねぇ。自分の手を汚すこともなんとも思ってねぇ。自分の目的を邪魔する奴には容赦なく手を下す。それが王子であろうとな」
「僕は弱いからなぁ。剣も銃もからっきしで、戦闘術も苦手だ」
彼の頭の中にやり合う計画が少しでもあったことに苦笑が濃くなる。
「……あの日、私は完全に彼を仕留めたと思ったんです」
「おい」
「でも彼は、寸前で身体ズラして刺傷部位を変えたことようです。私は躊躇しなかったし、ナイフは上手く骨の間を抜けたので間違いなく心臓を捉えたと確信していたので、確認せずその場を立ち去ってしまいました」
「マヌケ」
「ヴィーオ」
完璧と呼ばれる女にマヌケと言うのはヴィーオだけだろうとエドモンドが眉を下げながらかぶりを振る。
セレナにとっての最大の汚点は彼の死を見届けなかったこと。
「二人とも物騒だよ。僕は彼が生きていてくれて良かったと思うけどね」
「生きてたせいで今こうなってんだろ。お前とこいつが結婚したからってルカは諦めねぇぞ」
「困ったね」
「こいつとの結婚は延期したほうがいい」
「嫌だ」
「なっ!?」
「殿下?」
子供のように顔を背けて拒否するエドモンドにセレナも驚いた。
「結婚発表と同時に自分を刺した犯人だって発表したらどうすんだよ!」
「証拠なき発表を鵜呑みにするほど僕たちは愚かではないよ」
「……ジェラルド王子もか?」
「……まあ、兄上は……僕が話をするさ」
疑いがあるなら払拭してからにしろと言いかねない兄に苦笑しながらセレナを抱きしめる。
ジェラルドは血の繋がった兄だが、これまでの人生で話をした回数は数え切れる程度。兄でありながら雲の上のような存在。上手く話ができるかもわからない。
「エドモンドの問題はそこだとして、こいつの問題は何も解決してないよな。昨日、お前の親父が来て土下座してたぜ。恥知らずな娘との婚約は解消していただきたいって」
「聞いた。相当怒ってたし、何度も頬を打たれたもの。謝罪しに行くって言ってたからそれぐらいは言うだろうなって思ってた」
セレナの声が少しずつ小さくなっていくのを感じてエドモンドが顔を上げて笑顔を見せる。
「大丈夫だよ、セレナ。僕は君と結婚する。誰が反対しようともね」
その言葉から感じるのは愛情というよりも執着に似ているような気がして、セレナの肌が小さく粟立つ。どこかルカと同じ雰囲気を感じるのは気のせいだろうか。
思わずヴィーオを見るも目は合わない。ヴィーオもまた、どこか不安げにエドモンドを見ていた。
「ジェラルド様が、私に?」
第一王子であるジェラルドは誰が見ても完璧な男。欠点を探すほうが難しいような完全無欠な男だとセレナの印象の中にはあった。誰もがそう思っているだろう。
そんな男と自分が似ているというのはセレナの中ではどうにもしっくりこない。
「兄上は、失敗しない。笑わない。慌てない。常に胸を張って、凛としている。弟から見ても素晴らしい人間だと思う。君もそうだよ、セレナ。君の笑顔は華やかで愛らしい。見ているだけで癒される。君も失敗しない。慌てない。凛としている姿は美しく、婚約者であることが誇らしいんだ」
喜ばしいはずの言葉に喜べないのは、それがどれも「コンプレックス」と言っているように聞こえてしまうから。
彼は自分を完璧ではないと言う。セレナは自分のことはもちろん、完璧だと思っていた父親のことすら完璧ではないのだと思い改めた。だからエドモンドが完璧ではないことを驚きはしない。
「僕もそうありたいと思った。僕は中間子だから、兄でもあり、弟でもある。兄から自慢の弟だと思われたいし、弟たちには自慢の兄だと思われたい。完璧である兄の弟は当然、完璧でなければならない。完璧な長男を持つ弟たちの兄も完璧でなければならない。それは当然のことで、僕は兄の背中を追い、その背中を弟たちに見せることに必死になった」
当然──その言葉がどれほど重いものかをセレナは知っている。
人々は簡単にその言葉を口にするが、完璧であることは当然ではない。そこに至るまで、自分を律し、抑圧し、自由を犠牲にし続けた。そして、時折、自分でも制御できないほどの苦しみに涙する。
周囲からの期待。自己評価による課題。目標を一つ達成しても次から次へと新しい課題が降ってくる。完璧という称号を得るに相応しい人間となるために必要な課題は尽きることなくのしかかってきた。
