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序章
人魚の協力
しおりを挟む「コナー、最後まで油断しちゃダメじゃない。」
俺とクロは助けてくれた人魚の元に近づいた。
「助かったよ。えっと……。」
「そういえば自己紹介がまだだったわね!私の名前はシルヴィ・バルべ!こう見えて人魚の中では上から数えた方が早いくらい偉いんだからね!」
「ねぇコナーこの人って……」
「あぁ前に部屋で話した子供の頃に助けた女の子だ。」
「やっぱり!私の名前はクロエ・ラシーヌ!さっきは助けくれてありがとね!」
「……あんたも自己紹介しなさいよ。下の名前は聞いたことあるけど、上の名前は知らないもの。」
「そういえば名前で呼ばれてたから忘れてたけど、自己紹介まだだったんだな。俺の名前はコナー・エイベルだ、改めてよろしく。」
「コナー……エイベルね……」
シルヴィはこちらを見てニコリと笑みを浮かべた。
「そういえばシルヴィはなんでこんなとこにいたんだ?前はサハギンに追われてだったけど、今回はそういう訳じゃないんだろ?」
俺は顔が熱くなっていることがバレないように急いで話を振った。
「言ったでしょ、お礼するって。初めは前にコナーが乗っていたものに大きな声で呼びかけたんだけど、コナーは浅瀬で小魚を探してるって言われてやってきたわけ。」
シルヴィが来てくれてなかったら俺かクロのどちらかが重傷を負ったに違いない。シルヴィにもだか俺たちの居場所をシルヴィに教えてくれたギルドの仲間にも感謝をしなくちゃな。
「今回は私が助けてあげたから、あと貸一つよ。私にできることは限られてるけど、何か頼みたいことはある?」
あの日、船で再び人魚に出会った日からお礼の内容は決めていた。
「だったら!この海の生き物がどんな生活をしているかを教えて欲しい!」
「そんなことでいいの?もっと海の財宝とか、海に眠る伝説の武器とか言われると思った……」
人魚は驚いた顔で俺を見ていた。俺は人魚に水族館のことを説明した。
「なるほどね。その水槽ってのに海の生き物を入れて、説明書きを貼るのね……そういうことならわかったわ!私もその水族館作りに協力してあげる!」
「いや、流石にそこまでは迷惑じゃないのか?」
「いいの。私、昔から人間が魔物と他の生き物の区別つかないのが気に入らなかったのよね……いい機会だからこの際、水族館のついでに魔物とそれ以外の生き物についてもしっかりと決めてもらいましょ!」
シルヴィは嬉々とした表情で俺にそう言った。それからしばらくして海から帰ってきたジョゼフさんたちにシルヴィに助けられたことと協力してもらうことになったことを伝えた。
「わかった。その時がきたら魔物の定義について上と話す場を用意できるよう掛け合ってみる。それにしても海ゴブリンか……」
「海ゴブリンがどうかしたんですか?」
「ん、あぁここらで海ゴブリンの目撃情報は聞いたことがなくってな。もしかしたら近くに巣があるのかもな。」
海ゴブリンは名前の通り海にたびたび出没するゴブリンで普通のゴブリンとは違い手のひらの間にヒレが付いており泳ぐのが得意な個体で。目撃情報が少なく、どういう生態をしているのか未だ謎が多い魔物なのだという。
「とりあえず、海ゴブリンの調査は冒険者ギルドに任せて俺たちは帰るぞ。」
シルヴィと別れ俺たちはギルドへと戻った。
━━━━━二日後━━━━━
あれから海ゴブリンの調査を冒険者ギルドが行ったところ海蝕洞(波によってできた洞窟)に出入りしているところが目撃された。巣の発見により冒険者ギルドから依頼を受け、冒険者ギルドと海洋調査ギルドが協力し海ゴブリンの討伐に望むことになった。
「いつも息子がお世話になっています。コナーの父のアラン・エイベルです。」
冒険者ギルドからは父とその仲間、それから恐らく俺と同じでギルドに入ったばかりの新人と思われるパーティーが送られてきた。
冒険者ギルドに所属するパーティーにはSからDまでのランクがあり、父の所属するパーティーはAランク、新人がいても大丈夫と判断されたのだろう。
「ジョゼフ・ギャバンです。お宅の息子さんのおかげでかなり調査が進んで助けられてるよ。それにしてもお父さん……お仲間さんもだが、海の上で戦うなら鎧は脱いだ方がいい。」
「コナーもだが逆になぜ鎧を着てないんですか?」
「海で鎧を着ると、なんでかはよく知らねぇが、すぐに鎧が錆びて使い物にならなくなっちまうんだ。」
「ということは普段からおんな軽装で戦ってるんですか!?」
「まぁ戦闘になった時はそうだな。」
アランはジョゼフにドン引きしながらも仲間と鎧を脱いだ。
「野郎ども!海ゴブリンのいる洞窟に俺たちの船は入れねぇんだ!さっさとボートを作れ!」
ジョゼフさんの一声で大地の魔力を持つ人が一斉にボートを作り始めた。ボートは瞬く間に完成して戦闘が得意なメンバーを厳選し海ゴブリンの討伐に向かった。
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