15 / 42
ドラン王国編
人の街
しおりを挟む「久しい光景ですね。」
俺たちを乗せた馬車は、王様の城がある首都ピエロの大きな住宅の前で止まった。
「よく来たわね!さっ早く上がって上がって。」
住宅の扉をノックすると、豪華な衣装に身を包んだナディアさんが、扉を開け出迎えてくれた。聞くところによるとナディアさんは、強い権力を持つ家の息子らしく、今回は女王様とシルヴィのドレスへの着替えと入浴のために使わせてくれることになった。
「あなたたちがマーメイドの二人ね。ミシェルお二人を浴室へご案内してあげて。お湯は使わないよう気をつけなさい。」
「かしこまりました。」
ナディアさんがメイドさんに命令をすると、メイドさんは車椅子を押して部屋の奥へと向かっていった。
「さっ!あなたたちも早く着替えちゃいなさい!」
「えっ?」
「えっ?じゃないわよ!そんな格好で城の中を歩くつもり?ダメよそんなの!」
俺とクロはナディアさんにされるがまま俺はタキシード、クロはドレスへと着替えさせられた。
「コナーかっこいい!馬子にも衣装ってやつだね!」
「一言余計だ。クロも……その……似合ってると思う。」
「ありがと!」
俺とクロが慣れない会話をしていると女王様とシルヴィが豪華なドレスに身を包み奥の部屋から現れた。
「……綺麗。」
俺もクロも見とれてしまい大した言葉が出てこなかった、それほどまでに二人の姿は美しかった。
「お着替えも終わったことだし、私の役目はここまでね。ちゃんと女王様たちをエスコートするのよ。ジョゼフさんもね!」
「わかってるわかってる。あー酒飲みて~。」
ナディアさんがジョゼフさんの名を呼ぶと奥の部屋からタキシード姿のジョゼフさんが現れた。普段なら顔を赤くして虚ろな目をしているジョゼフさんだが流石に酒を抜いているらしい。
「ナディアさん。シルヴィ共々大変お世話になりました。このお礼は必ず。」
「お礼なんていりませんよ。もしどうしてもお礼がしたいというのなら、今日の会談を絶対成功に終わらせてください。私にとってそれが何よりのお礼です。」
「わかりました、今回の会談で人種と魚人の親睦を深めると約束します。」
ナディアさんと女王様が話を終えると、再び俺たちは馬車に乗り城の前へと向かった。
「お前たちここに何用だ!ここはドラン王の城である!」
「教皇様が王子と話す許可をとってくれてると思うんだが。」
「我々にそのような話は回ってきていない!」
「そちらの伝達ミスという可能性は?」
「断じてない!貴様ドラン王直属の我らをバカにしているのか!」
険悪なムードに場がピリついている。
「チッタヌキのやろう、わざとだな。おい、お前ら後ろに下がるぞ。」
「なんだ、ようやく帰る気になったのか。」
全員で門から離れ距離をとるとジョゼフさんが門へと向き直った。
「お前ら耳塞いでおけ。スゥー……マルク!出てこい!お前に大事な話がある!」
ジョゼフさんに言われた通り俺たちが耳を塞ぐのを確認すると街中に響くほどの大きな声で恐らく王子の名前を呼びつけた。
「お前!!全員で取り抑えろ!」
ジョゼフさんの大声に反応して門の中からぞろぞろと兵士が現れた。
「お前らやめろ、私の友人だ。」
「マルク王子!」
俺たちのことを兵士が取り抑えようとしたその時、突然目の前に白い軍服を着た男が現れた。男が現れるとその場にいる兵士全員が膝をつき頭を下げた。
「ジョゼフ、流石にやりすぎだ。それほど大事な要件なんだろうな。」
「あぁ大事な話だ。」
「……わかった応接間へ案内しよう。」
俺たちを引き連れマルク王子は城の中を歩いた。
「マルク王子!これはなんの騒ぎだ!」
「あなたには関係のない話だ、ラビエ教皇。」
「関係ないだと……!お前は……ジョゼフ!?マルク王子、どうしてもその男どもをこの先に通すというのなら、私もその話し合いに参加させていただきます、よろしいですね。」
「構わん、好きにしろ。」
「どうぞお腰掛け下さい。」
応接間に案内され各々が王子の言葉を待ち、椅子に腰掛けた。
「それで、ジョゼフ話とはなんだ?俺も暇じゃない早く済ませろ。」
「話があるのは俺じゃなくて、こちらのお方だ。」
「本日はお時間をいただきありがとうございます。私の名前はレティシア・サンテール。サンテール王国で女王をさせていただいています。」
「サンテール王国?確か大昔に海に消えた国の名前ではなかったか?」
「そうです、私たちの国は海に飲まれました。ですが私の父ロジェ王の魔法で我々は海中でマーマンやマーメイドの姿で生活をするようになりました。」
「マーメイド?失礼ですが人の足をしているように思うのですが?」
「今からその証拠をお見せします。なにか下を隠す大きめの布をいただけませんか?」
王子はすぐにメイドに命令してカーテンのような大きな布を持ってこさせた。
「コナー?車椅子を皆さんに見えるよう少し下げていただけるかしら。」
「お母様!私がやります!何もお母様がやらなくても!」
「ダメよシルヴィ、言ったでしょ他の子達に二度とあんな辛い思いさせたくないの。それにあなたは痛い思いしてまで一緒に来てくれた。それだけで感謝してるわ。」
涙を流すシルヴィが女王様から離れると、俺は言われた通り車椅子を後ろに引いた。
「では今から私がマーメイドである証拠をお見せします。シェイプシフト!」
女王様が魔法を唱えると体がメキメキと音を立て変化していく。二本の足が一つに纏まり、魔力によって肉と鱗が生成されていった。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
女王様の言葉にならない声が部屋内に響いた。誰もが目を覆いたくなるようなその光景は数分間続いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる