統合失調症妻の事件簿

高見もや

文字の大きさ
8 / 14

第八話

しおりを挟む
ある日、玲奈と僕は近所の公園で散歩をしていた。秋の風が心地よく、紅葉した木々が優しく揺れている。玲奈はとても楽しそうに歩きながら、「今日は何をしようか?」と僕に尋ねてきた。

「うーん、特に何か決めてなかったけど、何か面白いことがあればいいね。」

玲奈はしばらく考え込み、にっこりと笑って言った。「あ、そうだ!今日は『小さな幸せ探し』をしよう!」

「小さな幸せ?」

「うん、例えば、すれ違う人が笑っているのを見るとか、空に虹がかかるのを見つけるとか。そういう、ほんの些細なことを幸せだと思ってみよう!」

「なるほど、それなら簡単にできそうだね。」

玲奈は嬉しそうにうなずき、「じゃあ、早速探しに行こう!」と言って歩き出した。

小さな幸せを見つけた日
公園の中を歩いていると、すぐに小さな幸せが見つかった。玲奈が指差して、「あ、見て!」と叫ぶ。

そこには、何匹かの小さな猫が日向ぼっこをしていた。猫たちは丸くなって、ぽかぽかと昼寝をしている。その愛らしい姿を見て、思わず僕も「これ、幸せだね」と微笑んだ。

「やっぱり、動物の可愛さって幸せだよね!」玲奈は満足そうに言った。

その後も、玲奈と僕は公園を歩きながら、さまざまな「小さな幸せ」を見つけた。子どもたちが元気よく遊んでいる姿、おばあさんがベンチで本を読んでいる静かな時間、空にぽっかりと浮かんだ白い雲…どれも特別なことはないけれど、心が温かくなる瞬間だった。

「こうやって幸せを探すのも楽しいね。」玲奈は嬉しそうに言う。

「うん、確かに。普段は気づかないようなことにも、幸せっていっぱい隠れてるんだね。」

ちょっとしたサプライズ
その日の散歩の帰り道、玲奈が突然立ち止まった。何かを見つけたようだ。僕が「どうした?」と尋ねると、玲奈はにっこりと笑って指を指した。

「ほら、あれ!」

そこには、路面に落ちている小さな花束があった。どうやら、風で飛ばされたのか、誰かがわざと置いていったのか分からないが、その花束はまるで「幸せを探している人」に届けられたように見えた。

「こんなところに花束が…」僕も驚きながら、それを手に取った。

玲奈は「これ、まさに今日の小さな幸せだね!」と笑顔を浮かべて言った。

「ほんとだね。」僕も微笑んで花束を玲奈に手渡した。「君にプレゼント。」

玲奈は目を輝かせながら花束を受け取ると、「ありがとう!」と照れながらも嬉しそうに言った。

夕焼けと一緒に
花束を持ちながら、二人で家路につく途中、空が夕焼けに染まってきた。空全体がオレンジ色に変わり、その光が周りの木々を優しく照らしていた。

「見て、きれいだね。」玲奈はその光景に感動して、思わずつぶやいた。

「うん、本当に。」僕も同じ気持ちだった。

その時、玲奈は花束を握りしめながら言った。「こういう些細なことが、実は幸せなんだね。気づかなかったけど、今日はたくさん見つけた気がする。」

「うん、僕もそう思う。」

玲奈は花束を僕に向けて差し出し、「これ、君にもあげる。」と言った。

「え、僕にも?」

「うん。だって、今日は君と一緒にたくさんの幸せを見つけたから。」玲奈は照れ笑いをしながら言った。

その瞬間、僕の心は温かい気持ちでいっぱいになった。こんなにも簡単に、幸せって見つかるものなんだと、改めて感じた瞬間だった。

帰宅後の幸せ
家に帰ると、玲奈は花束を一番目立つ場所に飾り、「これ、今日の幸せの証だね」と言ってニコニコしていた。

その夜、二人でお茶を飲みながら、日常の中で見つけた小さな幸せを話し合った。お互いに、あの花束が今日一番の幸せだと思っていた。

「次はどんな小さな幸せを見つけようかな?」玲奈がふとつぶやいた。

「次もまた、一緒に探そう。」僕はそう答えながら、玲奈の笑顔に温かい気持ちを感じた。

小さな幸せを見つけることが、こんなにも心を豊かにしてくれるんだと実感した一日。幸せは、特別なことではなく、身近な日常にたくさん隠れている。玲奈と一緒に過ごす時間が、何よりも貴重な幸せだと心から思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...