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巣窟編
住居-1
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家が欲しい。
心が休まる場所が欲しいのだ。数歩出歩けば血魔狼のような化け物に出会うこの洞窟じゃ、今の俺は生きていくことができない。たまたま俺が魔物より確かな思考力があって、ここが広い洞窟だったから血魔狼から逃げ切れた訳で、現実問題ずっと生きていくのは厳しいだろう。
血魔狼の骨を取り込んで得たものは《魔力感知》の成長だけではない。
身体が若干変化していた。《魔力操作》で体を調べていると、どうやら火の玉のような姿から変貌を遂げていることがわかった。だいぶ身体が柔らかくなっていたのだ。まるでスライムのように体を縮めたり伸ばしたりできるようになっていた。
火の玉というより、不定形な白い火の塊だ。
それによって身体の形を変えることができるようだ。血魔狼の骨を取り組んだ影響なのか、俺は一瞬だけ獣のような四足歩行になることができる。
使い道は特にはない。
強いて言えば、夜道で初見の人をビビらせるぐらいの効能だ。
いつか外に出てみたいとは思っているがとても今は考えられない。
着実に転生直後よりは魔物として生きる術を身につけているがまだ全然足りない。
食えば強くなるとわかったので手っ取り早く色んなものを取り込んでみたい。だがその際、血魔狼の時のように意識を手放す可能性がある。つまり食事は安全な場所で行う必要があるのだ。
そのために活動の拠点が欲しいのだ。もっと平たく言えば安定した寝床というものが欲しい。
さて、うだうだ思考するのはここまでだ。俺はとりあえず洞窟のマッピングから始めようとした。
マッピングの方法はこうだ。目印となる地点を中心に放射状に少しずつ探索をしていってそれを記憶していくというものだ。
なんというアナログシステム。
仕方がないじゃないか。俺には地図を書く紙も、ペンを持つ手も存在しない。
あるのは人間の頃からの意識のみ。
この体のどこに記憶する脳みそがあるのかは知らないが、記憶力を頼りにデータ取りをすることにした。
とりあえず…血魔狼に追い込まれた窪地の中心を目印としよう。ここから放射状に地形と植生、魔物のテリトリーを調べてみよう。
方角は何となくだがどちらが北かなどがわかるようだ。これも魔物の本能か。とりあえず北側から探索を開始する。
北側は水脈が洞窟を横断するように流れており、ところどころ苔や銀泥花が生えている。数十mはある天井や地面には淡い光を放つ岩がいくつもある。空気中の魔力を吸収し光に変える石、《照石》だ。色を鮮明に見えるようになってやっと、これらの石が光源になっていることに気付いた。
地上で見たことのある照石とは大きさも明かりの質も違う。高品質なものと言えるだろう。
照石の近くには小さい羽虫や植物が集まって生えている様に見える。
俺はゆっくりと水脈まで移動する。洞窟内に流れる巨大な河は、透明度が高く底の方が真っ青で非常に深いことが見受けられた。
30秒ぐらい見渡したところ「海蛇龍」や見たこともない巨大な魚の影を見かけたので二度と近寄らないことにした。
人間時代からずっと思っていたが、冒険者や勇者は何故こんな化け物と戦闘して勝利ができるのだろう。転生前より強い魔物の体とは言え俺は血魔狼に正面からは太刀打ちできなかった。それを魔法や剣技だけで粉砕していく冒険者は同じ人間とは思えない。
水脈から引き返して元の窪地に戻ってきた。北側は、水辺に近寄らなければ比較的安全だというのが俺の評価だ。
次に東側を探索する。東側は俺が血魔狼と戦闘を繰り広げたエリアで、天井から鍾乳石が垂れていたり、ジグザグした地形が特徴だ。北の水脈につながる小川が一本流れている。俺が溺れかけた場所だ。
