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前編
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2月が1年の中で一番寒い。こうしてバスを待っていた去年も、同じ事を考えたのを思い出す。
こんなに寒いのに、校則でタイツが禁止されている理由が全くわからない。そんな校則を平気で破っているクラスメイトの瀬奈さんが、先生達から注意を受けないのも、もっとわからない。
去年のある日私は、思い切って黒タイツを履いて登校した事があった。結果は言わずもがな、いたいけな女子高生に何の恨みがあるんだ、と言いたくなるほど、担任にこっぴどく叱られた。
たまたま虫の居所が悪かったんじゃない?と操は同情したが、大の大人がみんな見てる前で、機嫌の良し悪しであれほど怒り狂うなんて、みっともないったらなかった。
ひとしきり私を罵倒し終わると、担任は1年の時も同じクラスだった瀬奈さんの黒タイツを一瞥してたった一言、「お前も気をつけろよ」、で済ませた時は、股間を蹴り上げてやろうかと思うくらい本気で腹が立った。
この世は、不公平だ。
私はそれを何度も味わっていながら、何度もささやかな抵抗を見せ、その度にいつも後悔してきた。
下唇を噛みながらそんな事を考え、プレイリストの中から「サイレントマジョリティー」を必死に探す。
バス停の周囲には、サラリーマンやOLに混じって同じ高校の学生達がいたが、皆、白い息を吐きながら、今日も賑やかに談笑している。その様子をなるべく遮断したいのもあって、私は決まって音量を最大にし、Bluetoothで音楽鑑賞に勤しんでいた。
「夢を見ることは時には孤独にもなるよ、誰もいない道を進むんだ。この世界は群れていても始まらない、Yesでいいのか。サイレントマジョリティー」
私は、この1番のサビを聞くといつもほっとする。
多分伝えたい意味はちょっと違うことにも薄々感付いてはいたけど、この曲は孤独な私を奮い立たせてくれるキラーチューンだ。
私はあと何年、この曲にシンパシーを感じるのだろう、と一抹の不安を覚えながら、寒さで鳥肌の立った足を持ち上げ、ようやくやって来たバスに乗り込む。
「見栄やプライドの鎖に繋がれたような、つまらない大人は置いて行け。さあ未来は君たちのためにある、Noと言いなよ。サイレントマジョリティー」
見栄やプライドの鎖に繋がれて置いて行かれてるのは、まさに自分じゃないか。
2番のサビを聞いて、そんな風にいつも通り自虐しながら。
バスを降りてオフィス街をひた歩いていると、雪がちらつき始めたのに気付いた。
小学生の頃は冬になると、男友達に混じってよく雪合戦した事を思い出す。意識していたわけではなかったけど、昔から女の子より男の子とウマが合っていた。
ある日、比較的仲の良かった女の子から、ある男の子にラブレターを渡して欲しいと頼まれた。私が安請け合いしてその男の子にラブレターを渡すと、「俺が好きなの純原だから、無理って言っといて」、と、まさかの逆告白を受けてしまった事がある。まだ子供でバカだった私は、特に何も考えずに男の子に言われた通り、そのままの返事を女の子に伝えた。
次の日から、私は女の子達から無視されるようになった。
そりゃあ、少しはショックだったけど、怒りの方が強かったのを覚えている。
だって、私は言われた通りラブレターを渡して、言われた通り返事を伝えただけなんだから。無視の対象になった事も、男友達が沢山いたからそれほど気にならなかった。
……小学生の間までは。
中学生になると、女子と男子には思春期特有のはっきりとした隔たりができ、私はひとりぼっちになった。だけど、それでも平気なフリして、かまわず男の子に積極的に絡んでいった。
すると今度は、男の子達から陰で尻軽女の烙印を押されていたという事実を、中学3年のクラス替えの後に聞かされた。
私の理不尽に対する怒りが孤独を上回れていたのも、そこいらが限界の頃だったと思う。
ビル群とビル群の間を貫く大通りを抜け、スターバックスを左に曲がれば学校が見えてくる。雪の混じった風にマフラーを煽られ、私は震えながらスターバックスを横切った。
すると、ちょうどお店の自動ドアが開いた。私は特に気せず、そのままロボットのようにグルリと左へ旋回する。寒い時は、なぜか動きが機敏かつ無機質になった。
ポンポン。
命令を与えられたAIの如く無心で急ぐ私の肩を、誰かが叩いた。体をビクリとさせて有機質を取り戻すと、私は恐る恐る振り返った。
(よう!)
