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4話
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ハッと正気に戻った俺たちは同時に顔を赤くする。
紛れもなく本音と本音のぶつかり合いだったが、なかなか恥ずかしいことを口走った自覚が互いにあったからだ。
「と、取り敢えず今日の所は解散にしないか? 俺も色々整理したい。言うって言ったのに悪いな……」
さすがに色々衝撃なことがありすぎて頭が回らない。
こんな状態で話しても互いに墓穴を掘るだけだ、とも思うため、そんな提案をする。
「私もそれでいいわよ。取り敢えず……布団にくるまりたい……」
「布団?」
「な、な、何でもないわ。気にしないで」
顔を赤くして、慌てたようにする白海。
とりあえず気にしないことにした。
「あ、あぁ、じゃあ後日に」
「ええ。そうしましょう」
布団にくるまって何をするのかは知らないが、その返答は予想外だった。
白海は話を聞きたがっていたし、渋ると思っていたのだが、すんなり納得してもらえた。
挨拶もそこそこに、俺たちはふらふらしながら家路についた。
☆☆☆
少々、いや、少々所じゃない特殊な家系にいる俺だが、家は実に普通だ。
二階建てのコンクリートの家で、赤い三角屋根が目印だ。
……本当はもっと豪邸を建てられるくらいのお金は存在する。
実家から大量の支援金が贈られてくるからだ。……まあそれだけじゃないが。
だが、俺たちはその金にはほとんど手をつけていない。
理由は単純。
怖い。
ただそれだけだ。
最初にそのお金が振り込まれたとき俺は生まれていなかったのだが、お金を見て両親はこう思った。
え、これ闇金じゃね? 使ったらだめっしょ、これ。
そう思った二人はこのお金を使わないことに決め、存在は闇に葬られた。
闇金だけに。
……ははっ、全然面白くない冗談だぜ。
とにかくそんなわけで、俺の家は普通である。
……前言撤回。
母は大女優。父は名医で、全然普通じゃなかった。
両親は俺に気を遣って、わざわざ普通の家を購入した。
思春期の子供にとって、一人だけ何かが違うというのは悩みの種になるだろう。
そんな両親の配慮が俺にはしっかりと伝わっている。
「ただいまー」
家のドアの鍵を開け、誰もいない虚空に向かって挨拶をする。
暗い家の電気をつける。
しっかりと手洗いうがいをしたあとに、一階の、玄関近くのドアから行くことのできるリビングへと行く。
ふと、テーブルを見ると、一枚の紙が置いてあった。
「なんだ?」
と拾って見る。
そこには息子へ、から始まっている手紙だった。
『息子へ、
はーい! 愛しのママンだよ! 学校から帰ってくる頃には会えるかなーって思ってたら、帰ってこなかったよ! どこで道草くってるのさ、一緒に寄り道できる友達いないくせに。うえええん、会いたいよぉぉ。パパも仕事でしばらく帰ってこれないって。次に帰れるのは正月の三ヶ日の間には帰ってくるからねー! いい子にしてるんだぞー
愛しのママンより』
「腹立つ……」
一瞬、手紙を引き裂いてやろうかと思ったが、思いとどまる。
友達いるしっ!
書いてあったことは心配と連絡であった。
文面はうざいが、親の愛情を感じる。
実質今、俺は一人暮らしみたいなものだ。
親が……母と父が揃って帰ってくるのは、年五回ほど。
あとは荷物を取るときなど。
それ以外は仕事で忙しいため帰ってこれない。
普通の子供は反発するのかもしれないだろうが、俺は両親の仕事にかける情熱、努力、大変さを知っている。
親の養いで満足のいく生活をしている俺は、不満は無いし、あったとしても言う資格は無い。
俺はご飯を食べ、風呂に入り、することをし、自室に戻り考える。
勿論、白海のことだ。
「うーん……俺は白海に会っていたのか? それとも一方的に知っているのか……情報が少ないな」
俺は記憶に有る限りの人を思い浮かべるが、白海に該当する人物は見つけることができない。
ヒントが無い状況の今では、八方塞がりだ。
「せめて、昔の写真があればなぁ……あ、そうだ! アルバム見てみるか」
もしかしたら幼稚園、小学校のアルバムにヒントがあるかも、と思った俺は家のアルバムが保管してある襖を開け、取り出した。
しばらく見ていなかったため、埃が被っている。
俺はそれを、ふぅっと息でほろい、懐かしい気持ちに浸りながら、まずは幼稚園のアルバムを捲る。
「ははっ、懐かしいなぁ……お、この子と小学校まで一緒だったなぁ……確か結構仲良かったはず」
俺はある一人の女の子のページで手を止める。
名前は『美原 花』。
すごく優しい、でも周りを気にするタイプでいつもオドオドしていたイメージがあった。
「そういえば中三のときに会ったなぁ……うーん、どこか白海に似ている気もするけど、髪型違うし、性格違ったし、あんま顔見てなかったからなぁ。ま、そんな偶然は無いな。第一、口調が違う。」
俺は気を取り直してアルバムを捲る。
しかし、手掛かりは一切見つけることができなかった。
小学生、中学生のアルバムを広げても結果は同じ。
ヒントが得られなかったことに落胆する俺。
とりあえず、俺は寝ることにした。
このとき俺は想像もしていなかった。
美原 花。
彼女が白海だったということを。