あたりをよーく見ると霧鼠やムカシトンボなどが視界に入る。
霧鼠は体長1mほどの巨大なネズミで、その巨体さのくせにやたら気配を消すのが上手い魔物だ。その名の通り、魔術で霧をつくって逃亡する癖がある。
俺の知っている魔物の序列では、魂とタメを張るぐらい弱い魔物とされている。
それでも一般人程度なら食い殺せるが。
ムカシトンボはたくさん種類があるので今いるやつが何に該当するかはわからない。いずれも20cm前後とやたら大きい。
ただムカシトンボをすり潰して抽出したエキスは漢方、滋養薬として市場に出回ることがある。
パッと見たところ俺が非常に警戒すべき生物はいなさそうだった。しかし、血魔狼がうろついている可能性があるのが東側のマイナスポイントだ。
お次は南側。テンポよくいこう。
南側は次第に高度が上がっている様で、もしかしたら地上へ繋がっているのかも知れない。南側は照石が少なく、その影響か植物も少ない。南側は天井が次第に低く、通路も狭まっている様で俺からしたら退路をたたれるような構造になっていた。
パッと見、魔物の姿は見えないことは評価ポイントか。
最後に西側。
西側は洞窟内に巨大な渓谷があるようで、向こう岸はどれだけ離れているかはわからなかった。崖は非常に鋭利な谷になっており、少し見ただけで名前も知らない魔物がたくさん見受けられた。
今までで一番の地獄だ。
谷の端っこで巨大なムカデのような魔物が血魔狼を丸めて喰っているようだ。血魔狼が暴れ出し音の爆弾を放つ。それに巻き込まれるようにムカデと血魔狼がいがみ合ったまま谷の底へ落ちていく。
すると…バクン!
谷の底から何か棒状のものが出てきて彼らを飲み込んだ。
極太の茶色い体に、この世のものとは思えないほどぎっしり詰まった歯。あの魔物は俺も知っている。
地中の王。地震の原因。様々な異名を持つあの魔物は…
「地底蠕虫」
ご近所さんに怪物がいるようだった。
心が休まる場所が欲しいのだ。数歩出歩けば血魔狼のような化け物に出会うこの洞窟じゃ、今の俺は生きていくことができない。たまたま俺が魔物より確かな思考力があって、ここが広い洞窟だったから血魔狼から逃げ切れた訳で、現実問題ずっと生きていくのは厳しいだろう。
血魔狼の骨を取り込んで得たものは《魔力感知》の成長だけではない。
身体が若干変化していた。《魔力操作》で体を調べていると、どうやら火の玉のような姿から変貌を遂げていることがわかった。だいぶ身体が柔らかくなっていたのだ。まるでスライムのように体を縮めたり伸ばしたりできるようになっていた。
火の玉というより、不定形な白い火の塊だ。
それによって身体の形を変えることができるようだ。血魔狼の骨を取り組んだ影響なのか、俺は一瞬だけ獣のような四足歩行になることができる。
使い道は特にはない。
強いて言えば、夜道で初見の人をビビらせるぐらいの効能だ。
いつか外に出てみたいとは思っているがとても今は考えられない。
着実に転生直後よりは魔物として生きる術を身につけているがまだ全然足りない。
食えば強くなるとわかったので手っ取り早く色んなものを取り込んでみたい。だがその際、血魔狼の時のように意識を手放す可能性がある。つまり食事は安全な場所で行う必要があるのだ。
そのために活動の拠点が欲しいのだ。もっと平たく言えば安定した寝床というものが欲しい。
さて、うだうだ思考するのはここまでだ。俺はとりあえず洞窟のマッピングから始めようとした。
マッピングの方法はこうだ。目印となる地点を中心に放射状に少しずつ探索をしていってそれを記憶していくというものだ。
なんというアナログシステム。
仕方がないじゃないか。俺には地図を書く紙も、ペンを持つ手も存在しない。