声は聞こえなかったが口の動きで、ホットラテを手にした弓川大智が、私にそう言ったことはわかった。
周りに操がいないか確認しながら、イヤホンを外す。
「なに?弓川」
どうやら、近くに操はいないらしかった。
「なに、とはひでぇな。大智でいいって、いつも言ってるじゃないか」
それを聞いて大きくため息をつくと、私は踵を返し、再び歩き出した。
「お、おいおい、挨拶もなしかよ」
大智が慌てて追いかけてくる。
「なんで下の名前で呼ばなきゃいけないの」
得意のAIウォークでスピードを上げ、彼を引き離しながら答える。
「なんで、って……みんなそう呼んでるから」
さも当然、といった様子だ。
確かに、男女問わずみんなから、弓川が大智と呼ばれていることは私も知っていた。
「私もそう呼んだら、こうして声かけてくるのやめてくれる?」
我ながらひどい言い草をする。
「なんでそうなるんだよ、無茶苦茶だ」
彼は全然堪えもせず、笑った。こういう人だと分かってるから、私もあんな言い方をしたのだ。
「大智ってさ……」
「お、早速呼んでくれた」
私は、もう一度大きくため息をついた。
「……なんで、私にそんな話しかけてくるの?」
「ははは。なんで、なんで、ばっかりだな純原」私のスピードに追いつき、隣を歩きながら大智はまた笑った。「迷惑か?」
「ありがたがってるように見える?」
「でも、無視はしないじゃん」
「人間だもん」
「みつを」
私は、三度目のため息をついた。内心ではこの会話を楽しみながら。
「……学校の中では、あんまり話しかけないでほしい」
とは言え、操に見られたら、どう勘違いされるかわかったもんじゃない。
「同じ部活なのに?それは、学校の外で会ってくれるって意味だな」
「バカ」
ついに、私も笑ってしまう。
「やっと、笑った。純原の笑顔はレアだからラッキーだ」
女子にしては背が高めなはずの私だったが、大智の肩を越すのがやっとだということが、近くにいるとわかる。
「うるさい」
校門に着く頃、雪はますます勢いを増していた。
これは、久しぶりに積もるかもしれない。
私は、なぜか自分が少しワクワクしているのがわかった。
「おはよー、楓」
教室に入ると、私に挨拶をしてくる唯一のクラスメイト……いや、唯一の女子、結城操が声をかけてきた。
「おはよ」
大智に先に教室へ入らせてから、少し遅れて教室へ来たのが功を奏したようだ。
「来週の体育、耐寒マラソンらしいよ」
操がさも迷惑そうに告げてくる。
「そうなんだ。42.195キロ?」
私はカバンを下ろしながら、余裕の表情で言った。
「まさか。死んじゃうよ、そんなに走ったら」
特に運動神経が秀でているわけではなかったけど、持久走なら得意だった。私の我慢強さは、なぜか陸上部で花開いたというわけだ。
「女子なら、楓が一番だろうね」
羨ましそうというよりは、半分呆れたように言う。
「それしか取り柄がないからね」
「また、そんなこと言う」
操が、怒った表情で二の腕を突っついてきた。
「本当だよ。けど、本気出したら男子にだって負けないけどね」
カバンから教科書を取り出しながら、私は澄まし顔をした。
「それは無理じゃない?大智だって、すっごく早いし」
「あいつは短距離だもん。スタミナ勝負なら負けない」
私はムッとして言った。
その時だった。
「あいつ、だってさ」
私はハッとして振り返ると、瀬奈さんの取り巻きが2人、話を立ち聞きしていたのに気付く。
「大智をあいつ呼ばわりするなんて、随分仲良いのね?」
「私も大智のこと、そんな風に呼んでみたいわぁ」
そう言われて、胸の奥があっという間にどす黒い気持ちになるのがわかった。
私は無言のまま、空になったカバンを机の脇に掛けた。
うらやましいの?とでも言い返してやれれば、どんなにか楽になれるか。
「くだらないこと言ってんじゃないよ」そう思っていたら、意外な人物が助け舟を出してくれた。「朝からみっともないね」
声の主は、瀬奈明日香だった。
「お、おはよう明日香」
「は、早かったね今日は」
取り巻き達がたじろぐ。
「私が早かったら、なんか問題でもあんの?」
相変わらず、辛辣だ。
くわばらくわばら、と唱えながら、私は黙ったまま机の中に教科書を入れた。
「そんなわけないじゃん!……今日も、髪綺麗だね。……あはは」
気持ちの悪い愛想笑顔を浮かべながら、取り巻きの1人がご機嫌を取ろうとする。
「んなことない、普通だよ」お世辞を一蹴すると、瀬奈さんはこちらを見て言った。「純原さんのがよっぽど綺麗じゃん」
まさか話を振られると思っていなかった私は、驚いて飛び上がりそうになる。
「あ、あはは……」
取り巻きとさほど変わらない、気持ちの悪い愛想笑いを浮かべてしまった自分が、とても情けない。
操は、居心地が悪そうにオロオロとその様子を見ていた。
「触ってもいい?」
「え」
瀬奈さんの言葉に、取り巻きが驚く。が、私の方がもっと驚いていた。
「い、いいけど。別に」
どこぞのお騒がせ女優のような語尾が、平静を装う精一杯の強がりだった。
綺麗にネイリングされた瀬奈さんの長い指が、私の髪に触れる。
「……わー、フワッフワ。サラッサラ。……ツヤッツヤ」
髪を触りながら次々と繰り出されるオノマトペに、私の耳は真っ赤になってしまう。
取り巻きがそんな自分を恨めしそうに見ているのが、爽快ではあった。
「そんなに?そんなにフワフワ、サラツヤ?」
どこから話を聞いていたのか、大智が大声を出しながらやって来る。
最悪だ。
「あんたは駄目。髪は女の命なんだから」
瀬奈さんは大智を軽くあしらうと、プイと向こうを向いて行ってしまった。
取り巻き達も、取り巻きらしく、それにノコノコとついて行く。
助かった……のか?
