見習い女神のミッションコンプリート!<完結>

黎明まりあ

文字の大きさ
11 / 12

11、お礼を言いに

しおりを挟む
 七実は感動のあまり、圭三に抱きしめられながら、しばらく大泣きしていたが、ようやく涙が止まった後、圭三にひとつお願いをした。

「圭三にも付き合ってほしい場所があるの」
「もちろん、どこへでも付き合う」

 圭三のスパダリ発言に、七実はまだ夢を見ているみたいにフワフワした心地でいたが、胸に抱えた大きな花束のズッシリとした重さが、これが現実であることを示してくれる。

「これから移動するんだろう?
 良かったらこれを」

 圭三が差し出したのは、花束を用意してくれた花屋さんがつけてくれた、大きな紙袋だった。

 本当はこのままずっと抱えていたいけど、移動手段は電車……さすがに目立ちすぎる

 七実は圭三からの申し出を有りがたく受け、細心さいしんの注意を払い、花束を丁寧ていねいに紙袋へしまった。

「さぁ、行こう、七実」

 片手に大きなスーツケースを引いているにも関わらず、圭三は七実に手を差し伸べてくれる。

 手をつなぐのも5年ぶりで、なんだかドキドキしちゃう

 七実は満面の笑みを浮かべて、差し出された圭三の手をしっかりと握りしめた。

 移動中、七実は圭三に、人外離れした美貌びぼうの占い師とオーナーについて、熱心に語る。
 七実の話を真剣に聞き終わった圭三から、ある質問をされた。

「もしかしてその男女って、2人とも銀髪?」

 驚いた七実は、勢いよく答える。

「そう、そうなの!
 何で圭三が知っているのぉ!」
「俺が赴任ふにん先で七実のことを思いながら1人で飲んでいた時、七実が言ってた容姿ようしの男女と飲んだことがあったんだ」

 圭三のまさかの告白に、七実は飛びついた。

「うそ!それで?」
随分ずいぶん飲んでいたから、仲良くなったきっかけは忘れたけど、七実のことを相談したら、力になると言われて。
 連絡先を交換したんだけど、そいつらから連絡が来る時は決まっててさ……」

 一旦いったん言葉を止めて黙ってしまった圭三に、七実は続きをうながす。

「どういう時なの?」
「今すぐ帰国しろ!
 そしてこの場所に行け!みたいな一方的なオレ様メッセージでさ」
「ちょっと強引ごういんすぎない?」

 あきれたように言う七実に、圭三は少し笑いながら答えた。

「俺もそう思って半信はんしん半疑はんぎだったけど、最初の1回だけアイツらの指示通りに行ってみようと思って。
 その通りにしたら……」
「どうだった?」

 急に真顔まがおになった圭三に、七実はゴクンと息をのむ。

「七実が知らない男と仲良く歩いていた」

 それって!

 言葉にすることもなく驚いた表情を浮かべた七実に、圭三はさらに説明を続けた。

「それからは七実には悪いけど、アイツらから連絡が来るたびに、俺は迷わずヤツらの指示にしたがった……七実に俺以外の男と付き合ってほしくなかったから」
「圭三……」

 名前だけ呼んで黙ってしまった七実を見つめたまま、さらに圭三は話を続ける。

「それでさ、七実の新たな出会いを阻止そしして赴任ふにん先に戻ると、必ず翌日の仕事帰りに笑顔のアイツらが現れるんだ。
 だからお礼に、あの2人にご飯をおごるまでが、いつの間にか習慣になっていたんだ」

 圭三が説明を終えたところで、電車はこれから向かう店の最寄もより駅に到着した。

「この駅って……」

 圭三が周囲を見渡しながら思わず声に出すと、七実が少し笑いながら答える。

「そうよ、5年前、この先にあるお店でお茶してた時に、圭三から海外赴任のことを言い出されたでしょう?
 その帰り道に、見つけたの!
 あっ……この道のつきあたりを右に曲がって……すぐなの。
 ほら、あそこよ!
 あれ?」

 圭三に上機嫌に説明していた七実の声が、ふいに途切とぎれた。

「七実?どうした?」
「あの黒い扉のところなんだけど、何かってある!」

 圭三の問いかけに答えてから、七実は通い慣れた道を走り出し、立ち止まってから絶句ぜっくする。
 そこには、『CLOSED-閉店します』とだけ書かれていたからだ。

「うそよね?
 ウソでしょう!
 なんで?」

 ただただ、扉に貼られた紙を見つめながら、七実は立ち尽くす。
 圭三も七実の横に並んで張り紙を見ていたが、ふと視線を下げるとあることに気づき、七実に教えた。

「七実、ドアノブに何か、かかっている!
 七実へと書いてあるぞ!」
「あっ、本当だ!
 張り紙に夢中で気が付かなかった!
 何だろう?」

 圭三に言われた通り、ドアノブに引っかけられてある紙袋を手にして、七実は中をのぞき込んだ。

「コレも赤いバラの花束なんだけど……」

 七実は戸惑とまどいながら、圭三に報告する。
 少しの間、何か考えこんでいた圭三だったが、何か思いついたのか、七実に指示した。

「七実、その花束のバラの本数、数えてみて?」
「本数?」
「そう!
 さっき俺が七実に送ったバラの数は、108本。
 プロポーズには、この本数が良いって調べたんだ」

 それを聞いた七実は、花束を紙袋から出し、さっそく数え始める。

「1、2、3……10……25、25本よ!」
「調べてみる」

 圭三は携帯を取り出し、検索画面を開くと入力し始め、七実も一緒になって、画面をのぞき込む。
 答えは一瞬で出た。

「やだ……もう……あの人たちったら……本当に……最高じゃない」

 感動のあまり、七実の目からまた新たな涙があふれだす。

「やはり……同一人物だったな。
 直接お礼、言いたかった」

 圭三のつぶやきに、七実も首をたてに振り続けた。

 携帯の検索画面には、25本の赤いバラの花束の意味がこう表示されていた。

『あなたの幸せを祈っております』

 -七実、圭三と幸せにね!-

 七実の耳には、あの占い師の明るい声が聞こえたような気がした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

傾国の悪女、リーゼロッテの選択

千 遊雲
ファンタジー
傾国の悪女、リーゼロッテ・ダントは美しすぎた。 第一王子を魅了して、国の王位争いに混乱をもたらしてしまうほどに。 悪女として捕まったリーゼロッテだが、彼女は最後まで反省の一つもしなかった。 リーゼロッテが口にしたのは、ただの一言。「これが私の選択ですから」と、それだけだった。 彼女は美しすぎる顔で、最後まで満足げに笑っていた。

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

処理中です...