世界に1人だけの魔物学者

ベルリン

文字の大きさ
19 / 26
第3章 竜と迷宮

海霊馬

しおりを挟む

「そういえばさっきの魔術って古代魔術か?」
俺はナタリアへ問いかける。

さっきの魔術というのは古代百足アースロプレウラに追いかけられていた時にナタリアが使った魔術だ。

「あー、あれは炎塊イグニスという古代魔術を使用しようとしたんですが、やっぱりまだ習得できてないんですよね。」

「通りで魔力が火の性質を帯びているんだな。」

「逆に火の性質をおびちゃって困ったことばかりで…」

「困ったこと?」

風の渦ボルテックスが温風を出すようになって余分な魔力が吸い取られちゃうんです!」

なるほど。ちょっと面白い。

「そういえばローランさんって、火の魔術である油の生成クリエイト・タールと光の魔術である閃光フラッシュを使えるのに全然魔力が混じってないですね。どうしてですか?」

ナタリアが首を傾げてくる。

「…俺は魔力が少ないから魔力が属性を持ってはいない。他の属性に染まり切れるほど力がないんだ。よくいえば無属性の魔力。闇の魔術とその派生以外は、大体使える。威力はお粗末なモノだがな」

「へぇっ、すごいんですね!」

「ものは言いようだ。」

その後、俺たちは時折会話をしながら地底湖の淵に沿うようにして歩いていた。

しばらく経って水面からピチャピチャと水が滴る音が鳴った。
海霊馬ケルピーだ。俺は手を出し制止の合図を送る。


ナタリアとペンタクールは武器を構えて立っている。俺はまだ剣を抜かなかった。

海霊馬ケルピーは狡猾な魔物で自分より非力と感じたモノしか襲わない。自分が敵わないと知ると目にも止まらぬ速さで湖の奥へ消えて行く。まずは俺たちが弱いと思わせるのが大切だ。」

水面に波紋が現れる。波紋はどんどんと大きくなって数も増えて行くやがて、水泡がその場に現れ青白い馬の頭が出てきた。前足は有蹄類のソレだが後ろ足はなく大きな尾鰭がある。人魚の馬版と言えば良いのだろうか。

どっからどう見ても馬なのに何故かエラがついているこの生物は、弱い魔物や人間を尾鰭や前足で絡め取り溺死させる。

俺は不用心にも水源へとたとた歩いて行く。海霊馬ケルピーも大人しく、無害そうに俺の方へ寄ってきた。

海霊馬ケルピーの一番楽な刈り方はこうだ。

俺はやがてその馬を撫でられるような位置まで行く。
数秒後、大きな水飛沫と共に巨大な尾鰭が俺に巻き付いてくる。海霊馬ケルピーは勝ち誇った下品な笑みを浮かべ俺を水中に引き込もうとした。

俺はその海霊馬ケルピーの油断を見逃さない。剣を抜き、ただ一点を狙って剣を突く。

奴は驚き後ろへ避けようとしたがもう遅い。俺が何年この狩り方をしてると思っているんだ。俺の剣は首筋からスッと入り海霊馬ケルピーの脳をしたから貫通させた。


「2人とも、手伝ってくれ!」

バランスを崩し水の中へ沈もうとする海霊馬ケルピーを2人に助力してもらい、陸地に引き上げることに成功した。

「それで海霊馬ケルピーを取って何するんですか?」
ナタリアが聞いてくる。ペンタクールもそれに同調するように頷いた。

「ここの湖は光の魔力を帯びている。そこで育った海霊馬ケルピーもその力を受け継いでいてな。取り分け血にその力が宿っている。彼の力は再生リジェネーターこの血を新鮮なまま殺菌して上手く調合すると高品質の回復ポーションができるんだ。ナタリアも使ったことあるだろ。」

「あぁ…あの苦い奴!海霊馬ケルピーの血が入ってたんだ…通りで。てか、普通魔物の血をポーションに使いませんよ!」

「そうなのか?」

俺の質問に今度はペンタクールが代わりに答えてくれた。

「…私の知る限りポーション調合は、白火草と言う魔力を抽出する草を混ぜて使います。その白火草と言うのは動物性の素材に対しては全く効果がないのですよ。だから魔物の素材は基本的に使用されません。ローラン殿は何を使って魔力を抽出していたのですか?」

小竜ドレイクの糞。てか通りで…植物系の魔力が全然抽出されないわけだ。植物と動物で使う抽出剤が違うのか。

「企業秘密だ。」

一般的な人間は飲み物に血と糞が入っていたら嫌がると言うことを俺は知っている。これも優しさである。

「血だけは新鮮なものが欲しいからここで摂る。残りは魔法の袋へ入れて持って帰る。」

そう言って俺はカバンから針とチューブ、瓶の採血セットを取り出す。瓶には昔ルナに防腐の術を施してもらったので、保存が効くのだ。

俺は首筋に針を当て血を採取する。その血は赤黒いがとてもサラサラなものだった。

「よしっこれで十分だ。引き上げるぞ。」

瓶3本分の血を収穫し、死骸は袋へ入れて俺はそう告げる。

「…夕方前には地上へ戻れるだろう。古代百足アースロプレウラが居なければ、だが。」

結局俺たちは、行きとは違うルートを使って想定より1時間遅く地上へ着いた。
特に何事もアクシデントがなくて幸いである。
強いて言えば数体のスケルトンとでくわしたが、動きにトロイ骨など取るに足りなかった。

俺は地上でナタリア達へ礼を言い俺たちの貸し借りはゼロになる。

その夜彼女達と共に酒場で飲んで居たところ、ギルド職員のアストラに声をかけられた。

明日組合ギルドの応接室にくるようにとの事だ。

すごく嫌な予感がする。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

裏切り者達に復讐を…S級ハンターによる最恐育成計画

みっちゃん
ファンタジー
100年前、異世界の扉が開き、ハンターと呼ばれる者達が魔物達と戦う近未来日本 そんな世界で暮らすS級ハンターの 真田優斗(さなだゆうと)は異世界の地にて、仲間に裏切られ、見捨てられた 少女の名はE級ハンターの"ハルナ•ネネ"を拾う。 昔の自分と重なった真田優斗はハルナ•ネネを拾って彼女に問いかける。 「俺達のギルドに入りませんか?」 この物語は最弱のE級が最強のS級になり、裏切った者達に復讐物語である。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...