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第5章 王宮生活<大祭編>
70、責任の所在<前>
ほどなくローサは僕らに気付いたようで、特に僕を見つめながら侍女らに衣装の乱れを整えさせ、僕らの方へ彼女たちを引き連れてゆっくりと歩いて来る。
ローサが一歩ずつこちらへ近づいてくるたびに、僕は右頬に微かな痛みを感じ、勝手に身体が震え、逆に僕は後ろへ一歩ずつ下がってしまった。
僕の足が3歩目を後ろに出した時、背中にそっと手を回され、その動きを止められる。
ハッ!と僕は我に返り、横にいた、その手の持ち主を見上げた。
ロイ!
そうだ、今の僕にはロイや神官たちがいる
与えられた役割である、供物の準備も彼らと共にきちんと終わらせた
だから、少しだけ自信を持っていいかもしれない
すぐに僕が落ち着いたことを感じ取ったのか、ロイの手は最後に僕の背中をポンポンと軽く2回叩いて、そっと離れた。
その直後、ローサから声をかけられる。
「レンヤード様、ご機嫌よう。
それにしても、随分と早くこちらに来られたんですね」
僕は、先ほど下がってしまった2歩分、前に出てローサに答える。
「やぁ、ご機嫌よう、ローサ。
君も早いんだね」
そう言って、僕はローサの全身を見るとはなしに見た。
今日もローサの衣装は、見事であった。
大聖堂へ来る途中に見かけた時は真っ赤なドレス姿だったが、今は大祭に備えて、王族の色である紺色のドレスに着替えている。
国教会が執り行う厳格な宗教的儀式への参加なので、ドレスのデザインに派手さは一切ないが、所々に小さな紺色の造花が飾られており、ドレス全体には、今回も無色透明のキラキラと輝く宝石が散りばめられていて、大聖堂の中にいても、ローサは光を纏っているように見えた。
僕の正面に立つと、ローサはドレスの裾をササッと侍女に直させ、例の黒い骨組みに金細工が施された扇を受け取ると、それを畳んだまま顎に当て、僕へこう質問する。
「レンヤード様、なぜ地方のものたちが、上位貴族である王都周辺の諸侯たちを差し置いて、先に着席しているのです?
入場は上位貴族が優先でしょう?
決まり事は、きちんと守ってもらわないと困りますわ」
ローサは、困り事を起こした幼子を見るような目で、僕を見ていた。
「それは……この天候だろう?
すぐに雨が降り出しそうだったし、大聖堂前で待っている人々が、雨に打たれて体調を崩すのを避ける予防策として、先に中に入ってもらったんだ。
王都周辺の諸侯たちが、いつ来るのか僕には予想つかなかったしね。
あっ、ちゃんと許可は取ったよ。
神官長様は儀式への準備中だったから、その代理をされている副神官長にね」
僕の答えを聞いたローサは、僕の横にいるロイへギロリと視線を向け、ここで愛用の扇をバサッと開き口元に当て、小さく呟いた。
「そう……副神官長、あなたまで……」
僕はずっとローサの顔を見続けていたからこそ気がついたが、ローサが口元を扇で隠したのは、口が不満げに歪んでしまったからであろう。
そんなローサに対してロイは特に何も反応せず、挨拶をした。
「お久しぶりです、ローサ様」
「そうね、久しぶりね」
ローサもそれ以上は何も言わず、ロイに挨拶を返しているうちに、王都周辺の諸侯たちも所定の場所へ着席したようで、全員の関心と視線が僕たちに向けられたのを、僕は肌で感じた。
どうやらローサもその気配を感じ取ったようで、表情を笑顔に変え、僕に話しかける。
「私も忙しくて、思うようにレンヤード様に供物管理の引き継ぎができなかったのが、心残りでしたの。
なので、せめてものお詫びで、今日は早めに来てみました。
万が一、何か不手際があったら、教えてあげようと思って……儀式開始前の今なら、間に合うでしょう?」
「わざわざ気遣いをありがとう、ローサ。
でも……ここにいるロイや教会の神官たちが心良く手伝ってくれたお陰で、何とか間に合ったよ」
僕も、ローサとの間に何事もなかったかのように、微笑み返しながら答えた。
実際は、色々あったけどね
だけど今更その事を蒸し返しても、時は取り戻せないし、ローサに上手く丸め込まれてしまうのが目に見えたので、僕は黙っておくことにした。
でも、ローサがこんなに早く来るなんて……何か変だ
そう僕の勘が告げる。
「確かに、見事にやり遂げられましたわね」
そう言って、大聖堂内をグルリと見渡したローサだったが、ふと何かに気づいたかのように、ある場所で目を留めた。
ローサが一歩ずつこちらへ近づいてくるたびに、僕は右頬に微かな痛みを感じ、勝手に身体が震え、逆に僕は後ろへ一歩ずつ下がってしまった。
僕の足が3歩目を後ろに出した時、背中にそっと手を回され、その動きを止められる。
ハッ!と僕は我に返り、横にいた、その手の持ち主を見上げた。
ロイ!
