24 / 42
魔人襲来編
魔物の夜襲
しおりを挟む「おいしい~!!」
俺たちはジル王子が作った食事を、御者を探しに向かった、ジル王子のいない四人で、炎を囲み食していた。
「それにしてもジル王子遅いね……森で何かあったのかな?」
ジル王子が探しに向かってから体感十数分がすぎ、綺麗に器によそわれた食事も、あと数口でなくなってしまう。
「料理は口にあったかな?」
器に盛られた料理がなくなると、見計らったかのようにジル王子が戻ってきた。
「はい、ご馳走様でした。王子は戦闘だけではなく料理も上手いのですね。」
シルヴィがジル王子のことを褒めると、ヤンは分かりやすく肩を落としていた。
「?ジル王子、御者の方はどうされたのですか?一緒に戻ってはいないようですが……」
「御者はここに置いていく。御者の分の食事はお前たちの誰かが食べてくれると嬉しい。」
俺が御者のことを尋ねると、ジル王子は御者を置いていくことを顔色一つ変えずに全員に伝えた。
「御者の方に何かあったんですか!?」
「……結論から言うと御者は無事だ。怪我はしていたが、私の光魔法で治療は施した。だが今日のこの森の魔物の多さは以上だ。御者の命を救うためにリスクを犯す必要もないだろう。」
理屈はわかる……。だけど。
「ジル王子……あなたには失望しました。ゴブリンの戦闘の時のセリフは私たちを思ってのことだと気にしていませんでしたが。どうやら勘違いのようですね。コナー、クロ、ヤンさん。私たちだけで助けに行きましょう。」
今度は俺たちがジル王子を一人残し夜の森の中へと足を踏み入れた。
『ライト!』
森の中はクロの魔法がなければ足元が見えないほど暗く、見渡しが悪い。ジル王子ほどの人が危険というのも納得がいく。早く御者を見つけて森を出なくては。
「クロエちゃん、『ライト』の魔法は自分たちの近くに待機させるんじゃなくて、自分たちの進行方向に飛ばした方がいいよ。僕たちの居場所がバレたら困るからね。」
ヤンのアドバイスを受け入れクロは光の玉を進行方向へと飛ばした。新人とはいえ流石は冒険者だ、夜での戦闘にも慣れているのだろう、森に入ってからはヤンが俺たちを先導してくれている。
「見てこれ、あのおじさんの足跡じゃない?」
御者のものらしき足跡を見つけ足跡を追って森の少し深い場所へと潜った。
足跡を追いかけるとそこには、一際大きな木と木の根元に魔法で作られたと思われる大きな土のシェルターがあった。
「気をつけてね……」
恐る恐る土のシェルターを覗くと、中には丸くなり少しでも体の熱を保とうとしている御者の姿があった。
「よかった!無事だったんですね!早く森を出ましょう!」
御者に肩を貸し来た道を帰ろうとすると、周囲から獣の遠吠えとともに、狼や猪などの野生動物の上に跨り、こちらの様子を伺うゴブリンが現れた。
「ジル王子の言っていた通り私は餌に使われていたのですね……」
二十匹ほどのゴブリンの群れだ、戦って勝てるとは思えないし、逃げてもすぐに追いつかれてしまうだろう。絶体絶命の状況に為す術なく立ち尽くしていると、突然前方にいたゴブリンたちが倒れ道ができた。
「走れ!」
どこからか聞こえたジル王子の声に従い、御者を連れ来た道を引き返す。魔法で足元を照らす暇などなく何度も転びそうになりながら来た道を全速力で駆け抜ける。道を戻る途中ジル王子の姿が木の上に見えた気がした。
ようやく森をぬけた頃には、極度の緊張と森を走ったことにより息は荒くなり虫の息になっていた。
「何してる!早く野営地まで走れ!」
森の中から姿を現したジル王子に背中を押されながら、火が消えかけ心もとない明かりを照らし続けている野営地へと最後の力を振り絞って走った。
ジル王子に背中を押され、野営地まであと少しというところまで来ると、森の中から動物に乗ったゴブリンたちが飛び出し追いかけてきた。
「シルヴィさんとクロエさんは後方で私と一緒に、魔物が罠に辿り着く前に魔法で迎撃!コナーくんとヤンくんは前衛で罠をぬけてきた魔物の撃退!」
ジル王子の指示に従い前衛に俺とヤン。後衛にジル王子とクロとシルヴィという形で魔物たちを迎え撃った。魔物との攻防は数十分間続き、野営地の周囲は魔物と動物の死体で囲まれていた。
魔物との攻防が終わり、一息つくと俺たちはジル王子にお礼と謝罪を伝え、交代で見張りにつき眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる