見習い女神のミッションコンプリート!<完結>

黎明まりあ

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10、約束の成就(じょうじゅ)<後>

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「七実、そこにいて」
「えっ?えぇ」

 圭三に言われた通り、七実はその場にとどまる。

 部屋はシーンとしていて、物音ひとつしないせいか、七実は落ちつかなかった。
 それならば!と思い、逆に顔を上げ、キョロキョロ周囲を見渡してみたが、どこを見ても、一度は必ず存在感抜群ばつぐんの花束が視界に入り、胸がザワザワと刺激され、気持ちがしずんでいく。

 あ~、もうぉ~、早く帰りたい!

 き起こる感情を我慢できずに、顔の表情は変えずに胸の中だけで叫びながら、最終的に下を向き続けることで、結局七実は落ち着いた。
 その七実の一連いちれん動作どうさが面白かったのか、圭三がクスリと笑い、その声が静かな部屋にやけにひびく。

「なによ?」
「いいや」

 七実のとがった言い方を、圭三はサラリとかわし、そのまま七実の横をスルリと通り抜けると、真っ直ぐにソファセットに向かう。
 テーブルの上に置いてある大きな赤いバラの花束を、圭三はそっと大事そうに取り上げると、まるで宝物を手にしているかのように丁寧ていねいに胸に抱え、七実の目の前に素早く戻り、片足だけ膝を立ててひざまずいた。

 エッ、エエッ!
 ナニナニナニ、コレ!

「七実」
「はっ、はい」

 見上げる圭三の……あの目……

 熱がこもった圭三の強い眼差まなざしに、七実は魅入みいられ……動けなくなってしまう。
 圭三は一度だけ息を吸うと、大事そうに抱えた花束をゆっくりと七実へ差し出し、緊張した面持おももちでゆっくりと口を開いた。

「5年前、七実から別れを告げられても、とても俺は受け入れられなかった。
 自分の状況と七実の将来を考えたら……本当は七実を手放す選択せんたくが良かったかもしれない。
 だけど……七実がいない未来なんて、俺にとっては生きる意味はない。

 5年経っても、これから先、何年、何十年っても、俺にはお前しかいない。
 七実、愛してる。
 どうか俺と結婚してください」

 驚きのあまり、目を見開いて圭三の言葉を聞いていた七実の耳に、キーンとした音がひびくと、まばゆい光があふれ、七実を包み込んでいく。

 なに、これ?!

 ふと気が付きと、七実は晴れ渡る青空の下にいた。

 アッツィ

 強い日差しが目に刺さるようで、七実はあわてて左手を目の上にかざすと、影をつくる。

 ザザザザァ~

 音がした横を見ると、底まで見渡せるような、透明度が高い青緑の大海原おおうなばらが広がっていた。

 サッサァ~

 ほおに当たる風は、しおにおいがする。

 フッフフフッ
 ハハハハハッ

 ふと視線を目の前にさだめると、突然大きな岩が現れ、そこには2人の男女が肩を寄せ合うように、仲良く座っている姿が浮かび上がった。
 なぜか2人の話し声が、七実の耳元でハッキリと聞こえる。

『私に結婚を申し込む時は、私が大好きな色の花をたっくさんんで、大きな花束にして持ってきてね!』
『あぁ、赤い花だよな?
 わかった』

 覚えてたんだ……
 大昔の……結局果たされなかった……あの約束……

 いきなり現れた奇妙きみょうな空間で七実がボンヤリとそう思っていると、力強い圭三のさけび声がして、七実はハッと我にかえる。

「七実!」

 目の前には、大きな赤いバラの花束を差し出して、ジッと七実を見続ける……圭三がいた。

 なんだったの……あの光景!

 流れてきた映像えいぞうと、ここにいる現実がざり合い、七実は動揺どうようかくせない。
 そんな七実の意識をしっかりつなぎ止めたのは、やはり圭三だった。

「今回はこうして生きている。
 そしてこれからも、七実と一緒に生きていく。
 必ず七実を幸せにするとちかう。
 だから迷わず、この花束を受け取ってくれ!」
「はい……」

 七実も迷わず返事をすると、両目から大粒の涙がポロポロとこぼれ出してきたが、七実はそれにかまうことなく両手を花束に伸ばす。
 差し出された大きな赤いバラの花束をしっかりと受け取ると、自身の胸にぐっと引き寄せた。

 重い!
 だけど……やっと……

 七実の胸の奥にひそんでいた、自分ではどうすることもできなかった黒いかたまりが、ゴボッと外され、粉々こなごなになり、飛び散っていくのを、七実は全身で受け止める。

「七実、幸せにするよ!
 いや……2人で幸せになろう!」

 七実が花束を受け取った瞬間に立ち上がった圭三に、花束ごと七実は優しくだきしめられた。
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