「わかってるよ。純原の髪なんて触ったら、何されるかわかんねぇ」
大智は、続け様に余計な事を言った。操がポカンと口を開けている。
私はもう無視を決め込んで、スマホをいじりだすことにした。
瀬奈さんのあんた呼ばわりはいいのかよ、と、取り巻きたちに腹を立てながら。
昼休み。私はいつものように、図書室でご飯を食べていた。
ここは静かだし、私のように1人で昼食をとっている人もポツポツいたから、なんとなく居心地が良かった。
操はいつも、他のクラスメイト達とお昼を食べる。私も一緒に、と何度か誘われたけど、頑なに断っていた。高校に入ってから、何か誰かとトラブルを起こしたわけではないけど、女友達、というものがそもそも苦手だったから、私は1人を好んだ。誰にでも人懐っこい操が、特別なだけだ。
「フウ」
食事を終えると、私はペットボトルのお茶をゴクゴクと飲み干した。
その途端、トイレに行きたくなる。冬場はトイレが近くなっていけない。
そんな、お婆ちゃんのようなセリフを頭に浮かべながら、私は図書室を出た。
図書室からは教職員用トイレが近かったけど、なぜか気が進まないので、いつもわざわざ2年生用のトイレを利用しに戻っていた。
廊下の窓に目をやると、雪の勢いが弱まってきているのがわかった。
なんだ、積もらないのか、とガッカリしながら、私はトイレに入った。
個室の鍵を掛け、腰を下ろす。
お尻が冷たい。
おうちの温かい便座を恋しく思いながら用を足し終えると、誰かの話し声が聞こえてくる。
「そんな事もないけどね」
……操だ。
私はなんとなく外へ出るタイミングを失って、パンツを履くと再び便座に座りなおした。
「でもさ、なんかお高くとまってるじゃん。……その割には、今朝も明日香ちゃんとか、大智と仲よさそうにしてさ」
「そうそう。なのに、私たちのことなんて興味ない、って感じでツンとしてるもん」
話題の人物が誰であるか、すぐにわかった。
「話してみたら普通の子だよ。結構、言い方はきついけど」
わかったように私を評するな、と、操に対しても私の心は牙を剥いてしまう。
出て行ってやろうか。それで、どうする?睨みでもきかせる?大人気ないけど、私はまだ大人じゃない。でも、そうすることになんの意味がある?
「大人だよねー、操は。私はあの子無理だわ」
「えへへ。そうなのかな」
まんざらでも無さそうに、操が笑う。
私は、自分が惨めになった。
トイレに身を潜めて、自分の陰口を聞かされ、何も言えずにじっとしてるなんて。
(Yesでいいのか?サイレントマジョリティー)
今朝も聞いた私のキラーチューンが、頭に流れる。
バンッ!
気がつくと、私は鍵を解いて勢いよくドアを開けていた。
3人が驚いて、目をパチクリさせる。
「か、楓」
操の顔に、軽口を叩いた後悔の色が浮かぶ。
「お世話様」
私はそれだけ言い残すと、時が止まったように静止したままの3人を置いて、ツカツカとトイレから出て行った。
私が何をしたっていうの?どうして、いつもこうなるの?
