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魔人襲来編
旅立ちの日
しおりを挟む家族と過ごす日々は驚くほどあっという間に終わり。俺と仲間たちは家族に見送られ、マルク王の用意した馬車に乗り、無事の確認と旅に必要な物資の俸給のため、ドワーフの集落へ向かう途中にある獣人の住む草原へと向かった。
「なぁ、コナーくん。コナーくんとシルヴィさんって恋仲ではないんだよね?」
馬車の中で俺の隣に座り、小さな声で俺に話しかけてきたのは海ゴブリンの時に溺れていた新人冒険者のヤン・リオットだ。旅のお供に志願した理由は本人曰く命を助けられたことへの恩返しらしいが、馬車に乗ってからというものやけにソワソワしている。
「あぁ、そういう関係じゃないよ。」
女性としては魅力的かもしれないが、俺なんかではお姫様とは到底釣り合わない。俺がそう伝えるとヤンは嬉しそうに笑った。
「まぁそうだよね、君には魅力的な幼馴染がいるもの。シルヴィさんにまで手をつけたらバチが当たっちゃうよ。」
クロに関しては幼い頃からの付き合いというのもあり、俺がどう思っていようと、クロは兄か弟程度にしか思ってはくれないだろう。
「前方にゴブリン七匹が現れました!」
俺とヤンが他愛のない会話をしていると、突然馬車を運転してくれていた御者がゴブリンの出現を伝えた。
「クロとシルヴィは後方支援を頼む!」
俺とヤンはすぐに馬車を降り。馬車を攻撃されないよう、馬車から離れゴブリンの目を引き付けた。各々が自分の戦い方を活かせる配置につきゴブリンと向き合った。
俺たちがゴブリンとの戦闘に身構えていると、馬車が大きく揺れ中からジル王子が、ものすごい速度でゴブリンの群れに切り込んだ。
ジル王子の太刀筋は今まで見た誰よりも綺麗で、瞬く間にゴブリンの群れを剣一本で壊滅させた。戦闘が終わるとジル王子がこちらに向かい歩いてきた。
「コナーくん、君は雷の魔力の器なんだ、戦おうとせず大人しく座っていてくれ。残りの三人もだ、父上の前で力になるとは言ったが、力を借りるとは言っていない。足手まといになるだけなんだから、黙って座っていてくれると助かる。」
ジル王子は俺たちに助言を伝えると満足したのか馬車へと戻っていった。ジル王子の実力の前に言い返すことのできぬまま、馬車は再び走り出した。
「もう夜も遅いですし、ここらで休息をとりましょう。」
開けた場所で馬車を止めると、御者は我慢をしていたのか慌てた様子で森の中へ用を足しに向かい、俺とクロ、ヤンとシルヴィ、そしてジル王子の三組に別れ野営の準備を始めた。
「なぁ、クロ。シルヴィと二人で今からでも帰った方がいいんじゃないか?危険な旅になると思うし……何よりお前の母さんは……」
「いいの!」
俺の言葉をかき消すようにクロは話をさえぎった。
「そんなことよりも、辺りが完全に暗くなる前に早く野営の準備終わらせないと!夜に魔物に襲われても知らないよ!」
「あぁ……そうだな、ごめん。」
俺とクロのペアは、野営を囲むようにクロが土魔法で落とし穴を作り。俺が気づかれにくくするため土や草を被せカモフラージュをし。
ヤンとシルヴィのペアはヤンが土魔法で簡易的な寝場所を作り、シルヴィはクロに底は浅く広い穴をあけてもらい、膨大な水の魔力を使いあっという間に小さな湖を作ってしまった。
各々がやるべきことをやっていると、美味しそうな、いい香りが漂ってきた。野営の準備を終わらせ馬車のある場所へと向かうとジル王子が料理をしており。既に全員分の食事が器に盛られていた。
「おかえり。温かいうちに、君たちは食事をすませていてくれ。御者の帰りが遅い、私は御者を探しに森の様子を見てきます。」
ジル王子はそう言うと暗い森の中に一人消えていった。
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