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11、お礼を言いに
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七実は感動のあまり、圭三に抱きしめられながら、しばらく大泣きしていたが、ようやく涙が止まった後、圭三にひとつお願いをした。
「圭三にも付き合ってほしい場所があるの」
「もちろん、どこへでも付き合う」
圭三のスパダリ発言に、七実はまだ夢を見ているみたいにフワフワした心地でいたが、胸に抱えた大きな花束のズッシリとした重さが、これが現実であることを示してくれる。
「これから移動するんだろう?
良かったらこれを」
圭三が差し出したのは、花束を用意してくれた花屋さんがつけてくれた、大きな紙袋だった。
本当はこのままずっと抱えていたいけど、移動手段は電車……さすがに目立ちすぎる
七実は圭三からの申し出を有り難く受け、細心の注意を払い、花束を丁寧に紙袋へしまった。
「さぁ、行こう、七実」
片手に大きなスーツケースを引いているにも関わらず、圭三は七実に手を差し伸べてくれる。
手をつなぐのも5年ぶりで、なんだかドキドキしちゃう
七実は満面の笑みを浮かべて、差し出された圭三の手をしっかりと握りしめた。
移動中、七実は圭三に、人外離れした美貌の占い師とオーナーについて、熱心に語る。
七実の話を真剣に聞き終わった圭三から、ある質問をされた。
「もしかしてその男女って、2人とも銀髪?」
驚いた七実は、勢いよく答える。
「そう、そうなの!
何で圭三が知っているのぉ!」
「俺が赴任先で七実のことを思いながら1人で飲んでいた時、七実が言ってた容姿の男女と飲んだことがあったんだ」
圭三のまさかの告白に、七実は飛びついた。
「うそ!それで?」
「随分飲んでいたから、仲良くなったきっかけは忘れたけど、七実のことを相談したら、力になると言われて。
連絡先を交換したんだけど、そいつらから連絡が来る時は決まっててさ……」
一旦言葉を止めて黙ってしまった圭三に、七実は続きを促す。
「どういう時なの?」
「今すぐ帰国しろ!
そしてこの場所に行け!みたいな一方的なオレ様メッセージでさ」
「ちょっと強引すぎない?」
呆れたように言う七実に、圭三は少し笑いながら答えた。
「俺もそう思って半信半疑だったけど、最初の1回だけアイツらの指示通りに行ってみようと思って。
その通りにしたら……」
「どうだった?」
急に真顔になった圭三に、七実はゴクンと息をのむ。
「七実が知らない男と仲良く歩いていた」
それって!
言葉にすることもなく驚いた表情を浮かべた七実に、圭三はさらに説明を続けた。
「それからは七実には悪いけど、アイツらから連絡が来るたびに、俺は迷わずヤツらの指示に従った……七実に俺以外の男と付き合ってほしくなかったから」
「圭三……」
名前だけ呼んで黙ってしまった七実を見つめたまま、さらに圭三は話を続ける。
「それでさ、七実の新たな出会いを阻止して赴任先に戻ると、必ず翌日の仕事帰りに笑顔のアイツらが現れるんだ。
だからお礼に、あの2人にご飯を奢るまでが、いつの間にか習慣になっていたんだ」
圭三が説明を終えたところで、電車はこれから向かう店の最寄駅に到着した。
「この駅って……」
圭三が周囲を見渡しながら思わず声に出すと、七実が少し笑いながら答える。
「そうよ、5年前、この先にあるお店でお茶してた時に、圭三から海外赴任のことを言い出されたでしょう?
その帰り道に、見つけたの!
あっ……この道のつきあたりを右に曲がって……すぐなの。
ほら、あそこよ!
あれ?」
圭三に上機嫌に説明していた七実の声が、ふいに途切れた。
「七実?どうした?」
「あの黒い扉のところなんだけど、何か貼ってある!」
圭三の問いかけに答えてから、七実は通い慣れた道を走り出し、立ち止まってから絶句する。
そこには、『CLOSED-閉店します』とだけ書かれていたからだ。
「うそよね?
ウソでしょう!
なんで?」
ただただ、扉に貼られた紙を見つめながら、七実は立ち尽くす。
圭三も七実の横に並んで張り紙を見ていたが、ふと視線を下げるとあることに気づき、七実に教えた。
「七実、ドアノブに何か、かかっている!
七実へと書いてあるぞ!」
「あっ、本当だ!
張り紙に夢中で気が付かなかった!
何だろう?」
圭三に言われた通り、ドアノブに引っかけられてある紙袋を手にして、七実は中をのぞき込んだ。
「コレも赤いバラの花束なんだけど……」
七実は戸惑いながら、圭三に報告する。
少しの間、何か考えこんでいた圭三だったが、何か思いついたのか、七実に指示した。
「七実、その花束のバラの本数、数えてみて?」
「本数?」
「そう!
さっき俺が七実に送ったバラの数は、108本。
プロポーズには、この本数が良いって調べたんだ」
それを聞いた七実は、花束を紙袋から出し、さっそく数え始める。
「1、2、3……10……25、25本よ!」
「調べてみる」
圭三は携帯を取り出し、検索画面を開くと入力し始め、七実も一緒になって、画面をのぞき込む。
答えは一瞬で出た。
「やだ……もう……あの人たちったら……本当に……最高じゃない」
感動のあまり、七実の目からまた新たな涙が溢れだす。
「やはり……同一人物だったな。
直接お礼、言いたかった」
圭三の呟きに、七実も首を縦に振り続けた。
携帯の検索画面には、25本の赤いバラの花束の意味がこう表示されていた。
『あなたの幸せを祈っております』
-七実、圭三と幸せにね!-
七実の耳には、あの占い師の明るい声が聞こえたような気がした。
「圭三にも付き合ってほしい場所があるの」
「もちろん、どこへでも付き合う」
圭三のスパダリ発言に、七実はまだ夢を見ているみたいにフワフワした心地でいたが、胸に抱えた大きな花束のズッシリとした重さが、これが現実であることを示してくれる。
「これから移動するんだろう?