そうだ、今の僕にはロイや神官たちがいる
与えられた役割である、供物の準備も彼らと共にきちんと終わらせた
だから、少しだけ自信を持っていいかもしれない
すぐに僕が落ち着いたことを感じ取ったのか、ロイの手は最後に僕の背中をポンポンと軽く2回叩いて、そっと離れた。
その直後、ローサから声をかけられる。
「レンヤード様、ご機嫌よう。
それにしても、随分と早くこちらに来られたんですね」
僕は、先ほど下がってしまった2歩分、前に出てローサに答える。
「やぁ、ご機嫌よう、ローサ。
君も早いんだね」
そう言って、僕はローサの全身を見るとはなしに見た。
今日もローサの衣装は、見事であった。
大聖堂へ来る途中に見かけた時は真っ赤なドレス姿だったが、今は大祭に備えて、王族の色である紺色のドレスに着替えている。
国教会が執り行う厳格な宗教的儀式への参加なので、ドレスのデザインに派手さは一切ないが、所々に小さな紺色の造花が飾られており、ドレス全体には、今回も無色透明のキラキラと輝く宝石が散りばめられていて、大聖堂の中にいても、ローサは光を纏っているように見えた。
僕の正面に立つと、ローサはドレスの裾をササッと侍女に直させ、例の黒い骨組みに金細工が施された扇を受け取ると、それを畳んだまま顎に当て、僕へこう質問する。
「レンヤード様、なぜ地方のものたちが、上位貴族である王都周辺の諸侯たちを差し置いて、先に着席しているのです?
入場は上位貴族が優先でしょう?
決まり事は、きちんと守ってもらわないと困りますわ」
ローサは、困り事を起こした幼子を見るような目で、僕を見ていた。
「それは……この天候だろう?
すぐに雨が降り出しそうだったし、大聖堂前で待っている人々が、雨に打たれて体調を崩すのを避ける予防策として、先に中に入ってもらったんだ。
王都周辺の諸侯たちが、いつ来るのか僕には予想つかなかったしね。
あっ、ちゃんと許可は取ったよ。
神官長様は儀式への準備中だったから、その代理をされている副神官長にね」
僕の答えを聞いたローサは、僕の横にいるロイへギロリと視線を向け、ここで愛用の扇をバサッと開き口元に当て、小さく呟いた。
「そう……副神官長、あなたまで……」
僕はずっとローサの顔を見続けていたからこそ気がついたが、ローサが口元を扇で隠したのは、口が不満げに歪んでしまったからであろう。
そんなローサに対してロイは特に何も反応せず、挨拶をした。
「お久しぶりです、ローサ様」
「そうね、久しぶりね」
ローサもそれ以上は何も言わず、ロイに挨拶を返しているうちに、王都周辺の諸侯たちも所定の場所へ着席したようで、全員の関心と視線が僕たちに向けられたのを、僕は肌で感じた。
どうやらローサもその気配を感じ取ったようで、表情を笑顔に変え、僕に話しかける。
「私も忙しくて、思うようにレンヤード様に供物管理の引き継ぎができなかったのが、心残りでしたの。
なので、せめてものお詫びで、今日は早めに来てみました。
万が一、何か不手際があったら、教えてあげようと思って……儀式開始前の今なら、間に合うでしょう?」
「わざわざ気遣いをありがとう、ローサ。
でも……ここにいるロイや教会の神官たちが心良く手伝ってくれたお陰で、何とか間に合ったよ」
僕も、ローサとの間に何事もなかったかのように、微笑み返しながら答えた。
実際は、色々あったけどね
だけど今更その事を蒸し返しても、時は取り戻せないし、ローサに上手く丸め込まれてしまうのが目に見えたので、僕は黙っておくことにした。
でも、ローサがこんなに早く来るなんて……何か変だ
そう僕の勘が告げる。
「確かに、見事にやり遂げられましたわね」
そう言って、大聖堂内をグルリと見渡したローサだったが、ふと何かに気づいたかのように、ある場所で目を留めた。
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