異世界冒険録~七柱の神と十の種族~

ネコノトリ

文字の大きさ
8 / 42
序章

海ゴブリンの巣窟

しおりを挟む


「こんな足場の悪い場所で戦うことになるなんてな……」

 ボートに俺と父さんとジョゼフさん、それから冒険者ギルドの方々を乗せ海蝕洞の中へと入った。一隻につき二名乗っておりジョゼフさんが先頭、俺と父さんが最後尾に配置された。
 「止まれ……これを見ろ。」

 海蝕洞を進むと木製の足場が現れ、その上には生活空間が広がっており、火をおこし食事をした痕跡があった。
「……まだ暖かいな……みんな気をつけろ!どこかに潜んでいるぞ!急いであしばに移れ!」

 俺たちは急いで足場に飛び乗った。
「お前も早く来い!」

 ボートに一人の新人冒険者が取り残されていた。父の伸ばした手に新人冒険者が捕まろうとしたその時。海の中から顔を出したゴブリンがボートをひっくり返し新人冒険者が海に落ちてしまった。
「チッ!バカが!」

 すぐにジョゼフさんは海に飛び込み助けに向かった。この世界の人のほとんどが泳ぎを知らないため放っておけば彼の命はないだろう。ジョゼフさんを追いかけて俺も飛び込もうとしたが数十匹のゴブリンが足場に上がってきて追いかけることができなかった。

 ━━━━━海の中━━━━━
 海の中ではゴブリンが新人の手足を羽交い締めにし窒息死させようとしていた。
 『あれだけもがいているとなると、もって数分ってところか。目の前の奴らに時間はかけていられないな。』

 ジョゼフの前には三匹のゴブリンが立ち塞がっていた。ジョゼフは片手にナイフを持ちゴブリンの討伐を試みた。

 『チッ!速い!』

 海ゴブリンの指の間には水かきが付いており水中では人間の三倍近くの速度での移動を可能としている。ジョゼフは海ゴブリンの速度ついていけず、爪での攻撃を何度も受け出血していた。
 『今だ!』

 攻撃をしようと三匹が近くに来たタイミングでジョゼフは目を瞑り光の魔法を使った。光の魔法を食らったゴブリンは突然目の前が真っ白になり何が起きたか理解する暇もないままナイフで息の根を止められた。
 『間に合うか……!!』

 ジョゼフは急ぎ新人冒険者の元へと潜った。新人冒険者の手足から既にゴブリンは離れているが呼吸をしていないのかグッタリしている。これ以上ゴブリンと戦っていると手遅れになるだろう。
 『ここまでか……』

 ジョゼフが助けるのを諦め浮上しようしたその時。ジョゼフの頭上から水に飛び込む音が聞こえ。上をむくとそこにはコナーの姿があった。

 ━━━━━地上━━━━━
「生き埋めになりたくなければ強力な魔法は撃つなよ!」

 ジョゼフさんがいなくなった地上では海ゴブリンとの戦闘が続いていた。
「コナー!もしも泳げるなら海に潜ってジョゼフさんたちを助けてこい!不甲斐ないが俺たちは泳げん!お前だけが頼りだ!」

 俺は一度コクリと頷き。大空の魔力を急いで練って海に潜った。海に潜るとジョゼフさんとその奥にグッタリした新人冒険者がいた。俺は手のひらから大空の魔力を放出して新人冒険者の元へと向かった。
 『この速度じゃ間に合わない……!!』

 俺が諦めかけたその時。海の底からものすごい速度で浮上して新人冒険者の腕を掴み俺を通り過ぎた姿があった。
 『シルヴィ!!』

 俺は水面に向かうシルヴィを見届け海ゴブリンにあとを追わせないよう立ち塞がった。

 ━━━━━地上━━━━━

「早くこの子のこと引き上げて!」

「人魚!!」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!このままだとこの子死んじゃうわよ!」

「お前らやめろ!すまない俺が引き上げる。」

 水面から顔をだしたシルヴィはアランに新人を引き上げてもらった。
「あなたコナーのお父さんでしょ。その子息をしてないの、水を吐かせるから私のことも引き上げて。」

「……わかった。」

 アランはシルヴィに言われるがまま引き上げようとした。
「……重っ!!ダミアンお前も手伝ってくれ。」

 シルヴィを引き上げるにはアラン一人の力では足りずアランの仲間のダミアンに力を借りてシルヴィは足場に引き上げられた。
「アランさんもダミアンさんもおかしいですよ!俺のパーティーの仲間を魔物に任せるなんて!」

「だったらこいつを見殺しにするか?」

 反対する新人を無視してシルヴィは溺れた冒険者の腹部に触れ水の魔力を流した。(何も言わず足場にジョゼフが登った。)

 突然だが、魔法には二つの種類存在している。一つは生成魔法、無から有を生み出す魔法これは魔力の消費が大きく、大規模な魔法になると魔力に恵まれたものしか扱うことができない。

 そして二つ目が支配魔法、この世の全ての物には魔力が流れており。流れる魔力を支配することで自分の物にする魔法。存在する魔力を支配することにより少ない魔力で大きな力を発揮することができる。

 シルヴィは支配魔法の要領で体内に入り込んだ海水を魔力で上書きして慎重に口から排出した。
「私は回復魔法は使えないの!回復魔法を使える人は急いで!」

 シルヴィの呼び掛けにすぐに回復魔法を使える冒険者が駆け寄り回復魔法をかけた。
「けほっごほっ!!」

 しばらく回復魔法をかけていると意識を取り戻した。
 「よかった……。」

 回復した新人冒険者を見届けるとシルヴィは海に潜った。

 

 

 

 

 

 
 
 
 

 
 
 
 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...