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魔酔いの森
第三十五話
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僕が勾玉を作ってる間、キシラたち三人も、野草集めが捗ってたようだ。
キシラが細かく束分けして、キアラが長い紐で束ね、キイラの体に巻き付けていた。
「ずいぶん採れたんだね」
「あ! ノボルおかえり。どうだった?」
このやり取りは良いな……。
今までの人生には無い親密さを感じる。
「良い経験だった! お土産もあるよ、ほらっ」
「お土産……って、えええっ!」
キシラの尋常じゃない驚き方に、二人も集まってきた。
二人とも、声すら出さずに硬直してるようだ。
「結構、綺麗に作れたと思うんだけど、良かったら受け取って貰えるかな?」
「「「えええっ……!」」」
全身紫色になったのが、どういう感情か分かりづらいけど、嫌悪感じゃないと思いたい。
遠慮せずに受け取って欲しい場合、どう言えば良いだろう……?
そうだ!
「集団の証として……」
「「っ……!」」
あっ! キイラが倒れた! なんで!?
上半身を起こして支えたら、目を覚ましたキイラが、僕の手を握って言った。
「わたし! 頑張る!」
「もちろん、あたしもよ!」
「ががが……がんば……るっる……!」
何故だろう? 受け取りながらの決意表明みたいな流れになってしまった……。
思ったより、オーグにとって「集団」の意味は重いのかな?
「あまり気負わないでね。いつもどおりがいいよ」
「「「は、はい!」」」
あれー? ますます緊張してしまったぞ……。
三人が落ち着くまで、野草でも見てようかな。
あ、これは、ヨモギだ。
ミゲルさんから教わったから知ってる。
後で少し分けて貰おう。
他のは、知らないものばかりだ。
ひょっとしたら、あの独特なスパイスは、これらの組み合わせなのかも。
あ、知らなかった……。
勾玉って横向きになるように、「ひばり結び」するのか……。
先に、紐の両端を結んで、その反対側を勾玉の穴に通して、元の方に潜らせるシンプルな結び方だ。
キアラは手が震えて、それがうまく出来ないらしい。
要らなかったかなと思ったら、「すっげぇ……! 嬉しすぎて目がチカチカする……」と呟いていた。
良かった……。
アナさんのおかげで、彼女たちとは良好な関係を築くことが出来た。
それだけに、僕が維持する努力をしなければ、アナさんの苦労が無駄になってしまう。
それだけは避けたい。
「どうかな……? に、似合う?」
「うん! 肌の色とも調和が取れてるし、鎖骨の美しさを強調する位置にしたのも良いね!」
あ! 今、分かった! 強く恥じらった時に、全身が紫色になるんだ!
だとしたら、強い怒りでもそう見えるかも知れない。
覚えておこう。
「柔らかい石だから、壊れやすいかも。いつでも作り直すから言ってね」
「うん!」
ついでに、光沢が無くなってきた時のために、メンテナンス方法を教えた。
少し濡らした柔らかい布に、滑石の粉を付けて擦るだけの簡単なものだ。
僕はトクサで粉を作ったけど、この村には、既に滑石の粉末があるらしい。
「採石場で、石工に会ったでしょ?」
「うん。小柄な人達だね」
この村では、その石工に、採石権の対価として石粉を納めさせてるそうだ。
それらを精製して釉薬を作り、陶磁器として完成させ、フィシニウスに輸出するのだとか。
殿様は面白いことを考え付くなあ……。
ルカさんに聞いた「川伝いに進むルート」も、恐らく水運のことだろうし。
セントーリスとの関係が悪化して、物流が滞ったアルトスを考えての事だろうな。
緩衝地帯を安定させ、水運を確立し、物流を確保して、利益まで出したら、領主のサリヴさんも文句は言いづらいはず。
それでも、オーグと和解しない理由があるとして、その原因が兄弟仲じゃないとすれば、鉱山かな?
それとも、別な問題がアルトスで発生してる……?
