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序章
海の怪物とコナーの過去
しおりを挟む「これを見ろ。」
ジョゼフさんはそう言うと一枚の紙と大きな鱗を取り出した。
「これは俺が海で見た怪物の絵と鱗だ。」
鱗は手のひらよりも大きく、絵には海から現れた巨大な龍が描かれていた。
「地上の生物はあらかた調べられてはいるが、海には見たことがない生物がわんさかいるんだ!そこで新しい生き物を見つけて名前をつけるのが俺たち海洋調査ギルドってわけだ!」
この世界の海には、こんな生物がいるのか……俺は巨大な鱗と絵に目を奪われていた。
「そこでどうだ!お前たちもうちに入らないか?冒険者ギルドよりもドキドキワクワクを体験できるぞ!」
「あの……私たち!「入ります!」」
断ろうとしたクロの言葉を遮って、俺の口から出た言葉にクロは唖然としていた。
「コナー!二人で冒険者ギルドに入るって約束したじゃん!」
「ごめん、クロ。俺、昔から海の生き物が好きで、この世界でも水族館を作ることが小さい頃からの夢だったんだ!」
「「「水族館?」」」
俺以外の三人が聞いた事のない言葉に首を傾げた。
「水族館ってのは、海の生き物を誰でも、気軽に見ることができる夢のような場所のことで、冒険者ギルドに入ってたとしても俺はこの夢のために行動するつもりだったんだ。」
「なるほど、海の生き物を見世物にするってことか。確かにそれなら海の生き物への誤解も解けそうだ。」
「だから……ごめんクロ。俺は海洋調査ギルドに入ることに決めた。」
そう言うとクロは少し悩み、考えていた。
「わかった!じゃあ私もここにする!コナーの夢なんでしょ?それなら私も手伝いたいもん!」
「決まりだな!ようこそ海洋調査ギルドへ!お前たち歓迎してやれ!」
ジョゼフさんがそう言うと周りで酒を飲んでいた人たちが俺とクロの周りを取り囲んだ。
「お前たち海の魔物に興味あるのか!見てくれよ~これ、俺が捕まえた魔物の転写!」
「二人って付き合ってるの!?」
魔物の転写と言って、ただの魚の魚拓を見せてくる人や、俺とクロのことを色々と聞いてくる人たちに囲まれ。結局夕方になるまで俺たちが解放されることはなかった。
「二人ともごめんね。うちの男連中、久しぶりに新しい子が入ってくれたから相当嬉しかったのね。」
「いえ、気にしないでください。皆さんのお話とても楽しかったです!あっ宿……コナー今日どこに泊まろう……」
「あなたたち宿取ってないの?」
「はい、落し物届けるつもりがこんな時間になっちゃって。」
「ごめんなさい……どうしましょう……そうだわ!ギルドの空き部屋に泊まっていって!一部屋しか空いてないけどあなたたちなら平気でしょ!」
ナディアさんは俺たち二人がカップルだと勘違いしたままのようだったので、俺とクロのはただの幼馴染だと伝えた。
「あら、そうなの?困ったわね……」
「私は……私は大丈夫なので!コナーもいいでしょ?」
「まぁクロがいいなら俺はいいけど……。」
クロの言葉に少し緊張しながらも部屋に入り、俺は椅子に、クロはベット腰掛けた。
「ねぇコナー、私にもっとコナーのこと教えて。」
「な……なんだよ急に。」
今の状況も相まって俺の心臓が鼓動を速めた。
「私、コナーの夢のこととか知らなかったし。他にも知らないこと沢山あるんじゃないかと思って。」
「そういうことか……」
誤解だったと分かり少しほっとした。クロなら大丈夫か……俺はクロに自分が転生者であることと転生する前の世界のことを話した。
「うそ……なんで今まで話してくれなかったの?」
「ごめん、正直。誰にも話す必要がないと思ってたから……」
「おじさんとおばさんにも話してないの?」
「……俺が別の記憶を持って産まれたって聞いたらショックを受けると思って、話してない。」
「ダメだよそれは!コナーのお父さんも!お母さんも!きっとコナーのことならなんでも知りたいって思うはずだよ!」
「わかった……明日の朝家に帰って話してみるよ……」
「じゃあ、もう寝よ!……んっ!」
クロはベットの端にどけ、俺も布団に入るよう促してきた。
「いや、俺は床で寝るから気にすんな。」
「えぇ……一緒に寝ようよ~」
結局その日は、俺が床でクロがベットで寝て、夜を明かした。翌日になりまだほの暗い時間に俺は家へと帰った。
「……ただいま。」
「コナー!お前、昨日どこに行ってたんだ。お前が来るって言うから、俺はギルドでずっと待ってたんだぞ。」
「それも含めて、父さんと母さんに話があるんだ……」
俺は父さんと母さんに転生する前の人生のことと昨日のことを話した。
「今まで……黙っててごめん……」
「なんでもっと早くに話してくれなかったんだ?」
「父さんと母さんがショックを受けると思って……。」
母さんは涙を流し、父さんは悲しそうな顔をしていた。
「確かにショックを受けたな……ただそれはお前が別の記憶を持っていることにではなく。父さんと母さんを信用して話してくれなかったことにだ……。」
「私たちがそんなことで、あなたを嫌うわけないじゃない……」
「それに、別の記憶を持っていようが。今のお前の体は父さんと母さんが育てたんだ。父さんのように強く、母さんのように器用なお前は立派な俺たちの子供だ!」
「父さん……母さん……」
俺の目からも涙がこぼれる。
「少し違うわよお父さん、私たち四人の子供。コナーの前のお父様とお母様と、お話ができないのは残念だけど、二人の分まで私たちがこれからも愛情を注いであげるからね。」
それから三人で色々なことを話しながら昼食を食べていた。
「そういえば、コナーが話していた水族館?ってガラスの入れ物に魚?っていう海の生き物のことを入れるんだろ。俺が知り合いのガラス職人に頼んでやろうか?」
「うーん……どうなんだろ?俺がいた世界だと、アクリルガラスとか強化ガラスとかが使われてるけど、この世界の人に作れるのかな?」
「まぁ、頼めるだけ頼んでみるさ!飯食ったらまたギルドに戻るんだろ?頑張ってこいよ!」
食事を終え。改めて父さんと母さんの元を離れ、俺はギルドへと戻った。
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