異世界冒険録~七柱の神と十の種族~

ネコノトリ

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獣人編

族長の兄レオ

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「俺たちに戦い方を教えてください!」

 翌日、昨夜のジル王子とビオンさんの戦いを見た俺とヤンは、焦りを感じ早朝にビオンさんに頼み込んだ。
「戦い方って言ったって、俺は獣人でお前らは人族だろ。俺たちの戦い方を真似たって強くはなれねぇよ。」

「だったら!ジル王子との戦闘の最後に使ったあの技だけでも教えてください!」

「技っていうか技術なんだけどな……ダメだ危険すぎる。」

「そんなに危険なんですか?」

「あぁ、まぁな。どちらにせよ俺は技とかを教えられるほど賢くなんだ。もし、どうしても技について聞きたいなら、あそこに小さな小屋があるだろ?あそこに俺の兄貴が住んでるから兄貴に聞くといい。昼には獣の狩りの仕方を教えるからな。」

 俺とヤンはビオンさんが指を指した、草原にポツンと佇んでいる小さな小屋へと向かった。
 
「ビオンさんのお兄さんいらっしゃいますか~」

 数回のノックの後に声をかけた。
「どちら様ですか?」

 扉が開き、ビオンさんよりも大柄な獣人が顔を覗かせた。俺とヤンは扉の前で要件を説明して小屋の中へと入れてもらった。小屋の中は原始的な生活をしている獣人とは違い、本がこれでもかと並べられていた。
「少し部屋が汚いけど我慢してね。僕の名前はレオ・クロロス。それで、君たちが昨日見た技っていうのは大きく呼吸をしていたんだね?」

「はい、していました。危険な技と教えられたのですが、どのような技なのですか?」

「ふむ、少し外に出ようか。」

 全員が外に出るとレオさんが口を開いた。
「二人は魔力が体のどこから流れてくるかわかるかい?」

「へそを中心に魔力を流すので、へそだと思います。」

「うん、その認識で間違ってないよ。じゃあ魔力はお腹の中でどんな形をしていると思う?」

「それは……」

 俺とヤンが答えに詰まると、レオさんは地面に足で円を描き、俺たちに丁寧に教えてくれた。
「この円が僕の魔力の器。僕たち獣人は大地と縁のある種族だから、器の中には大地の魔力が沢山あるね。そして、僕の中には大地の他に水の魔力が少し流れているから。」

 レオさんは円の中の土に少量の水を混ぜた。
「これが僕の魔力の形だよ。魔力はこんな感じで腹の中でぐちゃぐちゃに混ざってるんだ。君たちの使う魔法は、この魔力の塊から使いたい魔力をだけをすくい取って形を作るものなんだ。」

「君たちは魔力で体を強化できるかな?」

 俺とヤンは体を魔力で覆って見せた。
「お見事!それが君たちの使う『強化の魔法』だ。体を自身の魔力が覆っているのがひと目でわかるね。」

「だけど、僕たちは魔力の使い方が違うんだ。君たちは外で魔力の操作を行うのに対して僕たち獣人は体の中で魔力を使う、その技術を『魔力循環』と僕は呼んでいる。そうだな……ちょっと三人で弟の場所まで競走しようか。」

「じゃあいくよ、よーいドン!」

 三人が横並びに位置につき走り出した。レオさんの足は驚くほど早く、俺とヤンが五十メートル走ったかという位置なのに対して、レオさんはスタートから二百メートル程の位置にいたビオンさんの場所まで辿り着いていた。
「お疲れ様。結果を見てわかると思うけど、僕たち獣人の使う『魔力循環』は身体能力が格段に上がる性質を持っている。ただ『強化魔法』とは違い耐久力がそこまで上がらないという欠点もある。」

「どうだお前ら、兄貴に聞いて正解だろ?兄貴は魔力について昔から調べているから、同じ獣人からは変わり者扱いされてはいたが、俺の自慢の兄貴だ。」

「ビオン!褒めて誤魔化そうとしてないか?あれほどあの技は使うなと言ったよな!?」

「そんなに危険な技だったんですか?」

 俺が会話に割って入ると、ビオンさんは俺に親指を立てよくやったと言わんばかりの笑顔を見せ、それを見たレオさんはやれやれと頭を抱えていた。
「あの技……『心世一体』は自身の体を自然と一つにすることにより、世界に流れる魔力を己のものにする神のような技術。」

「すごい技じゃないですか!」

「……この技を長時間使用すると、自然と一つになりすぎて自我を失ってしまうんだ。短時間使うにしてもビオンのように強力な自我の持ち主以外使うことは難しいとされている。」

「そんなに危険な技だったんですね……」

 俺とヤンが使うことの出来ない技と知り肩を落としていると、レオさんが励ますように二人の肩に手を置いた。
「大丈夫、『心世一体』が使えなくとも『魔力循環』と『強化魔法』を同時に使えるようになれば、君たちは今より格段に強くなるよ。ビオン、狩りを教えながら二人に『魔力循環』を教えてあげなさい。お前でもそれくらいは教えてあげられるだろ?」

 

 
 

 

 
 
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