また、彼は知らない。
この幼稚園での出来事が全ての始まりだったことも。
紛れもなく本音と本音のぶつかり合いだったが、なかなか恥ずかしいことを口走った自覚が互いにあったからだ。
「と、取り敢えず今日の所は解散にしないか? 俺も色々整理したい。言うって言ったのに悪いな……」
さすがに色々衝撃なことがありすぎて頭が回らない。
こんな状態で話しても互いに墓穴を掘るだけだ、とも思うため、そんな提案をする。
「私もそれでいいわよ。取り敢えず……布団にくるまりたい……」
「布団?」
「な、な、何でもないわ。気にしないで」
顔を赤くして、慌てたようにする白海。
とりあえず気にしないことにした。
「あ、あぁ、じゃあ後日に」
「ええ。そうしましょう」
布団にくるまって何をするのかは知らないが、その返答は予想外だった。
白海は話を聞きたがっていたし、渋ると思っていたのだが、すんなり納得してもらえた。
挨拶もそこそこに、俺たちはふらふらしながら家路についた。
☆☆☆
少々、いや、少々所じゃない特殊な家系にいる俺だが、家は実に普通だ。
二階建てのコンクリートの家で、赤い三角屋根が目印だ。
……本当はもっと豪邸を建てられるくらいのお金は存在する。
実家から大量の支援金が贈られてくるからだ。……まあそれだけじゃないが。
だが、俺たちはその金にはほとんど手をつけていない。
理由は単純。
怖い。
ただそれだけだ。
最初にそのお金が振り込まれたとき俺は生まれていなかったのだが、お金を見て両親はこう思った。
え、これ闇金じゃね? 使ったらだめっしょ、これ。
そう思った二人はこのお金を使わないことに決め、存在は闇に葬られた。
闇金だけに。
……ははっ、全然面白くない冗談だぜ。
とにかくそんなわけで、俺の家は普通である。
……前言撤回。
母は大女優。父は名医で、全然普通じゃなかった。
両親は俺に気を遣って、わざわざ普通の家を購入した。
思春期の子供にとって、一人だけ何かが違うというのは悩みの種になるだろう。
そんな両親の配慮が俺にはしっかりと伝わっている。
「ただいまー」
家のドアの鍵を開け、誰もいない虚空に向かって挨拶をする。
暗い家の電気をつける。
しっかりと手洗いうがいをしたあとに、一階の、玄関近くのドアから行くことのできるリビングへと行く。
ふと、テーブルを見ると、一枚の紙が置いてあった。
「なんだ?」
と拾って見る。
そこには息子へ、から始まっている手紙だった。
『息子へ、
はーい! 愛しのママンだよ! 学校から帰ってくる頃には会えるかなーって思ってたら、帰ってこなかったよ! どこで道草くってるのさ、一緒に寄り道できる友達いないくせに。うえええん、会いたいよぉぉ。パパも仕事でしばらく帰ってこれないって。次に帰れるのは正月の三ヶ日の間には帰ってくるからねー! いい子にしてるんだぞー
愛しのママンより』
「腹立つ……」
一瞬、手紙を引き裂いてやろうかと思ったが、思いとどまる。
友達いるしっ!
書いてあったことは心配と連絡であった。
文面はうざいが、親の愛情を感じる。
実質今、俺は一人暮らしみたいなものだ。
親が……母と父が揃って帰ってくるのは、年五回ほど。
あとは荷物を取るときなど。
それ以外は仕事で忙しいため帰ってこれない。
普通の子供は反発するのかもしれないだろうが、俺は両親の仕事にかける情熱、努力、大変さを知っている。
親の養いで満足のいく生活をしている俺は、不満は無いし、あったとしても言う資格は無い。
俺はご飯を食べ、風呂に入り、することをし、自室に戻り考える。
勿論、白海のことだ。
「うーん……俺は白海に会っていたのか? それとも一方的に知っているのか……情報が少ないな」
俺は記憶に有る限りの人を思い浮かべるが、白海に該当する人物は見つけることができない。
ヒントが無い状況の今では、八方塞がりだ。
「せめて、昔の写真があればなぁ……あ、そうだ! アルバム見てみるか」
もしかしたら幼稚園、小学校のアルバムにヒントがあるかも、と思った俺は家のアルバムが保管してある襖を開け、取り出した。
しばらく見ていなかったため、埃が被っている。
俺はそれを、ふぅっと息でほろい、懐かしい気持ちに浸りながら、まずは幼稚園のアルバムを捲る。
「ははっ、懐かしいなぁ……お、この子と小学校まで一緒だったなぁ……確か結構仲良かったはず」
俺はある一人の女の子のページで手を止める。
名前は『美原 花』。
すごく優しい、でも周りを気にするタイプでいつもオドオドしていたイメージがあった。
「そういえば中三のときに会ったなぁ……うーん、どこか白海に似ている気もするけど、髪型違うし、性格違ったし、あんま顔見てなかったからなぁ。ま、そんな偶然は無いな。第一、口調が違う。」
俺は気を取り直してアルバムを捲る。
しかし、手掛かりは一切見つけることができなかった。
小学生、中学生のアルバムを広げても結果は同じ。
ヒントが得られなかったことに落胆する俺。
とりあえず、俺は寝ることにした。
このとき俺は想像もしていなかった。
美原 花。
彼女が白海だったということを。
また、彼は知らない。
この幼稚園での出来事が全ての始まりだったことも。
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