目頭が熱くなるのを感じながら、私は早歩きで廊下を歩いた。
悲しいからじゃない。悔しいからだ。
女子達から無視された時も。男子達に尻軽扱いされた時も。操と、大智と、瀬奈さんに話しかけられた時も。私は、何もしていない。ただ、思った通りに口を開いてきただけだ。
それがいけないっていうの?神様。
(誰かの後をついていけば傷つかないけど、その群れが総意だと、ひとまとめにされる)
私はキラーチューンのCメロのフレーズを思い浮かべた。
誰の後もついていってないのに、私が傷ついているのはなんでなんだ。
私の歩みのスピードは、さらに加速する。
気付けば、校舎を出て手洗い場に向かっていた。顔でも洗って、スッキリしたかったからだ。
校舎の角を、機敏に旋回する。
すると、そこには男子の後ろ姿と、それに向かい合う瀬奈さんの姿があった。
「だからさ、俺と付き合ってほしいんだよ」
……これは、マズイ。とんでもない場面に出くわしてしまった。
勢いよく進んでいた両足に急ブレーキをかけると、私はそのまま微動だにせず固まってしまう。
「……あのね、じゃあ聞きたいんだけど」瀬奈さんは動揺も見せず、いつもの調子で口を開いた。「あんたと付き合って、私になんの得があんの?」
「それは……映画見たり、飯食いに行ったり、電話で話したり……げ、元気ない時は、励ましたりしてあげられるぜ」
男子は、シドロモドロになりながら答えた。
瀬奈さんが大きくため息をつく。
「わっかんないかなぁ。あんたじゃ、役不足だって言ってんの。はっきり言わなきゃ察してくれないの?」
男子の心境を思えば気の毒になる程、痛快なフリ方だ。
私はオイルの切れたロボット然とした、直立不動の姿勢を崩せずにいた。
「そうかよ……お前に告った、俺がバカだった」
男子は情けない捨て台詞を吐いて、こちらに向き直った。
当然、私と目が合う。同級生かと思ったら、3年の先輩だった。
「直接言うだけマシだったけど、最後の言葉がそれじゃあねぇ。そんなだから、彼女のひとつもできないんだよ」
容赦ない瀬奈さんの追い打ちを背中に受けながら、先輩は私から視線をそらし、バツが悪そうに私の隣をスタスタと横切っていった。ズボンの両ポケットに、手を突っ込みながら。
「……あなたも、そう思わない?純原さん」
瀬奈さんは何事もなかったかのように、あっけらかんと私に聞いてきた。
「そうだね。瀬奈さんの言う通りじゃない?」
なぜか、私は無理して堂々とそう答えた。
「でしょ。……明日香でいいよ」
言いながら彼女は、手洗い場の横にある水飲み機に向かった。私はカチコチになったまま、その様子を眺めている。
「私も、楓って呼ぶからさ」
私は首だけコクコクと頷いて、それに了解した。
瀬奈さんはそれを確認すると、顔を傾けて水を飲み始めた。
冬の澄んだ空気の中で陽気に照らされたその姿が、なんだかとても美しく、カッコよく見えて、私はただただ見とれていた。
「……ふう」飲み終えると、濡れた髪をかき上げながら、見つめる私に顔を向けて彼女が笑った。「楓も、飲む?」
私は、再びコクコクと頷く。その時、ようやく神経に脳から信号が行き届き、固まっていた体が動いた。
導かれるまま、フラフラと瀬奈さんの隣へ行くと、彼女はもう一度水を口に含み始めた。
そんなに、喉乾いてるのかな。
そう思いながら、すぐそばでその美しい横顔を眺めていた次の瞬間。
「……!!」
頭に、電流が走った。
この世のものとは思えない柔らかいものが、勢いよく私の唇を奪ったのだ。
あまりの出来事に思考が追いつかず、私はとにかく目を瞑った。それしか、反応ができなかった。
そのまま、唇を優しくこじ開けられたかと思うと、冷たい水が口の中に、ゆっくりゆっくり流し込まれるのがわかった。
とろけそうに甘く感じるその水を、私は確かめるように無我夢中で、コクリ、コクリと喉を鳴らしながら飲み込んだ。
瀬奈さんは、嗅いだことがないくらい、いい匂いがした。
私は彼女の、高貴な花のようなその匂いを堪能しながら、流し込まれた全ての水を平らげた。
唇が離れる。甘美なひと時は、あまりにも短く、そして長くも感じた。
「美味しかった?」
私は膝から崩れ落ちながら、またコクコクと首だけで返事をするのがやっとだった。
「……かわいい」
瀬奈さんはそう言うと、座り込む私の頬をそっと撫でてから、校舎へ向かって歩き出した。
私は振り返ることもできず、ファーストキスの余韻に浸る他なかった。
何が起こったのかわからなかった。
これは本当に現実なのかと、疑った。
だけど、瀬奈明日香の唇の感触は、確かに私の唇にはっきりと残っていた。
