【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。

文字の大きさ
6 / 10

追加エピソード:王太子レオンハルト視点

リリアの甘い声が、
まるで蜜のように耳に絡みついていた。

「殿下ぁ~♡
わたしぃ……こわかったんですぅ……
エリシア様がぁ……」

その声を聞くたびに、
胸の奥がじんわりと温かくなる。

守らなければ。
彼女を。

そう思うのは自然なことだと、
ずっと信じていた。

……だが、今思えば違う。

あれは“温かさ”ではなく、
魔力を吸われたあとの虚ろな快感だった。

エリシアが静かに言葉を発した瞬間、
胸の奥がざわついた。

「私は聖女を攻撃していません」

その声は、
リリアの甘声とは違う。

冷静で、澄んでいて、
まるで霧を晴らす風のようだった。

なぜだろう。
その声を聞いた瞬間、
胸が痛んだ。

(……エリシア……)

彼女はいつも、
私の隣で静かに微笑んでいた。

だが私は、
その微笑みを一度も“見よう”としなかった。

リリアの甘声に溺れ、
エリシアの言葉を聞こうとしなかった。

「あなた、嘘をつくと語尾が伸びますよね?」

エリシアの言葉に、
リリアの顔が引きつる。

その瞬間、
胸の奥で何かが崩れた。

(……嘘……?)

リリアの甘声が、
急に薄っぺらく聞こえた。

「殿下ぁ~♡
わたしぃ……そんなつもりじゃぁ……」

語尾が震えている。
甘さが崩れている。

私は初めて、
リリアの声が“作り物”だと気づいた。

だが遅かった。

「リリア様は聖女ではありません。
“魔力吸収の禁術師”です」

エリシアの言葉が落ちた瞬間、
世界がひっくり返った。

頭が痛い。
胸が苦しい。
呼吸が乱れる。

(……私は……操られていた……?)

だが、
それでもエリシアを断罪しようとしたのは、
私自身だ。

魔力を吸われていたとはいえ、
判断を放棄したのは私だ。

「婚約破棄は、こちらから願い下げです」

その言葉は、
刃より鋭く胸に突き刺さった。

(……嫌だ……)

エリシアがいなくなる。
その未来が、
恐ろしくてたまらなかった。

だが――
彼女はもう、私を見ていなかった。

私の隣に立つ資格など、
最初からなかったのだ。

私は崩れ落ちた。

「……すまなかった……
すまなかった……エリシア……」

謝罪は届かない。
届くはずがない。

私は、
彼女の人生を奪おうとしたのだから。

そして、
黒髪の公爵が現れた瞬間、
私は悟った。

(……ああ。
彼女は、もう私のものではない)

エリシアは、
私が一度も守れなかった女性だ。

だが公爵は違う。
彼は、彼女を守るだろう。

私にはできなかったことを。

私はただ、
崩れ落ちたまま、
彼女の背中を見送るしかなかった。


感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢ですが、面倒なので全部放置します

かきんとう
恋愛
 王都の大広間に、どよめきが広がった。  天井から吊るされた巨大なシャンデリアが、何百もの蝋燭の光を反射し、きらきらと輝いている。その光の中心に立つ私は、妙に他人事のような気分で、その場の空気を眺めていた。 「エレノア・フォン・リーベルト! 私は貴様との婚約をここに破棄する!」  高らかに宣言したのは、第一王子であり私の婚約者でもあったアルベルト殿下だった。  周囲の貴族たちが一斉に息を呑み、次の瞬間には小声のざわめきが連鎖のように広がっていく。  ――ああ、ついに来たのね。

元婚約者のあなたへ どうか幸せに

石里 唯
恋愛
 公爵令嬢ローラは王太子ケネスの婚約者だったが、家が困窮したことから、婚約破棄をされることになる。破棄だけでなく、相愛と信じていたケネスの冷酷な態度に傷つき、最後の挨拶もできず別れる。失意を抱いたローラは、国を出て隣国の大学の奨学生となることを決意する。  隣国は3年前、疫病が広がり大打撃を受け、国全体が復興への熱意に満ち、ローラもその熱意に染まり勉学に勤しむ日々を送っていたところ、ある日、一人の「学生」がローラに声をかけてきて―――。

婚約破棄された公爵令嬢は、もう助けません

エスビ
恋愛
「君との婚約は破棄する。――君は、もう必要ない」 王太子から一方的に突きつけられた婚約破棄。 その理由は、新たに寵愛する令嬢の存在と、「君は優秀すぎて扱いづらい」という身勝手な評価だった。 だが、公爵令嬢である彼女は泣かない。 怒りに任せて復讐もしない。 ただ静かに、こう告げる。 「承知しました。――もう、誰の答えも借りませんわ」 王国のために尽くし、判断を肩代わりし、失敗すら引き受けてきた日々。 だが婚約破棄を機に、彼女は“助けること”をやめる。 答えを与えない。 手を差し伸べない。 代わりに、考える機会と責任だけを返す。 戸惑い、転び、失敗しながらも、王国は少しずつ変わっていく。 依存をやめ、比較をやめ、他人の成功を羨まなくなったとき―― そこに生まれたのは、静かで確かな自立だった。 派手な断罪も、劇的な復讐もない。 けれどこれは、 「奪われたものを取り戻す物語」ではなく、 「もう取り戻す必要がなくなった物語」。 婚約破棄ざまぁの、その先へ。 知性と覚悟で未来を選び取る、静かな逆転譚。

旦那様は、義妹の味方をしたことを心から後悔されているみたいですね♪

睡蓮
恋愛
マリーナとの婚約関係を築いていたクルーゲル伯爵、しかし彼はマリーナにとって義妹にあたるリオーネラとの関係を深めてしまい、その果てに子どもを作ってしまう。伯爵はマリーナを捨ててリオーネラを正式な婚約者にするよう動こうとするものの、その行いこそが自分たちを破滅に導く第一歩となってしまうのだった…。

ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ

ハートリオ
恋愛
結婚式で新郎に『君じゃない』と叫ばれたのはウィオラ。 スピーナ子爵家の次女。 どうやら新郎が結婚する積りだったのは姉のリリウム。 ウィオラはいつも『じゃない方』 認められない、 選ばれない… そんなウィオラは―― 中世ヨーロッパ風異世界でのお話です。 よろしくお願いします。

侯爵家の婚約者に手を出す意味、わかってます?

碧井 汐桜香
恋愛
侯爵令嬢ジョセリアは地味な外見をしている少女だ。いつも婚約者のアランとその取り巻きの少女たちに罵倒されている。 しかし、今日はアランの取り巻きは一人しかおらず、いつも無視を決め込んでいたジョセリアが口を開いた。

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。