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魔酔いの森
第二十四話
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ドア状の鏡の中は、別空間だった。
いや、空間と言うより、バラの部屋だ!
床の上から空気中まで、散りばめられたバラの花びらが、強い芳香を運んで来た。
「お、お邪魔します……?」
「こっちよ」
奥の方にベッドが見えるって事は、寝室だったようだ。
バラ色のネグリジェを着たアナさんが、その上に横たわって指招きしてる。
サンライズ・ルビーよりも高貴に輝く、深い赤紫色のルビーリングと、同じ色調のマニキュア。
口紅も髪色と調和が取れて完璧に美しく、妖艶にも思えた。
「えっと……。アナさん、こんばんは……?」
吸い寄せられるように、アナさんに近付いてしまったけど、どうすれば良いんだろう……?
色々と透けて見えてしまってるから、ちょっと目の遣り場に困る……。
「もっと大変な目に遭うところを助けてあげたのよ」
そうだった。
アナさんたちは言葉に出さずとも伝わるんだった。
「ありがとうございます……?」
「ご覧なさい」
アナさんの鏡に映ってるのは、僕の泊まる布団の部屋?
そこに、全裸のオーグリスが三人いるのは何でだろう……?
「あれは……?」
知らない言語で三人が騒いでる。
僕用の鏡が目の前に現れて、文字で翻訳してくれた。
「入る所を見たのに、何で居ないの!?」
「誰かに先越されたんじゃね?」
「だから、シャワーの後、膝を折れって言ったのに!」
あー……、あれ、キシラさん達だ……。
何か物騒なことを言ってる。
「あれは、どういうことですか……?」
「男が少なく、女が強ければ、当然のことよ」
オーグは魔に属する種族だから、あれも自然な振る舞いなのだとか。
魔に属すると言っても悪ではないから、恐れる必要はないという。
「魔でも、悪じゃない……ですか?」
「私たちが聖であり、善ではないのと一緒ね」
ますます分からない。
女神が善じゃないって、どういうことだろう……?
「聖の名の下に敵を殺すもの」
「じ、じゃあ、善と悪は……?」
善は結果を顧みずに良かれと思うことを行う者。
悪は結果を顧みずに報いを求める者。
うーん、どちらも同じに聞こえるのは、僕の頭が悪いから……?
「そうでもないわ。迷惑な点で同じだもの」
「な、なるほど……?」
すると、聖と魔は敵対関係じゃないのかな……?
「そうでもないわ。聖は光輝、魔は冥闇だもの」
「うーん……?」
今は理解できそうにないから、覚えておくことにしよう。
後で、分かる範囲をメモしておこう。
「そんなことより、こちらにいらっしゃい」
「あ……、はい」
アナさんのベッドに腰を掛けると、沈み込むんじゃなくて、浮き上がる感じがした。
座ってる感覚はあるのに、自分の体重を感じない。
これは、きっと、謎技術で作られて……。
「ノボル。考え事で気をそらすのはやめなさい」
「……はい」
アナさんが動いて、温度と湿度を伴った濃厚なバラの香りが押し寄せた。
艶めかしい声で耳の奥をくすぐられ、体がブルっと反応した。
もう限界だと思った。
心臓は飛び出しそうだし、自己主張する厄介なモノが、服で擦れてはち切れそう……。
「ノボル。私を抱く覚悟はある?」
「はい」
そうだ、愛を捧げると誓ったんだ。
それの意味する所は分からなくても、僕の出来ることで恩を返したい。
「上手に出来ないかも知れませんが……」
「来なさい」
間近に見るアナさんは、やはり完璧だった。
意思の強い優しい瞳。
部分的に緑色が混ざった美しい虹彩は、ファイアオパールを思わせて、いつまでも見つめていたい気持ちになる。
雨に濡れた深紅の薔薇のように、しっとり感のある唇。
そこから覗く真珠のように輝く歯も、花珠以上の透明感があって目が離せなくなる。
整った指先と、その先の爪の形まで造形美があって至宝とさえ思える。
その明るい肌色に映えるこの指輪は、何という貴金属だろう?