トイレでの出来事なんて、すっかり頭から抜け出ていた。
ただ、瀬奈さんの匂いと、瀬奈さんの感触だけが、私の心臓を鷲掴みにしていた事だけは、間違いなかった。
胸の高鳴りが、止まらない。
ずっと閉じたったままだった私の心の中の蕾が、ゆっくりと花開きかけているような気がした。
to be continued……
後編
こんなに寒いのに、校則でタイツが禁止されている理由が全くわからない。そんな校則を平気で破っているクラスメイトの瀬奈さんが、先生達から注意を受けないのも、もっとわからない。
去年のある日私は、思い切って黒タイツを履いて登校した事があった。結果は言わずもがな、いたいけな女子高生に何の恨みがあるんだ、と言いたくなるほど、担任にこっぴどく叱られた。
たまたま虫の居所が悪かったんじゃない?と操は同情したが、大の大人がみんな見てる前で、機嫌の良し悪しであれほど怒り狂うなんて、みっともないったらなかった。
ひとしきり私を罵倒し終わると、担任は1年の時も同じクラスだった瀬奈さんの黒タイツを一瞥してたった一言、「お前も気をつけろよ」、で済ませた時は、股間を蹴り上げてやろうかと思うくらい本気で腹が立った。
この世は、不公平だ。
私はそれを何度も味わっていながら、何度もささやかな抵抗を見せ、その度にいつも後悔してきた。
下唇を噛みながらそんな事を考え、プレイリストの中から「サイレントマジョリティー」を必死に探す。
バス停の周囲には、サラリーマンやOLに混じって同じ高校の学生達がいたが、皆、白い息を吐きながら、今日も賑やかに談笑している。その様子をなるべく遮断したいのもあって、私は決まって音量を最大にし、Bluetoothで音楽鑑賞に勤しんでいた。
「夢を見ることは時には孤独にもなるよ、誰もいない道を進むんだ。この世界は群れていても始まらない、Yesでいいのか。サイレントマジョリティー」
私は、この1番のサビを聞くといつもほっとする。
多分伝えたい意味はちょっと違うことにも薄々感付いてはいたけど、この曲は孤独な私を奮い立たせてくれるキラーチューンだ。
私はあと何年、この曲にシンパシーを感じるのだろう、と一抹の不安を覚えながら、寒さで鳥肌の立った足を持ち上げ、ようやくやって来たバスに乗り込む。
「見栄やプライドの鎖に繋がれたような、つまらない大人は置いて行け。さあ未来は君たちのためにある、Noと言いなよ。サイレントマジョリティー」
見栄やプライドの鎖に繋がれて置いて行かれてるのは、まさに自分じゃないか。
2番のサビを聞いて、そんな風にいつも通り自虐しながら。
バスを降りてオフィス街をひた歩いていると、雪がちらつき始めたのに気付いた。
小学生の頃は冬になると、男友達に混じってよく雪合戦した事を思い出す。意識していたわけではなかったけど、昔から女の子より男の子とウマが合っていた。
ある日、比較的仲の良かった女の子から、ある男の子にラブレターを渡して欲しいと頼まれた。私が安請け合いしてその男の子にラブレターを渡すと、「俺が好きなの純原だから、無理って言っといて」、と、まさかの逆告白を受けてしまった事がある。まだ子供でバカだった私は、特に何も考えずに男の子に言われた通り、そのままの返事を女の子に伝えた。
次の日から、私は女の子達から無視されるようになった。
そりゃあ、少しはショックだったけど、怒りの方が強かったのを覚えている。
だって、私は言われた通りラブレターを渡して、言われた通り返事を伝えただけなんだから。無視の対象になった事も、男友達が沢山いたからそれほど気にならなかった。
……小学生の間までは。
中学生になると、女子と男子には思春期特有のはっきりとした隔たりができ、私はひとりぼっちになった。だけど、それでも平気なフリして、かまわず男の子に積極的に絡んでいった。
すると今度は、男の子達から陰で尻軽女の烙印を押されていたという事実を、中学3年のクラス替えの後に聞かされた。
私の理不尽に対する怒りが孤独を上回れていたのも、そこいらが限界の頃だったと思う。
ビル群とビル群の間を貫く大通りを抜け、スターバックスを左に曲がれば学校が見えてくる。雪の混じった風にマフラーを煽られ、私は震えながらスターバックスを横切った。
すると、ちょうどお店の自動ドアが開いた。私は特に気せず、そのままロボットのようにグルリと左へ旋回する。寒い時は、なぜか動きが機敏かつ無機質になった。
ポンポン。
命令を与えられたAIの如く無心で急ぐ私の肩を、誰かが叩いた。体をビクリとさせて有機質を取り戻すと、私は恐る恐る振り返った。
(よう!)