「……あれ? そう言えば、キアラが大人しい?」
「まあ……、そうなるでしょう……」
紐を長めにして、首から下げてる勾玉を眺めながら、少し後ろを歩いてたようだ。
光沢が気に入ったのかな? にしては呼吸が荒いような……。
ちょっと気になったので、横に並んで脇腹をつついてみた。
「ぴ!」
「ぴ……?」
大きな目が会った直後に、顔を真紫にして走って行ってしまった。
今のは、どういう感情だろう……?
「まあ……、そうなるでしょう……」
「えー? それってどういう……」
ん? 村の方が騒がしいぞ。
弓で武装した複数のオーガが走って行くのが見えた。
おぞましきカイラも見えたから、討伐班に何かあったのかも知れない。
「こういうのって、よくある?」
「いや、ない。良くない感じ」
不安顔のキイラは、狼狽えてたハーフ・オーガを捕まえて尋問するようだ。
息を切らしながら戻ってきたキアラが、「みんな中央広場に集まってた」と教えてくれた。
「なんか、遠征組がやられたらしいぞ……!」
「まず広場に行ってみましょう!」
武装オーガを避けながら、はぐれないように手を繋いで走った。
広場は、非戦闘員と捕虜で埋め尽くされてるようだ。
殿様の側近が、状況を説明してるらしい。
その奥にキイツさんの姿が見えた。
「あ! 叔父さんがいたわ!」
「行ってみる!?」
群衆の縁に沿って進み、回り込む位置に来たときには、キイツさんも僕達に気付いたようだ。
左右の幹部に声を掛けて道を作ってくれて、ようやく辿り着くことが出来た。
「良かった! 無事だったか!?」
「叔父さん! 何があったの?」
キイツさんの説明によれば、東の下流域に大型の猛獣が出たそうだ。
まだ距離はあるものの、遠征組を追って村に近付いてるとのこと。
僕も避難するかと思いきや、そうじゃないらしい。
護衛を付けて、アルトス手前まで連れて行ってくれるのだとか。
「済まねえなノボル……。せっかく姪っ子らと良い感じになったのに……」
「叔父さん! そんな……!」
キシラの悲痛な声が胸に刺さった。
なんとなく、出発を急がせる力が働いてる気がした。
キシラが細かく束分けして、キアラが長い紐で束ね、キイラの体に巻き付けていた。
「ずいぶん採れたんだね」
「あ! ノボルおかえり。どうだった?」
このやり取りは良いな……。
今までの人生には無い親密さを感じる。
「良い経験だった! お土産もあるよ、ほらっ」
「お土産……って、えええっ!」
キシラの尋常じゃない驚き方に、二人も集まってきた。
二人とも、声すら出さずに硬直してるようだ。
「結構、綺麗に作れたと思うんだけど、良かったら受け取って貰えるかな?」
「「「えええっ……!」」」
全身紫色になったのが、どういう感情か分かりづらいけど、嫌悪感じゃないと思いたい。
遠慮せずに受け取って欲しい場合、どう言えば良いだろう……?
そうだ!
「集団の証として……」
「「っ……!」」
あっ! キイラが倒れた! なんで!?
上半身を起こして支えたら、目を覚ましたキイラが、僕の手を握って言った。
「わたし! 頑張る!」
「もちろん、あたしもよ!」
「ががが……がんば……るっる……!」
何故だろう? 受け取りながらの決意表明みたいな流れになってしまった……。
思ったより、オーグにとって「集団」の意味は重いのかな?
「あまり気負わないでね。いつもどおりがいいよ」
「「「は、はい!」」」
あれー? ますます緊張してしまったぞ……。
三人が落ち着くまで、野草でも見てようかな。
あ、これは、ヨモギだ。
ミゲルさんから教わったから知ってる。
後で少し分けて貰おう。
他のは、知らないものばかりだ。
ひょっとしたら、あの独特なスパイスは、これらの組み合わせなのかも。
あ、知らなかった……。
勾玉って横向きになるように、「ひばり結び」するのか……。
先に、紐の両端を結んで、その反対側を勾玉の穴に通して、元の方に潜らせるシンプルな結び方だ。
キアラは手が震えて、それがうまく出来ないらしい。
要らなかったかなと思ったら、「すっげぇ……! 嬉しすぎて目がチカチカする……」と呟いていた。
良かった……。
アナさんのおかげで、彼女たちとは良好な関係を築くことが出来た。
それだけに、僕が維持する努力をしなければ、アナさんの苦労が無駄になってしまう。
それだけは避けたい。
「どうかな……? に、似合う?」
「うん! 肌の色とも調和が取れてるし、鎖骨の美しさを強調する位置にしたのも良いね!」
あ! 今、分かった! 強く恥じらった時に、全身が紫色になるんだ!