青味掛かった銀? 紫光沢のプラチナ? 分からないけど良く似合ってる。
そのアナさんの手にそっと触れた筈なのに、感触はベッドのそれだった。
肩の辺りに触れてみても、僅かな空気抵抗のようなものを感じるだけで、触ることが出来なかった。
「アナさんはここにいない……?」
「そうではないわ」
軽く吐息を漏らしたアナさんが説明してくれた。
僕とアナさんの時間と空間が異なってるのだそうだ。
質量の違いから生じることもあるのだとか。
「それでも、出来ることはあるでしょう?」
アナさんがネグリジェを脱いで横になった。
僕も服を脱いで寄り添ってみた。
「アナさんの体温を感じる……」
「私の体も、ノボルの熱で溶けそうだわ」
アナさんが片手で髪を掻き上げながら、もう片方を軽やかに動かして湿った音を響かせた。
僕もその動きに合わせ、手をゆっくりと上下に動かす。
「アナさん……! もう……」
「私の……! 体に向けて、出しなさい!」
アナさんが両手で抑えるように激しく動かし、ビクッと体を縮めた。
僕も同時に、電気が走り抜けるような痛覚を伴って、かつてないほどの恍惚が溢れた。
「「えっ!?」」
夥しい量の白濁がアナさんのお腹の上を覆っていた。
まだ余韻が収まらない体を起こして見ても、触れないはずのアナさんの体に、しっかりと僕の痕跡が残ってる。
「これは、予想外だわ……!」
「えっと……。ごめんなさい……?」
時折、小刻みに体を痙攣させるアナさんが、嬉しい誤算だと言ってくれた。
僕の方からはもう触れなくなった白濁を、アナさんは両手で弄びながら考え込んでるようだ。
「シャワーを浴びてくるから、少し眠ってなさい」
適度な疲労と充足感で満たされた僕は、アナさんがいた場所をそっと撫でてみた。
薄っすらと湿った温かさに、心が癒やされるような安心感を覚えた。
いや、空間と言うより、バラの部屋だ!
床の上から空気中まで、散りばめられたバラの花びらが、強い芳香を運んで来た。
「お、お邪魔します……?」
「こっちよ」
奥の方にベッドが見えるって事は、寝室だったようだ。
バラ色のネグリジェを着たアナさんが、その上に横たわって指招きしてる。
サンライズ・ルビーよりも高貴に輝く、深い赤紫色のルビーリングと、同じ色調のマニキュア。
口紅も髪色と調和が取れて完璧に美しく、妖艶にも思えた。
「えっと……。アナさん、こんばんは……?」
吸い寄せられるように、アナさんに近付いてしまったけど、どうすれば良いんだろう……?
色々と透けて見えてしまってるから、ちょっと目の遣り場に困る……。
「もっと大変な目に遭うところを助けてあげたのよ」
そうだった。
アナさんたちは言葉に出さずとも伝わるんだった。
「ありがとうございます……?」
「ご覧なさい」
アナさんの鏡に映ってるのは、僕の泊まる布団の部屋?
そこに、全裸のオーグリスが三人いるのは何でだろう……?
「あれは……?」
知らない言語で三人が騒いでる。
僕用の鏡が目の前に現れて、文字で翻訳してくれた。
「入る所を見たのに、何で居ないの!?」
「誰かに先越されたんじゃね?」
「だから、シャワーの後、膝を折れって言ったのに!」
あー……、あれ、キシラさん達だ……。
何か物騒なことを言ってる。
「あれは、どういうことですか……?」
「男が少なく、女が強ければ、当然のことよ」
オーグは魔に属する種族だから、あれも自然な振る舞いなのだとか。
魔に属すると言っても悪ではないから、恐れる必要はないという。
「魔でも、悪じゃない……ですか?」
「私たちが聖であり、善ではないのと一緒ね」
ますます分からない。
女神が善じゃないって、どういうことだろう……?
