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47話

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 「えと、駅でショッピング、だっけ?」

 あの話題を続けると、お互い無言が続くことは容易に察せれるので、暗黙の了解的に話題に出さない俺たち。
 なので、とりあえず予定の確認という、初歩的な話題を出した。

 「そう! 雑貨見たくてさ。いいかな?」

 「もちろん、いいよ」

 それにしても、雑貨かあ……さすが日夏。
 女の子らしいな……。
 いや、日夏は女の子の権化みたいな感じだけどさ。

 「やった! じゃあ行こっか」
 
 俺が肯定したことに喜ぶ日夏。

 動物園から、駅まで地下鉄に乗る俺たち。
 ゴウゴウという音と、速さが何とも言えない感じだが、俺は好きだ。

 というか、速い乗り物全般が好きなのだが。
 
 法定速度を遵守している車やバスなどは、自転車で爆速すれば抜かせるだろう?

 え? 無理? まじで? 俺、一回やったことあるんだけど……。

 ま、まあ、そんなわけで人体で出せないスピードを法の範囲内でできる、電車とかが好きなのだ。

 「さて、到着と」

 「迷いやすいから気を付けないとね」

 「そうだな」

 札幌駅は4つのフロアに分かれている。

 それらは一般的に、『アリア』『パフェオ』『エステ』『ステイランプレイス』と呼ばれている。

 それぞれのフロアで色々な店があり、飽きない構造になっている。 

 「どのフロアに行くんだ?」

 「んとね、まずステイランプレイスの3階かな」

 3階ってことは、雑貨から見ていくらしい。
 俺は駅には来ることが多いため、だいたいのフロアにあるものは覚えている。
 まあ、一人で来るんだけどね!

 そして、日夏と並んで歩く。

 あまり人が密集していないからか、動物園が家族連れだったからなのか、気が付かなかったが、嫉妬の目や、ボソボソと恨みの声が聞こえる。

 「まあ、こんなかわいい女性と歩いてたらそうなるよな」

 「え!?」

 隣で日夏が顔を朱くして驚く。
 え、まさか声に出てた……?
 完全に心の声のつもりだったのに……。

 「私かわいい?」

 どこか、期待するような声色で聞いてくる。
 かわいいと言われて腹立つ人はいないだろうから、ハッキリ聞きたいのだろうか。

 だが、俺がハッキリ褒めることに意義はあるのだろうか……。
 まあでも、本当のことを言ったまでだし、さらりと同じことを言うだけだ。

 「あぁ、かっ、かわいいよ」

 なぜだぁ! ちょっと言葉が詰まっちまった……。
 意外にかわいいって言うのはハードル高いみたいだな、うん。

 「ありがと! ふふふっ」 

 俺がハッキリ言ったことが項を成してか、ニコニコと笑い、機嫌がさらに良くなる日夏。
 口元がだいぶ、緩んでいる。

 そんな笑顔で微笑んでくれるなら、頑張って言った甲斐があるというものだな。


 そんなアクシデントはありながらも、俺たちは目的のフロアに到着した。

 主に雑貨類の店が多く、だいたいが女性客だ。そうというのも、かわいい系の商品が多いからだろう。
 一人で行くのがハードル高すぎるため、俺の未踏破フロアの一つだ。
 例外として、カップルがいるが、まあ友達同士でも行くだろう。きっと。おそらく。
 そう、信じたい。

 とりあえず一番近い店に入る。

 なかなか、種類が多い。
 何かの置物や、ぬいぐるみ、アクセサリーなどがある。
 
 「わぁ、かわいいのが一杯ある!」

 その姿のあなたの方がかわいいですよ、と言ってやりたい。
 様々なものに興味を示す日夏は、今時の女子高生らしく、キャピキャピしている。
 言い方古いかな。

 俺はそんな日夏を少し、微笑ましい気持ちで見つめる。

 「ご、ごめんね。一人で盛り上がっちゃって」

 じっと見つめる俺を退屈そうだと思ったのだろうか。
 申し訳なさそうに謝り、しゅんとする。

 「いや、俺は楽しそうにしている日夏を見てるだけで満足だから」

 「何故に親目線!?」

 ツッコミを入れてくる日夏。
 えぇ? そうかなぁ。

 俺はただ楽しそうにしている姿だけで満足……って確かに親だわ。

 「いや、でも、本当だよ。人が楽しそうにしてると自分も楽しくなるし」

 それに日夏は、ほへー、と感心している。
 どうしたんだ?

 「なかなか、達観してるなぁ。高校生でその考え方できる人はすごいと思うよ」

 「そうなのか?」

 別に珍しいことでもないと思うんだが。
 すると日夏は、いやいや、と手を振って否定する。

 「普通そのくらいの年齢だと、自分優先だと思うよ。自分が楽しくないと、面白くない気分になるし、あまりに他の人が楽しんでると蚊帳の外にいるような気分になるからね」

 確かにイメージ的にはそうなのかもしれないな。
 でも、やっぱり自分よりは人が楽しい方がいいと思うな。

 「なるほどなぁ……でもそのくらいの年齢って日夏が言うのか」

 俺は、ははっ、と笑い言った。

 「あ、確かに」

 日夏も笑う。
 俺たちは二人で少しの間笑っていた。


 
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