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獣人編
獣人族の住む草原
しおりを挟むゴブリンとの戦闘から二日がたち、俺たちを乗せた馬車は再び獣人たちの住む草原へとたどり着いた。
「あの、ビオン・クロロスさんがどこにいるかご存知ですか?」
「族長?知らねぇよ、昼寝でもしてんじゃねぇの?」
草原で六種族会談の時に来ていたビオン様の居場所を見つけた獣人達に聞き込みをするが誰からもマトモな回答を得ることはできなかった。
それもそのはず、獣人族は家を持たず各々が草原で自由に暮らす種族だ、特定の誰かのいる場所などわかるはずもなく捜索は夜まで続いた。
「んっお前は確か……」
「コナー・エイベルです……お久しぶりです、ビオンさん」
夜になると草原をいくつもの炎が照らし、しらみ潰しに探すと、何とか獣人族の族長ビオン・クロロスさんを見つけることができ、俺はビオン様にここに来た経緯を伝えた。
「なるほどな……無事かどうかは見りゃわかると思うが、物資の補給ってのは厳しいな……」
「少し食料を分けて貰うのも難しいでしょうか?」
「マルク王の息子ジルだったか……俺たちはほとんどその日暮らしみたいなもんだしな~。冬の備えまで渡したら世界が救われても俺たちが死んじまうしな……なぁ、これは提案なんだが、何日かここに泊まっていく気はないか?狩りの仕方は教えるし、自分で食料を調達するぶんには、俺たちにも負担はかかんねぇ。」
ジル王子は少し考え頷いた。
「二日ほどお世話になりたいと思います。短い間ですがお世話になります。」
「決まりだな!そうと決まれば今日は宴だな!」
ビオンさんはそう言うと雄叫びを上げた。ビオンさんが雄叫びをあげると草原を点々と照らしていた炎がこちらに近づき獣人たちに囲まれた。
「お前ら!こいつらが二日間のあいだ、この草原に住む家族に加わることになった!盛大に歓迎してやってくれ!」
ウオォォォォォォ
一同に集まった、獣人の雄叫びとともに、俺たちを歓迎する宴が始まった。
「なぁ族長!二日間とはいえ家族に加わるんだ!『あれ』やるんだろ?」
「あぁ、そろそろやるか。」
宴が始まってから一時間が経った頃、ビオンさんは俺たち全員を連れ宴の席から外れた。
「よしお前ら!今からお前たちには力を示してもらう!全員で俺に対し全力で攻撃を仕掛けてこい。怪我をしない程度にしか反撃はしないから安心してかかってこい!」
いつの間にか獣人たちの視線は、俺たち全員に集まり、断ることは難しそうだ。
「さぁこい!」
俺たちの足元に木剣が投げ入れられ、ビオンさんが手招きをしている。やるしかない。俺がそう心に決めたと同時にヤンが木剣を拾い、単独ビオンさんへと向かっていった。
「全員でかかってこいって言っただろっと!」
ヤンは木剣を振りかぶり、ビオンさんへと攻撃を加えようとしたが、切りかかる前に間合いを一気に詰められ平手で押し倒されてしまった。
「まっ一番最初に向かってきたってのは評価してやるよ。さぁお前たちはどうする?俺たちとは違うんだ魔法だって使っていいんだぜ。」
ヤンが倒されている間に木剣を拾っていた俺は、クロとシルヴィと顔を見合せ単身ビオンさんへと向かった。
「また一人か?それとも後ろの二人は魔法使いか?まっ俺には関係ないけどな!」
ビオンさんは左足を前に、左手のひらが脇の下、右手のひらを相手へ向け口を隠すように半身で構えた。格闘術は父さんからそこまで習うことはなかったが、素人目にもビオンさんの構えに隙はなく、どこに仕掛けるのが正解なのか分からなかった。
「今だ!」
俺の合図で後ろの二人が光の魔法を使い、ビオンさんの視界を奪うと同時に、目が眩むことでできたわずかな隙に攻撃を仕掛けた。
回避不能な攻撃、勝った!そう思うと同時に俺の体は宙に浮き、クロたちのいる場所へと吹き飛ばされていた。
「発想はいいが、俺は狼の獣人だぞ。目が見えなくとも鼻で位置ぐらいわかる、後ろで攻撃のタイミングを伺っているのも当然気づいているぞ。」
いつの間にか起き上がり、ヤンは奇襲をかけようとしたが攻撃を仕掛ける前にバレてしまいヤンは構えていた武器をおろした。
「まぁこんなもんか!そこの王子様は参加しないのか?」
「前の三人と一緒にでは自分の実力が測れないと思い見学させてもらいました。今度は私とお手合わせ願います。」
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