あるのは人間の頃からの意識のみ。
この体のどこに記憶する脳みそがあるのかは知らないが、記憶力を頼りにデータ取りをすることにした。
とりあえず…血魔狼に追い込まれた窪地の中心を目印としよう。ここから放射状に地形と植生、魔物のテリトリーを調べてみよう。
方角は何となくだがどちらが北かなどがわかるようだ。これも魔物の本能か。とりあえず北側から探索を開始する。
北側は水脈が洞窟を横断するように流れており、ところどころ苔や銀泥花が生えている。数十mはある天井や地面には淡い光を放つ岩がいくつもある。空気中の魔力を吸収し光に変える石、《照石》だ。色を鮮明に見えるようになってやっと、これらの石が光源になっていることに気付いた。
地上で見たことのある照石とは大きさも明かりの質も違う。高品質なものと言えるだろう。
照石の近くには小さい羽虫や植物が集まって生えている様に見える。
俺はゆっくりと水脈まで移動する。洞窟内に流れる巨大な河は、透明度が高く底の方が真っ青で非常に深いことが見受けられた。
30秒ぐらい見渡したところ「海蛇龍」や見たこともない巨大な魚の影を見かけたので二度と近寄らないことにした。
人間時代からずっと思っていたが、冒険者や勇者は何故こんな化け物と戦闘して勝利ができるのだろう。転生前より強い魔物の体とは言え俺は血魔狼に正面からは太刀打ちできなかった。それを魔法や剣技だけで粉砕していく冒険者は同じ人間とは思えない。
水脈から引き返して元の窪地に戻ってきた。北側は、水辺に近寄らなければ比較的安全だというのが俺の評価だ。
次に東側を探索する。東側は俺が血魔狼と戦闘を繰り広げたエリアで、天井から鍾乳石が垂れていたり、ジグザグした地形が特徴だ。北の水脈につながる小川が一本流れている。俺が溺れかけた場所だ。
あたりをよーく見ると霧鼠やムカシトンボなどが視界に入る。
霧鼠は体長1mほどの巨大なネズミで、その巨体さのくせにやたら気配を消すのが上手い魔物だ。その名の通り、魔術で霧をつくって逃亡する癖がある。
俺の知っている魔物の序列では、魂とタメを張るぐらい弱い魔物とされている。
それでも一般人程度なら食い殺せるが。
ムカシトンボはたくさん種類があるので今いるやつが何に該当するかはわからない。いずれも20cm前後とやたら大きい。
ただムカシトンボをすり潰して抽出したエキスは漢方、滋養薬として市場に出回ることがある。
パッと見たところ俺が非常に警戒すべき生物はいなさそうだった。しかし、血魔狼がうろついている可能性があるのが東側のマイナスポイントだ。
お次は南側。テンポよくいこう。
南側は次第に高度が上がっている様で、もしかしたら地上へ繋がっているのかも知れない。南側は照石が少なく、その影響か植物も少ない。南側は天井が次第に低く、通路も狭まっている様で俺からしたら退路をたたれるような構造になっていた。
パッと見、魔物の姿は見えないことは評価ポイントか。
最後に西側。
西側は洞窟内に巨大な渓谷があるようで、向こう岸はどれだけ離れているかはわからなかった。崖は非常に鋭利な谷になっており、少し見ただけで名前も知らない魔物がたくさん見受けられた。
今までで一番の地獄だ。
谷の端っこで巨大なムカデのような魔物が血魔狼を丸めて喰っているようだ。血魔狼が暴れ出し音の爆弾を放つ。それに巻き込まれるようにムカデと血魔狼がいがみ合ったまま谷の底へ落ちていく。
すると…バクン!
谷の底から何か棒状のものが出てきて彼らを飲み込んだ。
極太の茶色い体に、この世のものとは思えないほどぎっしり詰まった歯。あの魔物は俺も知っている。
地中の王。地震の原因。様々な異名を持つあの魔物は…
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