声は聞こえなかったが口の動きで、ホットラテを手にした弓川大智が、私にそう言ったことはわかった。
周りに操がいないか確認しながら、イヤホンを外す。
「なに?弓川」
どうやら、近くに操はいないらしかった。
「なに、とはひでぇな。大智でいいって、いつも言ってるじゃないか」
それを聞いて大きくため息をつくと、私は踵を返し、再び歩き出した。
「お、おいおい、挨拶もなしかよ」
大智が慌てて追いかけてくる。
「なんで下の名前で呼ばなきゃいけないの」
得意のAIウォークでスピードを上げ、彼を引き離しながら答える。
「なんで、って……みんなそう呼んでるから」
さも当然、といった様子だ。
確かに、男女問わずみんなから、弓川が大智と呼ばれていることは私も知っていた。
「私もそう呼んだら、こうして声かけてくるのやめてくれる?」
我ながらひどい言い草をする。
「なんでそうなるんだよ、無茶苦茶だ」
彼は全然堪えもせず、笑った。こういう人だと分かってるから、私もあんな言い方をしたのだ。
「大智ってさ……」
「お、早速呼んでくれた」
私は、もう一度大きくため息をついた。
「……なんで、私にそんな話しかけてくるの?」
「ははは。なんで、なんで、ばっかりだな純原」私のスピードに追いつき、隣を歩きながら大智はまた笑った。「迷惑か?」
「ありがたがってるように見える?」
「でも、無視はしないじゃん」
「人間だもん」
「みつを」
私は、三度目のため息をついた。内心ではこの会話を楽しみながら。
「……学校の中では、あんまり話しかけないでほしい」
とは言え、操に見られたら、どう勘違いされるかわかったもんじゃない。
「同じ部活なのに?それは、学校の外で会ってくれるって意味だな」
「バカ」
ついに、私も笑ってしまう。
「やっと、笑った。純原の笑顔はレアだからラッキーだ」
女子にしては背が高めなはずの私だったが、大智の肩を越すのがやっとだということが、近くにいるとわかる。
「うるさい」
校門に着く頃、雪はますます勢いを増していた。
これは、久しぶりに積もるかもしれない。
私は、なぜか自分が少しワクワクしているのがわかった。
「おはよー、楓」
教室に入ると、私に挨拶をしてくる唯一のクラスメイト……いや、唯一の女子、結城操が声をかけてきた。
「おはよ」
大智に先に教室へ入らせてから、少し遅れて教室へ来たのが功を奏したようだ。
「来週の体育、耐寒マラソンらしいよ」
操がさも迷惑そうに告げてくる。
「そうなんだ。42.195キロ?」
私はカバンを下ろしながら、余裕の表情で言った。
「まさか。死んじゃうよ、そんなに走ったら」
特に運動神経が秀でているわけではなかったけど、持久走なら得意だった。私の我慢強さは、なぜか陸上部で花開いたというわけだ。
「女子なら、楓が一番だろうね」
羨ましそうというよりは、半分呆れたように言う。
「それしか取り柄がないからね」
「また、そんなこと言う」
操が、怒った表情で二の腕を突っついてきた。
「本当だよ。けど、本気出したら男子にだって負けないけどね」
カバンから教科書を取り出しながら、私は澄まし顔をした。
「それは無理じゃない?大智だって、すっごく早いし」
「あいつは短距離だもん。スタミナ勝負なら負けない」
私はムッとして言った。
その時だった。
「あいつ、だってさ」
私はハッとして振り返ると、瀬奈さんの取り巻きが2人、話を立ち聞きしていたのに気付く。
「大智をあいつ呼ばわりするなんて、随分仲良いのね?」
「私も大智のこと、そんな風に呼んでみたいわぁ」
そう言われて、胸の奥があっという間にどす黒い気持ちになるのがわかった。
私は無言のまま、空になったカバンを机の脇に掛けた。
うらやましいの?とでも言い返してやれれば、どんなにか楽になれるか。
「くだらないこと言ってんじゃないよ」そう思っていたら、意外な人物が助け舟を出してくれた。「朝からみっともないね」
声の主は、瀬奈明日香だった。
「お、おはよう明日香」
「は、早かったね今日は」
取り巻き達がたじろぐ。
「私が早かったら、なんか問題でもあんの?」
相変わらず、辛辣だ。
くわばらくわばら、と唱えながら、私は黙ったまま机の中に教科書を入れた。
「そんなわけないじゃん!……今日も、髪綺麗だね。……あはは」
気持ちの悪い愛想笑顔を浮かべながら、取り巻きの1人がご機嫌を取ろうとする。
「んなことない、普通だよ」お世辞を一蹴すると、瀬奈さんはこちらを見て言った。「純原さんのがよっぽど綺麗じゃん」
まさか話を振られると思っていなかった私は、驚いて飛び上がりそうになる。
「あ、あはは……」
取り巻きとさほど変わらない、気持ちの悪い愛想笑いを浮かべてしまった自分が、とても情けない。
操は、居心地が悪そうにオロオロとその様子を見ていた。
「触ってもいい?」
「え」
瀬奈さんの言葉に、取り巻きが驚く。が、私の方がもっと驚いていた。
「い、いいけど。別に」
どこぞのお騒がせ女優のような語尾が、平静を装う精一杯の強がりだった。
綺麗にネイリングされた瀬奈さんの長い指が、私の髪に触れる。
「……わー、フワッフワ。サラッサラ。……ツヤッツヤ」
髪を触りながら次々と繰り出されるオノマトペに、私の耳は真っ赤になってしまう。
取り巻きがそんな自分を恨めしそうに見ているのが、爽快ではあった。
「そんなに?そんなにフワフワ、サラツヤ?」
どこから話を聞いていたのか、大智が大声を出しながらやって来る。
最悪だ。
「あんたは駄目。髪は女の命なんだから」
瀬奈さんは大智を軽くあしらうと、プイと向こうを向いて行ってしまった。
取り巻き達も、取り巻きらしく、それにノコノコとついて行く。
助かった……のか?
