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獣人編
謎の少年パスカル
しおりを挟む「お前たちには、まず魔力循環をマスターしてもらう。魔力循環を上手く使えるようになればお前たちの旅の助けにきっとなるはずだ。」
レオさんがいなくなり、ビオンさんとの特訓の日々が始まった。
「だ~か~ら~。何回言ったらわかるんだよ!魔力を放出するんじゃなくて体内を巡らせるんだって!」
俺とヤンは魔力がどうしても漏れてしまい、魔法との違いに苦戦していた。
「あの……なにかもう少し具体的なアドバイス貰えませんか?体内を巡らせるのが思っていたよりも難しくて……。」
「他のアドバイス……そうだ!お前ら、水魔法は使えるか?使えるやつは土と混ぜて泥を作ってくれ。」
俺はビオンさんに言われた通り、水の適正がないヤンと自分の二人分の泥を用意した。
「泥の準備はできたみたいだな。じゃあ次は着ているものを全て脱ぐんだ。」
「!!」
「近くには俺たちしかいねぇんだから、大丈夫だろ?それとも魔力循環は諦めるか?」
「…………」
俺とヤンは恥ずかしい気持ちを押しとどめ、生まれたままの姿で草原の上に立っている。
「よし!じゃあ次は全身に泥を塗りたくれ。」
「あの……ビオンさん疑うわけじゃないんですが。本当にこんなので魔力循環の特訓になるんですか……?」
「いいから早く泥まみれになれって!」
ビオンさんは俺ヤンを用意した泥へと押し倒した。
「しっかり全身に塗れよ。」
俺たちは観念して全身くまなく泥を塗りたくった。泥は春ということもありヒンヤリと体を冷やした。
「泥を塗った体で魔力循環を試してみろ。泥が放出されるはずの魔力を堰き止めてくれるから、魔力循環が行いやすいはずだ。」
ビオンさんの言った通り、先程まで外に漏れていた魔力が体の内に留まり魔力が体の中を流れ始める。
「これが魔力循環……」
「そうだ。体が軽く感じるだろ?その感覚を忘れずに四六時中魔力循環を怠るな。」
その後、滞在する三日間、俺とヤンは魔力循環を使った狩りを教わり、シルヴィとクロは俺たちの知らない場所で、ジル王子に常に魔力を練りノータイムで魔法を放つ『魔力操作』の方法を教わっていた。
草原を去る前日。一人の獣人が俺たちの元を尋ねた。
「族長、人間の子供が草原に迷い込んだみたいなのですがどうしますか?」
「……お前、名前は?」
「……パステル」
「親はどうした?一人なのか?」
「パパとママは隣町まで行く途中で魔物に襲われて……」
「……悪かったな。嫌な事聞いちまって……。」
「うんうん、大丈夫。パパとママは僕に厳しくって、ずっと痛い思いしてたから、離れられて少し安心もしてるんだ。」
「族長、私がしっかり面倒みるので、パステルくんが人里に帰れるまでここに置いちゃダメですか?」
「獣人のお姉ちゃん……」
「あぁ、それは構わない。だが!ここで暮らすからには力を示してもらう!パステル、全力で殴りかかってこい!」
少し困惑するパステルくんの背中を獣人のお姉さんは優しく押してあげた。
「……じゃあ、いくよ!」
パステルくんの拳は屈んでいたビオンさんの胸に「ペチ」という音を立て直撃した。
「腰の入った、いいパンチじゃねぇか。よし!これでお前も俺たちの家族の一員だ!カロル、他の奴らに宴の準備をするよう伝えとけ!」
「……!認めてくれて、ありがとよ族長!」
パステルくんを連れてきた獣人のお姉さんは、ビオンさんに感謝を伝えパステルくんと共に去っていった。
「今日までお世話になりました。」
最終日。俺とヤン、そしてシルヴィとクロそれぞれの特訓は何とか形にはなり、お世話になった獣人達に別れの挨拶をしていた。
「俺が教えられることは、この三日目お前たちに全力で叩き込んだ。その力をどう扱うかはお前たち次第だ。」
ビオンさんに激励をもらい、俺たちは旅の成功を心に誓い馬車へと飛び乗った。
「族長、パスカルくんが見当たらないのですが心当たりありませんか?」
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