「聖の名の下に敵を殺すもの」
「じ、じゃあ、善と悪は……?」
善は結果を顧みずに良かれと思うことを行う者。
悪は結果を顧みずに報いを求める者。
うーん、どちらも同じに聞こえるのは、僕の頭が悪いから……?
「そうでもないわ。迷惑な点で同じだもの」
「な、なるほど……?」
すると、聖と魔は敵対関係じゃないのかな……?
「そうでもないわ。聖は光輝、魔は冥闇だもの」
「うーん……?」
今は理解できそうにないから、覚えておくことにしよう。
後で、分かる範囲をメモしておこう。
「そんなことより、こちらにいらっしゃい」
「あ……、はい」
アナさんのベッドに腰を掛けると、沈み込むんじゃなくて、浮き上がる感じがした。
座ってる感覚はあるのに、自分の体重を感じない。
これは、きっと、謎技術で作られて……。
「ノボル。考え事で気をそらすのはやめなさい」
「……はい」
アナさんが動いて、温度と湿度を伴った濃厚なバラの香りが押し寄せた。
艶めかしい声で耳の奥をくすぐられ、体がブルっと反応した。
もう限界だと思った。
心臓は飛び出しそうだし、自己主張する厄介なモノが、服で擦れてはち切れそう……。
「ノボル。私を抱く覚悟はある?」
「はい」
そうだ、愛を捧げると誓ったんだ。
それの意味する所は分からなくても、僕の出来ることで恩を返したい。
「上手に出来ないかも知れませんが……」
「来なさい」
間近に見るアナさんは、やはり完璧だった。
意思の強い優しい瞳。
部分的に緑色が混ざった美しい虹彩は、ファイアオパールを思わせて、いつまでも見つめていたい気持ちになる。
雨に濡れた深紅の薔薇のように、しっとり感のある唇。
そこから覗く真珠のように輝く歯も、花珠以上の透明感があって目が離せなくなる。
整った指先と、その先の爪の形まで造形美があって至宝とさえ思える。
その明るい肌色に映えるこの指輪は、何という貴金属だろう?
青味掛かった銀? 紫光沢のプラチナ? 分からないけど良く似合ってる。
そのアナさんの手にそっと触れた筈なのに、感触はベッドのそれだった。
肩の辺りに触れてみても、僅かな空気抵抗のようなものを感じるだけで、触ることが出来なかった。
「アナさんはここにいない……?」
「そうではないわ」
軽く吐息を漏らしたアナさんが説明してくれた。
僕とアナさんの時間と空間が異なってるのだそうだ。
質量の違いから生じることもあるのだとか。
「それでも、出来ることはあるでしょう?」
アナさんがネグリジェを脱いで横になった。
僕も服を脱いで寄り添ってみた。
「アナさんの体温を感じる……」
「私の体も、ノボルの熱で溶けそうだわ」
アナさんが片手で髪を掻き上げながら、もう片方を軽やかに動かして湿った音を響かせた。
僕もその動きに合わせ、手をゆっくりと上下に動かす。
「アナさん……! もう……」
「私の……! 体に向けて、出しなさい!」
アナさんが両手で抑えるように激しく動かし、ビクッと体を縮めた。
僕も同時に、電気が走り抜けるような痛覚を伴って、かつてないほどの恍惚が溢れた。
「「えっ!?」」
夥しい量の白濁がアナさんのお腹の上を覆っていた。
まだ余韻が収まらない体を起こして見ても、触れないはずのアナさんの体に、しっかりと僕の痕跡が残ってる。
「これは、予想外だわ……!」
「えっと……。ごめんなさい……?」
時折、小刻みに体を痙攣させるアナさんが、嬉しい誤算だと言ってくれた。
僕の方からはもう触れなくなった白濁を、アナさんは両手で弄びながら考え込んでるようだ。
「シャワーを浴びてくるから、少し眠ってなさい」
適度な疲労と充足感で満たされた僕は、アナさんがいた場所をそっと撫でてみた。
薄っすらと湿った温かさに、心が癒やされるような安心感を覚えた。
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