異世界冒険録~七柱の神と十の種族~

ネコノトリ

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獣人編

魔人襲撃

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 障害物の少ない草原で一人の少年を探すくらい、獣人なら訳のないはずだが、パスカルくんの姿は誰も見つけることができなかった。
「これだけ探して見つからないとなると……後は森か。」

 草原の近くの森、そこには野生動物と魔物が多く生息している。そんなところに子供が一人で向かうとは思えない。
「なっなんだあれは!」

 そんなことを全員で話し合っていると、迷い込んだと思われる森から、数え切れないほどの魔物がこちらへと直進してきていた、よく見ると先頭の魔物の背にはパスカルくんの姿があり、声の届く距離まで来るとピタリと止まった。
「獣人の皆、今日までお世話になったね。獣人の家族ごっこ楽しませてもらったよ。」

「パスカル……お前何者だ?」

「そうだね、改めて自己紹介をする必要がありそうだ。僕の名前はリアン、闇の神フェルメ様に力を与えられた魔人の一人。ここに来たのは獣人とコナー・エイベルの殺害が目的だよ。」

「何を言ってるのパステル?危ないから早くそこを離れてこっちに来て。」

「その名前で呼ぶの辞めてくれないかな?その名前で呼ばれると、昔僕にたくさん酷いことをしたパパとママの顔が頭に浮かんで不愉快だ。」

「そんな……」

 パステルくんの豹変に何人かの獣人はショックを隠せていない。
「安心してね、獣人のお姉さん。僕に逆らわなければ一番僕に良くしてくれたお姉さんは僕が連れて行ってあげるから。」

 リアンの横暴な言葉に獣人たちは怒りを顕にした。
「おい、ガキ!最近来たてめぇは知らねえかもだが、俺たちは一度一人の死傷者もださずに、これ以上の数を相手にしたことがあるんだ。この程度の数で獣人に勝てると思うなんて思ってるんじゃねぇだろうな。」

「だったら試してみれば?」

「やってやる!」

「待て!」

 リアンの言葉で半数の獣人が、ビオンさんの静止を聞かず、魔物の群れへと向かい突っ込んでいった。数では圧倒的に負けている獣人が前回勝てたのは圧倒的な実力の差があったからだった。だが今回は……。
「なんだ……こいつら前より格段に強い!?」

「本当に獣人はバカで助かるよ。前回と今回の違いも分からないのかい?僕がフェルメ様に貰った魔法の名前は『フレンズ』僕が触れて闇の魔力を流した相手へ命令を与え強化することができるんだ、前と同じ結果になるわけないだろ?」

「族長!みんなを連れて逃げて!」

 無謀な突撃をした獣人たちは複数のゴブリンにより袋叩きにされたもの、オークによって頭を潰されたもの、それぞれ殺され方こそ違うとはいえ全員が悲惨な最後を迎えた。
「馬鹿どもが……兄さん、俺が足止めをする。」

「……!!わかった、後は任せろ。」

 短い別れの挨拶を終え、レオは仲間の獣人とコナー・エイベルを連れ全速力でその場を離れた。
「逃がすわけないじゃん!行けお前たち!」

 すぐにリアンが魔物たちに後を追うように命令したが、魔物たちは野生の勘なのか、ビオンの迫力なのか、足は前へと進むどころか後ろへと後ずさりしていた。
「何やってるんだ!追え!追えって!」

「パステル……なんで魔物たちが言うことを聞かないかわかるか?」

「うるさい!僕はパステルじゃないリアンだ!早くアイツを殺して追いかけろ!」

「そいつらはな、近づいたら殺されるってわかってるんだ。だからお前の命令を聞かないんだ。」

「そんなはずない!僕の『フレンズ』で強化された友達が僕を裏切るはずない!」

「いい加減目を覚ませ!お前の言う友達ってのは命令しないと自分のために動いてくれないやつのことを言うのか?それじゃただの奴隷だ!」

「うるさい!黙れ!黙れ!黙れ!」

「今ならまだやり直せる。お前も家族なんだ、できれば殺したくはない。家族を殺したことは俺が一緒に頭を下げてやるから、戻ってこい。」

「僕は!お前たちを認める訳にはいかないんだ!赤の他人なのに家族とか言って皆で仲良く暮らしているお前たちを認めたら。親に捨てられた僕が惨めじゃないか!」

「……パステル。」

「言うことを聞かないんだったら!『フレンズ』僕の友達にもっと大量の魔力を!」

 リアンが魔物に闇の魔力を浴びせると、魔物たちが苦しみはじめ、全身が黒く染まってしまった。
「他の獣人はもういい!族長ビオンを殺せ!」

 リアンの一声で先程まで後ずさりしていた獣人たちが一斉にビオンへと向かい突っ込んできた。
「……しょうがないか。」

 ビオンは地面に落ちていた石を複数個拾いまだ距離のある魔物たちへと投げた。投げられた石は魔物たちの体をいとも容易く貫きどこまでも飛んで行った。
「化け物が!」

 ビオンの体は魔力循環と『一世一体』によって、極限まで身体能力が向上しており、そんなビオンに魔物たちは為す術なく殺されていき、気づけばリアン一人が取り残された。
「や、やめろ!こっちに来るな!」

 ビオンは逃げるリアンを追いかけるように一歩また一歩歩みを進めた。
「っあ!」

 リアンは石に足を取られ転んでしまい、ビオンに追いつかれてしまった。
「…………」

 ビオンはリアンを見下ろしヒアンは死を覚悟して目をつぶった。
「なっなんで……」

 次の瞬間ビオンはリアンを抱きしめ息をひきとっていた。
 
 
 



 

 
 

 

 
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