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第6章 王宮生活<帰還編>
101、動かす言葉<前>
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僕は木刀を見つめ、微かに笑みを浮かべる。
懐かしい……昔、僕も稽古で使っていたな
双子の弟であるライは剣を学ぶことを嫌がったが、僕はむしろ好きだった。
テオという護衛がいたが、僕とライの2人をテオ1人が担当する。
僕たち双子が一緒にいて、もし何らかの危機があった場合、小さい頃から抜きん出た美貌を持ち、大きくなってからは王弟であるシルヴィス様の婚約者候補だったライの身がより大事なので、ライの身の安全を優先するよう、僕はテオに常々言っていた。
するとある日、テオが僕に剣を教え始めたのだ。
テオに教わるうちに、僕は夢中になってしまい……だからこそ、昨日のことのように鮮やかに思い出す。
いつしか……あの頃のように、テオの声がした。
『いいですか、レンヤード様
レンヤード様は体格的に激しい戦闘には不向きで、そのようなものを想定した教えは、あまり適切ではありません
それより……私がライヨーダ様を安全な場所へ匿い、レンヤード様を助けに向かう少しの間だけ、時間稼ぎができればいいのです
そのためには、まず剣の構えです
闇雲に、適当に構えてはいけません
相手が強いかどうかは、剣に携わる人間なら、その構え方ですぐに分かりますから』
僕にとって最強で最愛だった男の声に導かれ、僕はシルヴィス様に向けて、ゆっくりと剣を構えていく。
「おおっ、なんて美しい構えだ!」
「これは、どこの派のものだ?」
「全身が光り輝いておられるが、何らかの力を同時に使っておられるのか?」
「確か、番様は神から愛されていると聞いたぞ!」
何だが周りが騒めいているが、何を言っているかまでは、集中している僕には理解できない。
ただ僕の耳に聞こえているのは、自分の呼吸音と剣の師匠であったテオの声のみ。
『そうです、その形です!
敵はきっと剣に慣れ、力も強い
だからレンヤード様は、まず構えで剣の嗜みがあるぞ!と敵を脅し、次に気迫ある睨みで敵の動きを封じ……最後に剣で敵の急所を狙います
人間にはいくつか急所がありますが、戦い慣れてない人間は、敵を前にして、普段と同じように冷静に考えることはできません
だから次の2つのうち、どちらかを狙いましょう……それは目か喉です』
テオの教え通りに僕は鋭い目つきでシルヴィス様を見据え、木刀を構えた。
対してシルヴィス様は何も言わず、信じられないような顔をして、首を左右に振り続ける。
「レンヤード様、本当におやめください」
切迫詰まったタナー様の声が、僕のすぐ後ろから聞こえた。
「さぁ、シルヴィス様、木刀を構えて!
僕と勝負してください」
僕は一歩、シルヴィス様へと近づく。
「レン、オレに殺気を出して、剣先を向けるのはやめてくれ。
オレはお前を斬れない」
シルヴィス様は木刀を握っているが構えることはせず、僕が近づいた分、後ろに下がった。
僕は焦れて、シルヴィス様に畳みかけるように言い放つ。
「シルヴィス様、もし僕に似た敵がこうして迫ったら、どうするのです?
その時シルヴィス様は、大人しく斬られるのですか?」
すかさず、シルヴィス様が答えられた。
「偽物なら斬る。
だが、お前は本物だ!」
僕は尚も、シルヴィス様へ問い続ける。
「非常によく似た偽物だったら?」
シルヴィス様は目を少しだけ潤ませながら、即座に答えられた。
「オレは、本物と偽物を見間違えない!
姿形、匂い、存在の全てで、レンを識別できるからだ。
だからこそ本物のお前に、剣を向ける事はできない!
やっと地獄のような壮絶な場所から戻ってきたのに、なぜ最愛のそなたに剣を向けなければならないのだ。
分かった、オレの負けだ」
シルヴィス様は慟哭するような大声でそう叫ばれると、握っていた木刀をカランと投げ捨てた。
その瞬間、
座り込んでいた親衛隊が一斉に全員立ち上がり、木刀を僕へ向ける。
僕は周囲をゆっくりと見渡した後、最後にチラリと後ろを見る……真剣を構えたタナー様が確認できた。
「ならぬ、引け!
