29 / 42
獣人編
魔人襲撃
しおりを挟む障害物の少ない草原で一人の少年を探すくらい、獣人なら訳のないはずだが、パスカルくんの姿は誰も見つけることができなかった。
「これだけ探して見つからないとなると……後は森か。」
草原の近くの森、そこには野生動物と魔物が多く生息している。そんなところに子供が一人で向かうとは思えない。
「なっなんだあれは!」
そんなことを全員で話し合っていると、迷い込んだと思われる森から、数え切れないほどの魔物がこちらへと直進してきていた、よく見ると先頭の魔物の背にはパスカルくんの姿があり、声の届く距離まで来るとピタリと止まった。
「獣人の皆、今日までお世話になったね。獣人の家族ごっこ楽しませてもらったよ。」
「パスカル……お前何者だ?」
「そうだね、改めて自己紹介をする必要がありそうだ。僕の名前はリアン、闇の神フェルメ様に力を与えられた魔人の一人。ここに来たのは獣人とコナー・エイベルの殺害が目的だよ。」
「何を言ってるのパステル?危ないから早くそこを離れてこっちに来て。」
「その名前で呼ぶの辞めてくれないかな?その名前で呼ばれると、昔僕にたくさん酷いことをしたパパとママの顔が頭に浮かんで不愉快だ。」
「そんな……」
パステルくんの豹変に何人かの獣人はショックを隠せていない。
「安心してね、獣人のお姉さん。僕に逆らわなければ一番僕に良くしてくれたお姉さんは僕が連れて行ってあげるから。」
リアンの横暴な言葉に獣人たちは怒りを顕にした。
「おい、ガキ!最近来たてめぇは知らねえかもだが、俺たちは一度一人の死傷者もださずに、これ以上の数を相手にしたことがあるんだ。この程度の数で獣人に勝てると思うなんて思ってるんじゃねぇだろうな。」
「だったら試してみれば?」
「やってやる!」
「待て!」
リアンの言葉で半数の獣人が、ビオンさんの静止を聞かず、魔物の群れへと向かい突っ込んでいった。数では圧倒的に負けている獣人が前回勝てたのは圧倒的な実力の差があったからだった。だが今回は……。
「なんだ……こいつら前より格段に強い!?」
「本当に獣人はバカで助かるよ。前回と今回の違いも分からないのかい?僕がフェルメ様に貰った魔法の名前は『フレンズ』僕が触れて闇の魔力を流した相手へ命令を与え強化することができるんだ、前と同じ結果になるわけないだろ?」
「族長!みんなを連れて逃げて!」
無謀な突撃をした獣人たちは複数のゴブリンにより袋叩きにされたもの、オークによって頭を潰されたもの、それぞれ殺され方こそ違うとはいえ全員が悲惨な最後を迎えた。
「馬鹿どもが……兄さん、俺が足止めをする。」
「……!!わかった、後は任せろ。」
短い別れの挨拶を終え、レオは仲間の獣人とコナー・エイベルを連れ全速力でその場を離れた。
「逃がすわけないじゃん!行けお前たち!」
すぐにリアンが魔物たちに後を追うように命令したが、魔物たちは野生の勘なのか、ビオンの迫力なのか、足は前へと進むどころか後ろへと後ずさりしていた。
「何やってるんだ!追え!追えって!」
「パステル……なんで魔物たちが言うことを聞かないかわかるか?」
「うるさい!僕はパステルじゃないリアンだ!早くアイツを殺して追いかけろ!」
「そいつらはな、近づいたら殺されるってわかってるんだ。だからお前の命令を聞かないんだ。」
「そんなはずない!僕の『フレンズ』で強化された友達が僕を裏切るはずない!」
「いい加減目を覚ませ!お前の言う友達ってのは命令しないと自分のために動いてくれないやつのことを言うのか?それじゃただの奴隷だ!」
「うるさい!黙れ!黙れ!黙れ!」
「今ならまだやり直せる。お前も家族なんだ、できれば殺したくはない。家族を殺したことは俺が一緒に頭を下げてやるから、戻ってこい。」
「僕は!お前たちを認める訳にはいかないんだ!赤の他人なのに家族とか言って皆で仲良く暮らしているお前たちを認めたら。親に捨てられた僕が惨めじゃないか!」
「……パステル。」
「言うことを聞かないんだったら!『フレンズ』僕の友達にもっと大量の魔力を!」
リアンが魔物に闇の魔力を浴びせると、魔物たちが苦しみはじめ、全身が黒く染まってしまった。
「他の獣人はもういい!族長ビオンを殺せ!」
リアンの一声で先程まで後ずさりしていた獣人たちが一斉にビオンへと向かい突っ込んできた。
「……しょうがないか。」
ビオンは地面に落ちていた石を複数個拾いまだ距離のある魔物たちへと投げた。投げられた石は魔物たちの体をいとも容易く貫きどこまでも飛んで行った。
「化け物が!」
ビオンの体は魔力循環と『一世一体』によって、極限まで身体能力が向上しており、そんなビオンに魔物たちは為す術なく殺されていき、気づけばリアン一人が取り残された。
「や、やめろ!こっちに来るな!」
ビオンは逃げるリアンを追いかけるように一歩また一歩歩みを進めた。
「っあ!」
リアンは石に足を取られ転んでしまい、ビオンに追いつかれてしまった。
「…………」
ビオンはリアンを見下ろしヒアンは死を覚悟して目をつぶった。
「なっなんで……」
次の瞬間ビオンはリアンを抱きしめ息をひきとっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる