異世界冒険録~七柱の神と十の種族~

ネコノトリ

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序章

海洋調査ギルド

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 人魚との出会いからすぐに、海が近くにない街に引越すことになった。俺はすぐに街に慣れ、あっという間に六年が経った。
「コナー……たまには家に帰ってきてね」

「わかってるよ母さん。母さんも元気で」

 十六歳になり、家を継がないものは独り立ちするという風習がこの世界にはあるので、俺は家を出て冒険者になることになった。

「お父さんはもうギルドにいるから、お父さんに色々聞いて頑張ってね。」

 母さんに別れを告げ、俺は家を出た。街では十六になる人たちを祝う祭りが行われていた。
「おはようコナー!早く一緒に冒険者ギルドに行こ!」

 「おはようクロ。クロは朝から元気だね……」

 彼女の名前はクロエ・ラシーヌ。こっちに引っ越してからできた俺の唯一の友達だ。同年代ということもあり、一緒に遊ぶことが多く。明るいクロの性格が影響し、仲良くなるのには時間はあんまりかからなかった。
「コナーはギルドに登録した後、何か予定はある?」

「うーん、宿を借りて昼食を取って……その後は簡単な依頼でもやってみるかな?」

「そっか!その依頼私も手伝っていい?」

「いいけど簡単な依頼受けるつもりだから報酬はほとんどないぞ?」

「コナーと一緒がいいの!」

 ギルドに入ってからのことをクロと話していると、前方不注意で誰かにぶつかってしまった。
「すみません!大丈夫ですか?」

「ん、あぁ大丈夫大丈夫。お互い気をつけような~」

 男は朝だというのに、かなり酔っており。千鳥足で俺たちが歩いてきた方向へ消えていった。
「ねぇコナー、これさっきの人が落としたんじゃないかな?」

「海洋調査ギルド?」

 男が落としたものはギルドカードのようで、そこには男の名前と海洋調査ギルドの文字が刻まれていた。
「届けてあげないと可哀想だよね。」

 俺とクロはギルドカードを届けるために、周囲の人に聴きながら海洋調査ギルドを探した。
「やっと見つけた……」

 お昼が過ぎた頃、ようやく海洋調査ギルドを見つけることができた。中に入るとギルドの内装は酒場のようになっており、海賊のような風貌の人たちが大声で笑いながら酒を飲んでいた。
「コナー……」

「大丈夫、俺から離れないで。」

 怯えるクロを連れ受付へと向かった。
「あら?可愛いカップルね。今日はこんなところに何しに来たの?」

 受付嬢は綺麗な女性のような外見をしているがやけに声が低くすぐに俺は何かを察した。
「すみません、よそ見をしていて男の人にぶつかってしまったのですが、その人がギルドカードを落としたことに気づかずに行ってしまったので届けに来ました。」

「ってこれジョゼフさんのじゃない!ジョゼフさんまたギルドカード落としたの!」

 受付の人はそう言うと奥の部屋へと走っていた。
「帰ろっか。」

 クロと目が合い、お互い同じ気持ちだったのだろう。俺たちはすぐにギルドを出ようとした。
「待って!」

 俺たちがギルドを出ようと、ギルドの入口に手をかけたタイミングで受付の人が戻ってきて、俺とクロを静止した。
「お願い待って!何か、何かお礼をさせて!」

「いえ、そんなお礼なんて前方不注意だったこちらが悪い訳ですし……」

「そんなわけには……そうだ!あなたたちお昼まだでしょ?奢ってあげるから食べていって!」

 受付の人の言葉を断りきれず、俺とクロはギルドで食事をすることとなった。席には俺とクロの他に受付の人とさっきの酔っぱらいがいた。
「自己紹介が遅れました。私の名前はナディア・ドローネ。そしてこっちの人がギルドマスターのジョゼフ・ギャバン」

「コナー・エイベルです……」

「クロエ・ラシーヌです……」

「そんなに怯えないで!本当に一緒に食事をするだけだから!ほら料理が届いたわよ!さっそく食べましょ!」

「こ……これは。」

 そこにはこちらに来てから一度も口にすることがなかった、魚料理がこれでもかというほど並べられていた。俺は我慢することができなくて一目散に料理を口にした。
「う……美味い!!」

「そこの彼は気に入ってくれたみたいね。お嬢さんはやっぱり怖い?」

「はい……」

 この世界では海は恐ろしいものとして知られており、海に住む生き物は全て魔物として扱われている。クロが怖がるのも無理はない。
「無理して食べなくてもいいけど。一口でいいから食べてほしいな?こんなに美味しいものを知らないなんてもったいないもの!ねっあなたもそう思うでしょ?」

 ナディアさんがこちらを見て、してきたウインクからはお前も何か言ってやれという圧を感じた。
「こんなに美味いのにクロは食べないのか……そうか~しょうがないな~クロの分は俺が食べよう!」

 そう言ってクロの料理にフォークを伸ばした。
「ダメ!心の準備をしてから食べようとしてたの!」

 クロはナイフで魚を切り分け恐る恐るフォークで一口食べた。
「美味しい……!?」

 一口食べてからは、クロの手が止まることはなく、物凄い勢いで完食した。

「お口にあったみたいでよかった!というか……ジョゼフさんいつまで寝てるの!早く起きて!」

 何も喋らないからおかしいとは思っていたが......やはり寝ていたかこの男。

「ん……ふぁー…。なんだようるせぇな人が気持ちよく寝てるっていうのによ。」

「ジョゼフさんのギルドカードを拾ってくれた人たちにお礼言うんでしょ!しっかりしてよ!」

「あ~そうだったそうだった。ありがとな、ガキども。おっお前らこの料理食ったのか!美味かったろ!」

 ジョゼフさんは魚料理を口にしたことを嬉しそうに喜んでいた。
「はい!とても美味しかったです!」

「そうか!美味かったか!そりゃ何より!よし!いい機会だからお前たちに一つ面白い話をしてやろう。」

 
 
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