解体技師、魔に堕ちる

ベルリン

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巣窟編

洞窟-2

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衣食住が欲しい。これほどまでにこの願いを思ったことはない。

洞窟を彷徨い出して10分、俺はやたらと広い洞窟をプカプカ浮かんでいた。
差し当たって欲しいのは安全な住処と安定した食糧。
そもそもソウルが何を食べるのか、腹は減るのか、休養が必要な体なのかは分かっていない。

ソウルは半分ぐらい思念体であるため素材が少なく解体屋に運ばれることも滅多にないのであまり情報がないのだ。

しかし10分ほど移動しても特に体が疲れるということは感じられない。意外と便利な体なのかもしれない。

俺がしなければいけないことはたくさんある。今は安全な場所、つまり逃げ場のある狭い場所を探している。それと並行して俺は魔力の使い方も練習していた。

俺が人間時代の頃は魔力は少ししかなかったため根本的に扱い方がわからないのだ。今はきっとソウルの本能で魔力を動かせているのだろう。

魔力を扱うにはどうしたらいいのか、それは《魔力感知》の技術スキルを磨くという方法がある。
通常、人間や魔物は元々備わっている本能的なものである能力アビリティと後天的に磨く力である技術スキルがある。

今俺が当然のように空中をプカプカ浮いているのはソウルの持っているいずれかの能力アビリティだろう。逆に今俺が懸命に周りの様子を魔力を使って探っているのは《魔力感知》の技術スキルを使っているからだ。
能力アビリティは種族的な特徴かもしくは天から授かった奇跡のようなもので俺の意思では成長させることができない。

だが技術スキルは使用すれば使用するほど洗礼されていく。
最弱の魔物である俺が生き残るためにはこの技術スキルを磨いて、いかに状況把握をするかにかかっているのだ。

《魔力感知》は俺のこの新しい身体と相性が良いのか10分ほど彷徨っている間にも進歩が見られた。

最初はぼやけた輪郭しか感知できなかったが今では、モノクロの輪郭が鮮明に見えるようになっている。

それにしても広い洞窟だ。天井は星のない夜の空のように高く暗い。数百メートルはありそうだ。横もやたら滅多らに広くでこぼこした地形が多いが不思議なほどに生物の気配がない。この洞窟に生息する魔物は軒並み危険なので出会いたくは無いが。


見かけるものと言えば地面に生えている苔らしきものとある花のシルエットだけだ。


、アロワナ洞窟の中層から深層にしか生えない銀色の花。銀の花弁に黄色い鈴のような雄蕊が付いている。
もっともこの体ではその美しさまでは分からないが。

加工すると特殊な染料になるほか幸運を運ぶ花としても知られている。街の素材屋で高値で取引されているようだ。

本当ならいくつか摘んで持ってけば1週間ぐらいは贅沢できるのになぁ。

俺は浮かぶ自分の体を花に近づけて漂う。
匂いは…嗅げないか。鼻がないしな。そこらへんも《魔力感知》でどうにかなるのだろうか?

うーん、これ喰えるのか??

ソウルが肉食なのか草食なのかは分からない。そもそも飯も食わなさそうな体だ。てか口どこだよ。

口…食べるために必要な重要な器官が見当たらない。《魔力感知》を使って自身の身体を調べてみる。

おーこれは綺麗な流線型。どこからどう見ても浮かぶ火の玉だ。
ふと俺は魔力を扱う者のもう一つの基礎的な技術スキルを思い出した。
《魔力操作》、コイツがあった。人間の頃は上手く使えなかったこの技術スキルは体内の魔力を練ったり、巡らせたりできる。ちなみに体外の魔力の流れを掴んで周りの様子を探るのが《魔力感知》だ。

俺は体内にある魔力を練ってみる。それはきっとこの魔物の本能的なもので、魔力を練ること自体はすんなりできた。
練った魔力を全身に流し込んで、自分の体の構造を詳しく探知しようとした。

驚いた。
俺の体の中に謎の空洞があるのだ。

俺の体のは火の外殻をもつ球殻のようなものなのだ。
この空洞はなんだろうか?
胃のようなものにも見えるしただの空洞かもしれない。

さらに魔力を操作して自身の体の輪郭を辿る。

口…口…どこだ?本当にあるのか…?って!?なんだこれ。

俺が見つけたのは不自然な身体の切れ込み。皮を裁断するときに書く下書きの線みたいに、綺麗な直線が体を走っている。

これはもしや?

俺は《魔力操作》を使いその切れ込みに魔力を送る。

開け、開け開け!くそ!重い!

2分ほど魔力を操作しているとやがて微かに動いた気がした。

突然、非常に重いその裂け目は、ギチギチと音を二つに裂けた。

体内に風を感じる。湿った風だ。

俺はその裂け目を銀泥花に近づけ、バチリと閉じた。

突然身体中に刺激と苦味を感じた。

うお!びっくりした。

やっぱりそうだ。
この裂け目は人間で言う口だ。そしてこの空洞はものを溜め込める胃みたいなものだろう。

こんな不定形な魔物にも内臓はあるのか。勝手に感動を覚える俺であった。
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