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四章
すてる選択
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そんな思いが交錯する中、月夜はなんとなく理解していた。今まで自分に向いていた両親の関心が妹へと移った。それを暁未がうらやむのも無理はないということを。
これまでずっと、月夜が希ってきたものなのだから。
しかし、月夜にはどうすべきかわからなかった。ただ、あの家を出ていくまでのわずかな時間だけでも、家族から愛されたいと願ってしまった。
「私がおかしいのかしら? ずっと酷い思いをしてきたのに、お父さまやお母さまが声をかけてくれることが、嬉しくて……」
「おかしくない。子なら親の愛情を求めるのは当然のこと。今までそれを受けることができなかった。理由はどうあれ、それが叶ったことで君の欲求が満たされているんだ」
縁樹のその言葉に、月夜は目頭が熱くなった。唇をきゅっと結び、安堵したように目をつぶる。
額から滴り落ちる雨の雫に涙が混じって消えていった。
縁樹は冷静に穏やかな口調で話す。しかし、その表情は次第に険しくなった。
「君はこれから自分の足で立たなければならない。そのために、捨てる選択もある」
月夜の心の迷いを打ち消すような言葉だ。
今さら家族の愛情を求めても、それが偽りのままならただ虚しいだけ。月夜にはそれもわかっている。だからこそ、母の優しい言葉に心が冷えていくのだ。
月夜は黙って拳をぎゅっと握りしめた。
次第に小雨になっていき、やがて止んだ。雲の切れ間から欠けた月が現れたり隠れたりしている。
あたりは不気味なほどの静けさに包まれていた。
暁未は諦めてしまったのだろうかと月夜は思った。しかし、この状態の暁未があの家に帰っても今までのように過ごすことはできないだろう。
自分はどうすればいいのか、月夜にはまだわからない。
「どうすればお姉さまを元に戻せるの?」
「それは難しい」
「え?」
「彼女は君より強い妖力を手に入れた。人の姿を保つのも精一杯なはずだ」
「そんな、どうして……」
混乱する月夜に縁樹は容赦なく告げる。
「人間になりたい君と、そうでない彼女との違いだよ。君も香月さんも強い妖力を持っているのに人の姿を保てたのは、人でありたい思いが強かったからだ。しかし彼女は違う。自ら異形の者になりたがった」
異形の者と言われて、月夜の胸がずきりと痛んだ。
縁樹の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったから。
「酷なことを言っているとわかっている。しかし君には現実を伝える。自ら望んで異形になった者が元に戻ったことはない」
月夜は衝撃で震え、恐る恐る訊ねた。
「どうすればいいの?」
「殺すしかない」
縁樹の容赦ない言葉に月夜は目の前が真っ白になった。
暁未が死ぬ。いや、殺さなくてはならない存在となった。
月夜は胸が苦しくなり、呼吸が乱れた。あまりに動揺しすぎて眩暈すら感じる。
今まで冷たくされ、憎むべき姉であるはずの暁未。しかし月夜の胸中にあるのは憎悪よりも哀情だ。
月夜の頭の中に浮かぶのは、自分をいじめてきた暁未の姿ではなく、まったく知らない彼女の笑顔。遠い昔にいつか見たことのある彼女の姿だった。
これまでずっと、月夜が希ってきたものなのだから。
しかし、月夜にはどうすべきかわからなかった。ただ、あの家を出ていくまでのわずかな時間だけでも、家族から愛されたいと願ってしまった。
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「おかしくない。子なら親の愛情を求めるのは当然のこと。今までそれを受けることができなかった。理由はどうあれ、それが叶ったことで君の欲求が満たされているんだ」
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縁樹は冷静に穏やかな口調で話す。しかし、その表情は次第に険しくなった。
「君はこれから自分の足で立たなければならない。そのために、捨てる選択もある」
月夜の心の迷いを打ち消すような言葉だ。
今さら家族の愛情を求めても、それが偽りのままならただ虚しいだけ。月夜にはそれもわかっている。だからこそ、母の優しい言葉に心が冷えていくのだ。
月夜は黙って拳をぎゅっと握りしめた。
次第に小雨になっていき、やがて止んだ。雲の切れ間から欠けた月が現れたり隠れたりしている。
あたりは不気味なほどの静けさに包まれていた。
暁未は諦めてしまったのだろうかと月夜は思った。しかし、この状態の暁未があの家に帰っても今までのように過ごすことはできないだろう。
自分はどうすればいいのか、月夜にはまだわからない。
「どうすればお姉さまを元に戻せるの?」
「それは難しい」
「え?」
「彼女は君より強い妖力を手に入れた。人の姿を保つのも精一杯なはずだ」
「そんな、どうして……」
混乱する月夜に縁樹は容赦なく告げる。
「人間になりたい君と、そうでない彼女との違いだよ。君も香月さんも強い妖力を持っているのに人の姿を保てたのは、人でありたい思いが強かったからだ。しかし彼女は違う。自ら異形の者になりたがった」
異形の者と言われて、月夜の胸がずきりと痛んだ。
縁樹の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったから。
「酷なことを言っているとわかっている。しかし君には現実を伝える。自ら望んで異形になった者が元に戻ったことはない」
月夜は衝撃で震え、恐る恐る訊ねた。
「どうすればいいの?」
「殺すしかない」
縁樹の容赦ない言葉に月夜は目の前が真っ白になった。
暁未が死ぬ。いや、殺さなくてはならない存在となった。
月夜は胸が苦しくなり、呼吸が乱れた。あまりに動揺しすぎて眩暈すら感じる。
今まで冷たくされ、憎むべき姉であるはずの暁未。しかし月夜の胸中にあるのは憎悪よりも哀情だ。
月夜の頭の中に浮かぶのは、自分をいじめてきた暁未の姿ではなく、まったく知らない彼女の笑顔。遠い昔にいつか見たことのある彼女の姿だった。
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