だとしたら、強い怒りでもそう見えるかも知れない。
覚えておこう。
「柔らかい石だから、壊れやすいかも。いつでも作り直すから言ってね」
「うん!」
ついでに、光沢が無くなってきた時のために、メンテナンス方法を教えた。
少し濡らした柔らかい布に、滑石の粉を付けて擦るだけの簡単なものだ。
僕はトクサで粉を作ったけど、この村には、既に滑石の粉末があるらしい。
「採石場で、石工に会ったでしょ?」
「うん。小柄な人達だね」
この村では、その石工に、採石権の対価として石粉を納めさせてるそうだ。
それらを精製して釉薬を作り、陶磁器として完成させ、フィシニウスに輸出するのだとか。
殿様は面白いことを考え付くなあ……。
ルカさんに聞いた「川伝いに進むルート」も、恐らく水運のことだろうし。
セントーリスとの関係が悪化して、物流が滞ったアルトスを考えての事だろうな。
緩衝地帯を安定させ、水運を確立し、物流を確保して、利益まで出したら、領主のサリヴさんも文句は言いづらいはず。
それでも、オーグと和解しない理由があるとして、その原因が兄弟仲じゃないとすれば、鉱山かな?
それとも、別な問題がアルトスで発生してる……?
「……あれ? そう言えば、キアラが大人しい?」
「まあ……、そうなるでしょう……」
紐を長めにして、首から下げてる勾玉を眺めながら、少し後ろを歩いてたようだ。
光沢が気に入ったのかな? にしては呼吸が荒いような……。
ちょっと気になったので、横に並んで脇腹をつついてみた。
「ぴ!」
「ぴ……?」
大きな目が会った直後に、顔を真紫にして走って行ってしまった。
今のは、どういう感情だろう……?
「まあ……、そうなるでしょう……」
「えー? それってどういう……」
ん? 村の方が騒がしいぞ。
弓で武装した複数のオーガが走って行くのが見えた。
おぞましきカイラも見えたから、討伐班に何かあったのかも知れない。
「こういうのって、よくある?」
「いや、ない。良くない感じ」
不安顔のキイラは、狼狽えてたハーフ・オーガを捕まえて尋問するようだ。
息を切らしながら戻ってきたキアラが、「みんな中央広場に集まってた」と教えてくれた。
「なんか、遠征組がやられたらしいぞ……!」
「まず広場に行ってみましょう!」
武装オーガを避けながら、はぐれないように手を繋いで走った。
広場は、非戦闘員と捕虜で埋め尽くされてるようだ。
殿様の側近が、状況を説明してるらしい。
その奥にキイツさんの姿が見えた。
「あ! 叔父さんがいたわ!」
「行ってみる!?」
群衆の縁に沿って進み、回り込む位置に来たときには、キイツさんも僕達に気付いたようだ。
左右の幹部に声を掛けて道を作ってくれて、ようやく辿り着くことが出来た。
「良かった! 無事だったか!?」
「叔父さん! 何があったの?」
キイツさんの説明によれば、東の下流域に大型の猛獣が出たそうだ。
まだ距離はあるものの、遠征組を追って村に近付いてるとのこと。
僕も避難するかと思いきや、そうじゃないらしい。
護衛を付けて、アルトス手前まで連れて行ってくれるのだとか。
「済まねえなノボル……。せっかく姪っ子らと良い感じになったのに……」
「叔父さん! そんな……!」
キシラの悲痛な声が胸に刺さった。
なんとなく、出発を急がせる力が働いてる気がした。
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