「わかってるよ。純原の髪なんて触ったら、何されるかわかんねぇ」
大智は、続け様に余計な事を言った。操がポカンと口を開けている。
私はもう無視を決め込んで、スマホをいじりだすことにした。
瀬奈さんのあんた呼ばわりはいいのかよ、と、取り巻きたちに腹を立てながら。
昼休み。私はいつものように、図書室でご飯を食べていた。
ここは静かだし、私のように1人で昼食をとっている人もポツポツいたから、なんとなく居心地が良かった。
操はいつも、他のクラスメイト達とお昼を食べる。私も一緒に、と何度か誘われたけど、頑なに断っていた。高校に入ってから、何か誰かとトラブルを起こしたわけではないけど、女友達、というものがそもそも苦手だったから、私は1人を好んだ。誰にでも人懐っこい操が、特別なだけだ。
「フウ」
食事を終えると、私はペットボトルのお茶をゴクゴクと飲み干した。
その途端、トイレに行きたくなる。冬場はトイレが近くなっていけない。
そんな、お婆ちゃんのようなセリフを頭に浮かべながら、私は図書室を出た。
図書室からは教職員用トイレが近かったけど、なぜか気が進まないので、いつもわざわざ2年生用のトイレを利用しに戻っていた。
廊下の窓に目をやると、雪の勢いが弱まってきているのがわかった。
なんだ、積もらないのか、とガッカリしながら、私はトイレに入った。
個室の鍵を掛け、腰を下ろす。
お尻が冷たい。
おうちの温かい便座を恋しく思いながら用を足し終えると、誰かの話し声が聞こえてくる。
「そんな事もないけどね」
……操だ。
私はなんとなく外へ出るタイミングを失って、パンツを履くと再び便座に座りなおした。
「でもさ、なんかお高くとまってるじゃん。……その割には、今朝も明日香ちゃんとか、大智と仲よさそうにしてさ」
「そうそう。なのに、私たちのことなんて興味ない、って感じでツンとしてるもん」
話題の人物が誰であるか、すぐにわかった。
「話してみたら普通の子だよ。結構、言い方はきついけど」
わかったように私を評するな、と、操に対しても私の心は牙を剥いてしまう。
出て行ってやろうか。それで、どうする?睨みでもきかせる?大人気ないけど、私はまだ大人じゃない。でも、そうすることになんの意味がある?
「大人だよねー、操は。私はあの子無理だわ」
「えへへ。そうなのかな」
まんざらでも無さそうに、操が笑う。
私は、自分が惨めになった。
トイレに身を潜めて、自分の陰口を聞かされ、何も言えずにじっとしてるなんて。
(Yesでいいのか?サイレントマジョリティー)
今朝も聞いた私のキラーチューンが、頭に流れる。
バンッ!
気がつくと、私は鍵を解いて勢いよくドアを開けていた。
3人が驚いて、目をパチクリさせる。
「か、楓」
操の顔に、軽口を叩いた後悔の色が浮かぶ。
「お世話様」
私はそれだけ言い残すと、時が止まったように静止したままの3人を置いて、ツカツカとトイレから出て行った。
私が何をしたっていうの?どうして、いつもこうなるの?