レンに剣を向けることは許さぬ!!」
シルヴィス様の怒号が、静まり返った空間に響き渡った。
懐かしい……昔、僕も稽古で使っていたな
双子の弟であるライは剣を学ぶことを嫌がったが、僕はむしろ好きだった。
テオという護衛がいたが、僕とライの2人をテオ1人が担当する。
僕たち双子が一緒にいて、もし何らかの危機があった場合、小さい頃から抜きん出た美貌を持ち、大きくなってからは王弟であるシルヴィス様の婚約者候補だったライの身がより大事なので、ライの身の安全を優先するよう、僕はテオに常々言っていた。
するとある日、テオが僕に剣を教え始めたのだ。
テオに教わるうちに、僕は夢中になってしまい……だからこそ、昨日のことのように鮮やかに思い出す。
いつしか……あの頃のように、テオの声がした。
『いいですか、レンヤード様
レンヤード様は体格的に激しい戦闘には不向きで、そのようなものを想定した教えは、あまり適切ではありません
それより……私がライヨーダ様を安全な場所へ匿い、レンヤード様を助けに向かう少しの間だけ、時間稼ぎができればいいのです
そのためには、まず剣の構えです
闇雲に、適当に構えてはいけません
相手が強いかどうかは、剣に携わる人間なら、その構え方ですぐに分かりますから』
僕にとって最強で最愛だった男の声に導かれ、僕はシルヴィス様に向けて、ゆっくりと剣を構えていく。
「おおっ、なんて美しい構えだ!」
「これは、どこの派のものだ?」
「全身が光り輝いておられるが、何らかの力を同時に使っておられるのか?」
「確か、番様は神から愛されていると聞いたぞ!」
何だが周りが騒めいているが、何を言っているかまでは、集中している僕には理解できない。
ただ僕の耳に聞こえているのは、自分の呼吸音と剣の師匠であったテオの声のみ。
『そうです、その形です!
敵はきっと剣に慣れ、力も強い
だからレンヤード様は、まず構えで剣の嗜みがあるぞ!と敵を脅し、次に気迫ある睨みで敵の動きを封じ……最後に剣で敵の急所を狙います
人間にはいくつか急所がありますが、戦い慣れてない人間は、敵を前にして、普段と同じように冷静に考えることはできません
だから次の2つのうち、どちらかを狙いましょう……それは目か喉です』
テオの教え通りに僕は鋭い目つきでシルヴィス様を見据え、木刀を構えた。
対してシルヴィス様は何も言わず、信じられないような顔をして、首を左右に振り続ける。
「レンヤード様、本当におやめください」
切迫詰まったタナー様の声が、僕のすぐ後ろから聞こえた。
「さぁ、シルヴィス様、木刀を構えて!
僕と勝負してください」
僕は一歩、シルヴィス様へと近づく。
「レン、オレに殺気を出して、剣先を向けるのはやめてくれ。
オレはお前を斬れない」
シルヴィス様は木刀を握っているが構えることはせず、僕が近づいた分、後ろに下がった。
僕は焦れて、シルヴィス様に畳みかけるように言い放つ。
「シルヴィス様、もし僕に似た敵がこうして迫ったら、どうするのです?
その時シルヴィス様は、大人しく斬られるのですか?」
すかさず、シルヴィス様が答えられた。
「偽物なら斬る。
だが、お前は本物だ!」
僕は尚も、シルヴィス様へ問い続ける。
「非常によく似た偽物だったら?」
シルヴィス様は目を少しだけ潤ませながら、即座に答えられた。
「オレは、本物と偽物を見間違えない!
姿形、匂い、存在の全てで、レンを識別できるからだ。
だからこそ本物のお前に、剣を向ける事はできない!
やっと地獄のような壮絶な場所から戻ってきたのに、なぜ最愛のそなたに剣を向けなければならないのだ。
分かった、オレの負けだ」
シルヴィス様は慟哭するような大声でそう叫ばれると、握っていた木刀をカランと投げ捨てた。
その瞬間、
座り込んでいた親衛隊が一斉に全員立ち上がり、木刀を僕へ向ける。
僕は周囲をゆっくりと見渡した後、最後にチラリと後ろを見る……真剣を構えたタナー様が確認できた。
「ならぬ、引け!
レンに剣を向けることは許さぬ!!」
シルヴィス様の怒号が、静まり返った空間に響き渡った。
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