異世界冒険録~七柱の神と十の種族~

ネコノトリ

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獣人編

魔法使いの集落

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 コナー達を乗せた馬車は獣人の住む草原を離れドワーフの住む集落へと向かっていた。
「もう夜も遅い。父上から貰った地図によると、近くに集落がある。そこで休ませてもらえないか聞いてみよう。」

 ジル王子の提案で、馬車は少し道をはずれ、集落のあるという方向へと向かった。

 集落の外に馬車を止め、全員で集落の中へと入った。一人の女性に声をかけたところ集落の代表の場所へと案内をしてくれた。
「夜遅くに申し訳ありません。私の名前はジル・ドラン。ドラン王国の第二王子でさ。よろしければ一晩でいいので寝場所を貸していただけないでしょうか。必要であればお金も払います。」

 顔にはやけどの後があり。髪は長く、歳は四十くらいだろうか。女はジル王子の頼みに答えた。
「……いいでしょう。ただし、王子様と可愛らしいお嬢さんの三人だけです。」

「全員はダメでしょうか……馬小屋でもよいのですが。」

「この集落は魔力の高いもののみが集まった、いわば魔法使いの集落なのだ。一晩とはいえ魔力の低いものを止める訳にはいかない。」

「そう……ですか。すまないがコナーくん、ヤンくん。二人は御者と共に集落の外で休んでいてくれ。その代わり次の日の馬車の運転は私たちが務めさせてもらう。」

 コナーを含めた三人は嫌な顔一つせず集落の外へと向かった。

 コナーたちの去った後、集落の代表が集落の成り立ちについて教えてくれた。この集落は魔力の高いもの同士で子供を作るために、人が集まりできたものらしい。どうやらこの集落の人間は魔力の有無が生まれる子供に影響があると考えているようだ。

 話が終わると代表自ら、客人用の家へと案内をしてくれた。家の中はよく掃除されているのかホコリがほとんどない綺麗な部屋だ。

 ジル王子と三人は持ち込んだ食料を腹に入れ、眠りについた。

 ガサゴソ、ガサゴソ。眠りについてからどれだけが経ったのだろうか。部屋が騒がしくジル王子は目を覚ました。
「ん~ん!!」

 音のするほうを見ると、クロとシルヴィの二人が複数の男に体を抑えられ乱暴をされそうになっていた。
「おっと動くんじゃないよ。」

 すぐに止めに入ろうとジル王子は起き上がるが、枕元に立っていた集落の代表に杖を突きつけられていて動けなかった。
「あんたには睡眠魔法をかけ続けていたんだかね……よほど魔法への適正が高いとみた。」

「……これはいったいどういうおつもりですか。」

「いったろ?この集落は魔力の高いものとのみ子を作ると。あのお嬢さんたちはこの集落のどの女よりも魔力が多い、だから可哀想だが彼らの子供を産んでもらうことにした。」

「馬鹿げた考えですね。世界には私よりも魔力が低いというのに魔法が上手い人が五万といます。まるで魔力の有無が魔法の才能と決めつけた、あなたたちの考えはとても滑稽に見えますよ。」

「黙れ!私たちは他の人間よりも優れているんだ!子供が知ったような口を聞くんじゃない!……安心していいのよ。行為が終わってから逃げ出そうとしなければ、身の安全は保証してあげるから。」

 集落の代表の声に男たちは怯え衣服を脱がす手を止めた。
「今まではそれで上手くいっていたようですが。どうやら今の怒鳴り声で、怖い狼が二匹この家に向かって来ているようですよ。」

「何を言って……」

 ジル王子の言葉通り、三十秒もかからず家のドアがゆっくりと開き、そこにはコナーとヤンの姿があった。
「あなたたち!外は魔法使い全員で固めていたはず!いったいどうやってここまで来たの!」

「…………!!」

 コナーとヤンはクロとシルヴィが襲われているのを見るやいなや、一瞬で男たちの前に移動して男たちを蹴散らした。拳で殴られたものは頭が凹み、足で蹴られたものからは鈍い音がした。恐らく生きてはいないだろう。

「二人とも怖い思いさせてごめん。」

「うん……大丈夫!」

「答えなさい!外の魔法使いはどうしたの!」

「……動けなくしました。どうやら俺たちの考えが甘かったようですが。」

「嘘だ!私たちの作った魔法使いの集落がこんなガキ共に!それも魔法の才能のないガキ共に!!」

「よっと」

 集落の代表が切れて杖をコナーたちの方へ向けた瞬間、ジル王子の拳が集落の代表の腹へと食い込み気絶させた。
「心の乱れは魔力の乱れ。まぁ、魔力の総量だけにこだわっているあなたには分からないでしょうけど。そんなことより早くここを出ないとだな。」

「う……ぐ!あぁ……」
 五人が家を出ると、家を囲むように腕の折られた魔法使いが呻き声をあげながら地面を転がっていた。

「悪いがコナーくん、君たちだけで先にドワーフの集落に向かってくれ。あのようなものたちとはいえ、ここはまだドラン王国の領土だ。ドラン王国の王子として責任をもって弔ってやりたい。」

 ジル王子はコナーに地図を預け、集落に留まり。コナーたちは眠たい目を擦りながら再びドワーフの集落へと向かった。
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