目頭が熱くなるのを感じながら、私は早歩きで廊下を歩いた。
悲しいからじゃない。悔しいからだ。
女子達から無視された時も。男子達に尻軽扱いされた時も。操と、大智と、瀬奈さんに話しかけられた時も。私は、何もしていない。ただ、思った通りに口を開いてきただけだ。
それがいけないっていうの?神様。
(誰かの後をついていけば傷つかないけど、その群れが総意だと、ひとまとめにされる)
私はキラーチューンのCメロのフレーズを思い浮かべた。
誰の後もついていってないのに、私が傷ついているのはなんでなんだ。
私の歩みのスピードは、さらに加速する。
気付けば、校舎を出て手洗い場に向かっていた。顔でも洗って、スッキリしたかったからだ。
校舎の角を、機敏に旋回する。
すると、そこには男子の後ろ姿と、それに向かい合う瀬奈さんの姿があった。
「だからさ、俺と付き合ってほしいんだよ」
……これは、マズイ。とんでもない場面に出くわしてしまった。
勢いよく進んでいた両足に急ブレーキをかけると、私はそのまま微動だにせず固まってしまう。
「……あのね、じゃあ聞きたいんだけど」瀬奈さんは動揺も見せず、いつもの調子で口を開いた。「あんたと付き合って、私になんの得があんの?」
「それは……映画見たり、飯食いに行ったり、電話で話したり……げ、元気ない時は、励ましたりしてあげられるぜ」
男子は、シドロモドロになりながら答えた。
瀬奈さんが大きくため息をつく。
「わっかんないかなぁ。あんたじゃ、役不足だって言ってんの。はっきり言わなきゃ察してくれないの?」
男子の心境を思えば気の毒になる程、痛快なフリ方だ。
私はオイルの切れたロボット然とした、直立不動の姿勢を崩せずにいた。
「そうかよ……お前に告った、俺がバカだった」
男子は情けない捨て台詞を吐いて、こちらに向き直った。
当然、私と目が合う。同級生かと思ったら、3年の先輩だった。
「直接言うだけマシだったけど、最後の言葉がそれじゃあねぇ。そんなだから、彼女のひとつもできないんだよ」
容赦ない瀬奈さんの追い打ちを背中に受けながら、先輩は私から視線をそらし、バツが悪そうに私の隣をスタスタと横切っていった。ズボンの両ポケットに、手を突っ込みながら。
「……あなたも、そう思わない?純原さん」
瀬奈さんは何事もなかったかのように、あっけらかんと私に聞いてきた。
「そうだね。瀬奈さんの言う通りじゃない?」
なぜか、私は無理して堂々とそう答えた。
「でしょ。……明日香でいいよ」
言いながら彼女は、手洗い場の横にある水飲み機に向かった。私はカチコチになったまま、その様子を眺めている。
「私も、楓って呼ぶからさ」
私は首だけコクコクと頷いて、それに了解した。
瀬奈さんはそれを確認すると、顔を傾けて水を飲み始めた。
冬の澄んだ空気の中で陽気に照らされたその姿が、なんだかとても美しく、カッコよく見えて、私はただただ見とれていた。
「……ふう」飲み終えると、濡れた髪をかき上げながら、見つめる私に顔を向けて彼女が笑った。「楓も、飲む?」
私は、再びコクコクと頷く。その時、ようやく神経に脳から信号が行き届き、固まっていた体が動いた。
導かれるまま、フラフラと瀬奈さんの隣へ行くと、彼女はもう一度水を口に含み始めた。
そんなに、喉乾いてるのかな。
そう思いながら、すぐそばでその美しい横顔を眺めていた次の瞬間。
「……!!」
頭に、電流が走った。
この世のものとは思えない柔らかいものが、勢いよく私の唇を奪ったのだ。
あまりの出来事に思考が追いつかず、私はとにかく目を瞑った。それしか、反応ができなかった。
そのまま、唇を優しくこじ開けられたかと思うと、冷たい水が口の中に、ゆっくりゆっくり流し込まれるのがわかった。
とろけそうに甘く感じるその水を、私は確かめるように無我夢中で、コクリ、コクリと喉を鳴らしながら飲み込んだ。
瀬奈さんは、嗅いだことがないくらい、いい匂いがした。
私は彼女の、高貴な花のようなその匂いを堪能しながら、流し込まれた全ての水を平らげた。
唇が離れる。甘美なひと時は、あまりにも短く、そして長くも感じた。
「美味しかった?」
私は膝から崩れ落ちながら、またコクコクと首だけで返事をするのがやっとだった。
「……かわいい」
瀬奈さんはそう言うと、座り込む私の頬をそっと撫でてから、校舎へ向かって歩き出した。
私は振り返ることもできず、ファーストキスの余韻に浸る他なかった。
何が起こったのかわからなかった。
これは本当に現実なのかと、疑った。
だけど、瀬奈明日香の唇の感触は、確かに私の唇にはっきりと残っていた。
トイレでの出来事なんて、すっかり頭から抜け出ていた。
ただ、瀬奈さんの匂いと、瀬奈さんの感触だけが、私の心臓を鷲掴みにしていた事だけは、間違いなかった。
胸の高鳴りが、止まらない。
ずっと閉じたったままだった私の心の中の蕾が、ゆっくりと花開きかけているような気がした。
to be continued……
後編
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