物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。

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妊娠が判明してから数日。
公爵家は祝福の空気に包まれていたが、
セレナの身体には少しずつ変化が現れ始めていた。

朝。
セレナはベッドの上でゆっくりと起き上がった瞬間、
胸の奥がふわりと揺れ、
軽い吐き気が込み上げた。

(……また……)

セレナは口元を押さえ、
深呼吸をする。

その様子を見て、
レオンがすぐに駆け寄った。

「セレナ……!
 また気分が悪いのか?」

「だ、大丈夫……
 少しだけ……」

レオンは迷いなくセレナを抱き上げた。

「大丈夫じゃない。
 横になっていなさい」

セレナは困ったように笑う。

(……レオン様……
 本当に過保護になった……)

でも、その過保護が嬉しくて、
胸が温かくなる。




昼過ぎ。
ミーナが用意したスープを口にした瞬間、
セレナは眉を寄せた。

「……ごめんなさい……
 なんだか……匂いが強くて……」

ミーナはすぐに下げようとする。

「申し訳ありません!
 すぐ別のものを――」

レオンが制した。

「ミーナ、責めるな。
 セレナの身体が変化しているだけだ」

セレナは申し訳なさそうに俯く。

「わたし……
 わがままみたいで……」

レオンはセレナの手を取り、
優しく言った。

「違う。
 君は今……
 命を育てているんだ。
 君の身体の声を最優先にするべきだ」

セレナの胸がじんと熱くなる。

(……レオン様……
 こんなに優しくしてくれるなんて……)



その夜。
セレナは寝室の窓辺で、
静かにお腹に手を当てていた。

(……わたし……
 本当に……
 ちゃんと母になれるのかな……)

過去の記憶がふとよぎる。

物置部屋で震えていた日々。
誰にも必要とされなかった時間。

(……そんなわたしが……
 この子を……)

胸が締めつけられ、
涙が滲む。

そのとき、
背後からレオンがそっと抱きしめた。

「セレナ……
 泣いているのか?」

セレナは慌てて涙を拭う。

「ごめんなさい……
 なんだか……不安で……」

レオンはセレナの肩に顔を寄せ、
静かに囁いた。

「不安になるのは当然だ。
 でも……
 君はひとりじゃない。
 私がいる。
 この家の皆もいる。
 そして……
 君は誰よりも優しい。
 必ず良い母になれる」

セレナは胸がいっぱいになり、
レオンの胸に顔を埋めた。

「……レオン様……
 ありがとう……」

レオンはセレナの背を撫でながら言った。

「君が不安なときは、
 何度でも言う。
 君は大丈夫だ。
 君は強い。
 君は……
 私の誇りだ」

セレナの涙は、
不安ではなく“安心の涙”に変わっていった。



その夜、
セレナはお腹にそっと手を当てて呟いた。

「……わたし……
 あなたを守るね……
 絶対に……」

その声は震えていたが、
確かな強さが宿っていた。

レオンはその姿を見つめ、
静かに微笑んだ。

(……セレナ……
 君はもう……
 立派な母だ)
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