「でも、どれだけ必死に追いつこうとしても追いつけない。当然だ。だって僕は、弟たちに絵本を読んであげることすらできないんだから。あの言葉はどうやって書くのかと聞かれても答えられない。わからないことは辞書で引くことが大事だと辞書を運んできてやることしかできない兄が完璧になれるはずがない。なんでもできる完璧な王子は兄であって僕じゃない」
今にも泣き出しそうなエドモンドを見てセレナはベッドを降り、抱きしめた。今まで一度だって弱々しいエドモンドなど見たことがない。柔和で、凛とした爽やかな優しい人だった。
でも違った。本当の彼はとても繊細で、脆くて、コンプレックスにまみれた儚い人。必死に周りの理想どおりであろうと努力し続けてきた人。
(ああ……だから……)
セレナはヴィーオを見た。相変わらず冷たい目をしているが、セレナはその理由がルカを刺したからではないことに気付いた。
王子の婚約者が人を刺したことに怒っているのではなく、苦しみながら努力して、理想とは違う現実に、なりきれない完璧を偽り続けなければならない現実に更に苦しみ続けているエドモンドをまた更に苦しめる問題を起こしたことに怒っていたのだ。
ヴィーオはエドモンドが苦しむ姿を誰よりも近くで見て支えてきた。彼の手となり足となるだけではなく、彼はもうエドモンドにとって魂の片割れのような存在なのかもしれない。ヴィーオにとってもそうなのだろう。
「完璧だと言われるセレナ・ヴァレンタインが完璧を強要されることに不満を漏らす。完璧ではなければならないとプレッシャーを感じる君を見て、僕は安堵していたんだ。セレナ・ヴァレンタインは完全無欠なわけじゃない。完璧であろうとしているんだと」
「私は……ううん、私も完璧ではありません。喜びよりも不満が多いし、腹も立てれば中指も立てます」
顔を上げたエドモンドと振り返ったヴィーオが同じ顔を見せることにセレナが小さく笑う。
「私は、完璧な人間ではありません。完璧であろうとしていただけ。一点の取りこぼしも許されない環境の中で自分が生きやすいために必死に努力してきました。笑わないことは平常心を保つためでもあったような気がします。人と仲良くしないことが強みでもあったのだと、アネットを失って気付きました」
「そうだな。親友なんか作らなきゃ、お前が愚行に走ることもなかった」
「親友の存在が私の行動を決めたんじゃない。私が自分を抑えられなかっただけ」
「でも親友がいなきゃお前あんな行動に出ることすらなかった」
「ヴィーオ、やめるんだ」
エドモンドの制止に舌打ちをしてセレナから顔ごと逸らすのを見てエドモンドだけが苦笑する。
「ルカ・フィリバートを刺さなければ彼が私に興味を持つこともなく、殿下にご心配をおかけすることもありませんでした」
「僕のことはいいんだよ。君を信じているからね」
予想どおりの言葉にセレナは思わず目を閉じた。
「殿下は私と結婚するつもりだとおっしゃってくださいました」
「そのつもりだよ」
「ですが、ルカ・フィリバートの興味が消えない限り、いつまでも現れると思うんです」
「俺もそう思う。アイツは執着すると飽きるまで現れる。そいつが迷惑していようと関係ない。自分の欲望を満たすことを優先するんだ」
「ヴィーオは彼と幼馴染だったね」
「ああ。だからアイツの異常性はよく知ってる。いつか、こいつに刺されたってことを言いふらすかもしれねぇ」
セレナもその可能性を危惧していた。証拠は残していなくとも犯人に仕立てることは容易だ。覚えていないを思い出したに変えるだけで警察は動き出す。容疑者として連れて行かれた時点で、世間では犯人確定と噂が広がる。
そうなればさすがに王族も無言ではいられない。
「ルカは金には興味ねぇし、金を積めばどうにかなる相手じゃねぇ。自分の手を汚すこともなんとも思ってねぇ。自分の目的を邪魔する奴には容赦なく手を下す。それが王子であろうとな」
「僕は弱いからなぁ。剣も銃もからっきしで、戦闘術も苦手だ」
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「おい」
「でも彼は、寸前で身体ズラして刺傷部位を変えたことようです。私は躊躇しなかったし、ナイフは上手く骨の間を抜けたので間違いなく心臓を捉えたと確信していたので、確認せずその場を立ち去ってしまいました」
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「嫌だ」
「なっ!?」
「殿下?」
子供のように顔を背けて拒否するエドモンドにセレナも驚いた。
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