良かったらこれを」
圭三が差し出したのは、花束を用意してくれた花屋さんがつけてくれた、大きな紙袋だった。
本当はこのままずっと抱えていたいけど、移動手段は電車……さすがに目立ちすぎる
七実は圭三からの申し出を有り難く受け、細心の注意を払い、花束を丁寧に紙袋へしまった。
「さぁ、行こう、七実」
片手に大きなスーツケースを引いているにも関わらず、圭三は七実に手を差し伸べてくれる。
手をつなぐのも5年ぶりで、なんだかドキドキしちゃう
七実は満面の笑みを浮かべて、差し出された圭三の手をしっかりと握りしめた。
移動中、七実は圭三に、人外離れした美貌の占い師とオーナーについて、熱心に語る。
七実の話を真剣に聞き終わった圭三から、ある質問をされた。
「もしかしてその男女って、2人とも銀髪?」
驚いた七実は、勢いよく答える。
「そう、そうなの!
何で圭三が知っているのぉ!」
「俺が赴任先で七実のことを思いながら1人で飲んでいた時、七実が言ってた容姿の男女と飲んだことがあったんだ」
圭三のまさかの告白に、七実は飛びついた。
「うそ!それで?」
「随分飲んでいたから、仲良くなったきっかけは忘れたけど、七実のことを相談したら、力になると言われて。
連絡先を交換したんだけど、そいつらから連絡が来る時は決まっててさ……」
一旦言葉を止めて黙ってしまった圭三に、七実は続きを促す。
「どういう時なの?」
「今すぐ帰国しろ!
そしてこの場所に行け!みたいな一方的なオレ様メッセージでさ」
「ちょっと強引すぎない?」
呆れたように言う七実に、圭三は少し笑いながら答えた。
「俺もそう思って半信半疑だったけど、最初の1回だけアイツらの指示通りに行ってみようと思って。
その通りにしたら……」
「どうだった?」
急に真顔になった圭三に、七実はゴクンと息をのむ。
「七実が知らない男と仲良く歩いていた」
それって!
言葉にすることもなく驚いた表情を浮かべた七実に、圭三はさらに説明を続けた。
「それからは七実には悪いけど、アイツらから連絡が来るたびに、俺は迷わずヤツらの指示に従った……七実に俺以外の男と付き合ってほしくなかったから」
「圭三……」
名前だけ呼んで黙ってしまった七実を見つめたまま、さらに圭三は話を続ける。
「それでさ、七実の新たな出会いを阻止して赴任先に戻ると、必ず翌日の仕事帰りに笑顔のアイツらが現れるんだ。
だからお礼に、あの2人にご飯を奢るまでが、いつの間にか習慣になっていたんだ」
圭三が説明を終えたところで、電車はこれから向かう店の最寄駅に到着した。
「この駅って……」
圭三が周囲を見渡しながら思わず声に出すと、七実が少し笑いながら答える。
「そうよ、5年前、この先にあるお店でお茶してた時に、圭三から海外赴任のことを言い出されたでしょう?
その帰り道に、見つけたの!
あっ……この道のつきあたりを右に曲がって……すぐなの。
ほら、あそこよ!
あれ?」
圭三に上機嫌に説明していた七実の声が、ふいに途切れた。
「七実?どうした?」
「あの黒い扉のところなんだけど、何か貼ってある!」
圭三の問いかけに答えてから、七実は通い慣れた道を走り出し、立ち止まってから絶句する。
そこには、『CLOSED-閉店します』とだけ書かれていたからだ。
「うそよね?
ウソでしょう!
なんで?」
ただただ、扉に貼られた紙を見つめながら、七実は立ち尽くす。
圭三も七実の横に並んで張り紙を見ていたが、ふと視線を下げるとあることに気づき、七実に教えた。
「七実、ドアノブに何か、かかっている!
七実へと書いてあるぞ!」
「あっ、本当だ!
張り紙に夢中で気が付かなかった!
何だろう?」
圭三に言われた通り、ドアノブに引っかけられてある紙袋を手にして、七実は中をのぞき込んだ。
「コレも赤いバラの花束なんだけど……」
七実は戸惑いながら、圭三に報告する。
少しの間、何か考えこんでいた圭三だったが、何か思いついたのか、七実に指示した。
「七実、その花束のバラの本数、数えてみて?」
「本数?」
「そう!
さっき俺が七実に送ったバラの数は、108本。
プロポーズには、この本数が良いって調べたんだ」
それを聞いた七実は、花束を紙袋から出し、さっそく数え始める。
「1、2、3……10……25、25本よ!」
「調べてみる」
圭三は携帯を取り出し、検索画面を開くと入力し始め、七実も一緒になって、画面をのぞき込む。
答えは一瞬で出た。
「やだ……もう……あの人たちったら……本当に……最高じゃない」
感動のあまり、七実の目からまた新たな涙が溢れだす。
「やはり……同一人物だったな。
直接お礼、言いたかった」
圭三の呟きに、七実も首を縦に振り続けた。
携帯の検索画面には、25本の赤いバラの花束の意味がこう表示されていた。
『あなたの幸せを祈っております』
-七実、圭三と幸せにね!-
七実の耳には、あの占い師の明るい声が聞こえたような気がした。
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