異世界冒険録~七柱の神と十の種族~

ネコノトリ

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ドラン王国編

魚の飼育と人魚の女王

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 俺は、受け取った五匹のシキシラセを水槽に入れクロと一緒にギルドへと戻った。
「おかえりなさい!あら?もしかしてそれが水槽?やっと完成したのね!見せて見せて!」

 ぞろぞろと俺とクロをギルドの仲間が取り囲んだ。
「テーブルに置くんで少し待ってください!」

 俺は水槽の水がこぼれないように慎重にテーブルの上に置いた。
「小さくて可愛いわね。なんて名前の子なの?」

「シキシラセって呼ばれてるみたいですよ。名前の由来は季節によって色を変えるからだそうです。」

「……ねぇコナー?この水槽っていうもの、私も欲しいのだけれどどこに行けば手に入れられるの?」

「俺も!俺も欲しい!」

 俺はギルドの仲間に水槽を作ってもらったガラス職人の店を教え、席に座りクロと一緒にシキシラセに虫を与えていた。

「そういえば、ナディアさん。今日はジョゼフさんいないんですね。いつもならあそこで酒を飲んで笑ってるのに。」

「今日は王子様とお話をしに行ってるみたいよ。面倒にならないといいんだけど……」

「あの……気になってたんですがジョゼフさんって何者なんですか?普通王子様と知り合いだったりしませんよね?」

「ジョゼフさんと王子様は国王様の大ファン仲間ってとこかしら?前に鱗と海の怪物絵を見せてたでしょ?あの海の怪物を見た日、王子様も一緒に船に乗ってたらしいわよ。」

「国王様ってそんなにすごい人なんですか?俺あんまり知らなくて……」

「凄いなんてもんじゃないわよ!山を超え海を越える国王様の冒険譚はみんなの憧れよ!その冒険と長寿からこの国では国王様を信仰する人達がいるくらいなんだから!」

 ナディアさんから国王様の話を聞いているとギルドの扉が勢いよく開けられジョゼフさんが帰ってきた。
「おかえりなさいジョゼフさん!なにか……あったんですか?」

 ジョゼフさんはひと目でわかるほど機嫌の悪い顔をしていた。
「王子と話をしに行ったんだが、結論から言うとタヌキに邪魔されて話すことができなかった。」

「タヌキって誰のことですか?」

「教皇様のことよ。満足に話すことのできなくなった国王様の代わりに国を好きにしている実質国のトップね。」

「それであのタヌキなんて言ったと思う!」

「マーメイドの女王が国王様に話がある?バカを言うな何故穢れた海の生き物との会談の場を用意せねばならぬのだ。フッそうだな、やはり考えてやってもいいぞ。まぁあの体で陸に上がることができたらの話だがな!」

「だとよ。なぁコナー、そこら辺はちゃんと考えてあるんだよな?」

「すみません考えてませんでした……けどあの女王様なら多分何かしら考えているとは思うんですが。」

「ならいいんだけどな……王様は無理でも少なくとも王子と話せるようにはしてやる、それを活かせるかはお前次第だからな。」

「ありがとうございます!絶対に会談を成功させてみせます!」

 翌日俺はギルドの仲間に、シキシラセの世話の仕方を教え、面倒を見て貰えるよう頼み込んだ。できた時間で女王様への伝言を伝えあれこれをしてるうちに会談の日を迎えた。
「お迎えにあがりました、女王陛下。」

 会談の日、女王様と決めた約束の時間に海へ行くと人間の姿をしている女王様とシルヴィが砂場に座っていた。
「迎えに来ていただきありがとうございます。海の生活が長かったので歩くことができなくて、よろしければ背負っていただくことはできないでしょうか?」

「その前に、こちらで着替えを用意させていただきました。よろしければこちらにお着替えください。」

 俺は後ろを向き、クロに女王様とシルヴィの着替えを手伝うように頼んだ。元から露出の多い格好だったため着替えを用意していたが下半身が人間になったことで前よりも目のやり場に困る。
「できたよー!」

 クロの声で後ろを振り返ると、着替えが終わり座り込む女王様とシルヴィの姿があった。町娘の格好をしているが、町娘というにはあまりにも美しい姿をしていた。
 「素敵な洋服をありがとう。」

「いえ、安物ですがドラン王国に着くまで我慢していただけると助かります。ドラン王国に向かう馬車まで少し距離があります。車椅子を用意したのでお腰掛け下さい。」

 俺は大地の魔力に適正のあるギルドメンバーと共にこの日のために作っていた車椅子に二人を乗せた。
「これは……わざわざ私たちのために用意してくださったのですか?」

「久しぶりの地上でいきなり歩くのは厳しいと思い、仲間と共に用意させていただきました。これなら街の中も楽に移動ができます。」

 ただ椅子に大きな車輪を付けただけなので、現代の車椅子と違い、後ろで誰かが押す必要があるが、今日を乗り切るのには充分な仕上がりだ。
「そうなのですね。いつかお会いできたら、お礼を述べねばなりませんね。」

 俺は女王様をクロはシルヴィを押して馬車に乗り街へと馬車を走らせた。
 

 

 
 
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