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14.俺様生徒会長は〇〇がお好き
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──ヤベェ。
俺様生徒会長こと武藤瑛一。圧倒的なカリスマに運動勉強ともにトップクラスの実力、抱かれたい男ランキング一位の美貌と経済界を掌握する名家の御曹司。
そんな瑛一は今、たいそう焦っていた。
「うう……何もせずにごはんがたべたい……あんまり働きたくもない……」
原因はコレ。料理が苦手だと叫びそのままソファに沈み込んだ、現在の同居人であり園芸委員長のチャラ男──田中宗介だった。
園芸委員長といえば、一代で旧校舎のビオトープを完成させた緑の手の持ち主。
人好きのする笑顔に柔らかな少し掠れた声、快活だがどこか色気の孕む整った顔立ちは美しいというより危うい。
案外力強く体格も良いが、それも男らしい艶やかさに変換されていながらも態度は軽い。黄金色の髪が自然光に輝き、植物で覆われた旧校舎にいる姿は一種の芸術作品──
そんな評価をされている、生徒会執行部からは警戒対象の男だ。
(園芸委員会は権力こそ弱いが、だからこそ生徒会としての制約も働かない……その上でコイツは、シンパを増やす愛想と見た目も兼ね備えている)
圧倒的な存在である執行部や他役員と違って、田中宗介はフランクかつ近い立ち位置で生徒と関わっている。かと思えば格の違いを見せつけるように離れるのだ。
その気まぐれな態度から熱狂的なシンパも多い。
今日会った転校生もその部類だろう。
その上で生徒会執行部には手を出さない。そうして腹を見せながら虎視眈々と首元を狙っている──そういう賢い男だと。
思われていたのだが。
「でも餃子定食はおれが食べてあげなきゃダメなんだ……」
食堂のナンバーワン不人気定食に依存している男は、本当に田中宗介なのだろうか。
パタパタと男の足元でスリッパが揺れる。100円均一で五百円のスリッパである。
他に三百円のものもあったのに、唯一何故かほんのり高かったやつを買ったのだろうか。
瑛一の脳裏に焦りという文字が高速で浮かんでは消えていく。最悪の音ゲーみたいだった。
背筋に脂汗が伝った──
そのころ、生徒会執行部。
席務の双子と副会長は残って事務処理を行っていた。権力があるのでもちろん仕事も多い。
「しかし、田中宗介……なかなか油断できない相手でしたね」
各々デスクで報告書を作ったり書類にサインをしたりしていた双子が、刑部の言葉に手を止める。そのまますぐ作業に戻りながらも気になるの、と楽しそうに笑った。
「ボク、田中クンってもっとジュージュンだと思ってた!」
「そうかなぁ? ボクはけっこー期待してたけど? 桜は人を信じすぎっ!」
双子は割と意見が割れる。享楽主義の弟、椿と堅実主義の兄、桜とで考え方が違うから。
「同室にしたのは失敗だったでしょうか? 田中宗介は賢い男です──我らが会長が骨抜きにでもされたら、たまらない」
「もうりょーたろーちゃんったら! 会長のこと嫌いなんだからっ」
「コラ椿、刑部は会長を心配してるんだよっ? でもボク、流石に心配はないと思うなぁ?」
双子はそうしてくすくすと笑い合う。椿はともかく、桜には基本悪意がない。その様子に毒気を抜かれて、刑部もふ、と吐息を漏らした。
確かに田中宗介は賢く、立ち回りの上手い男だ。成績もそこそこを維持しながら目立たないようにしており、着実にシンパを増やしている。
「そうですね、だって」
しかしだからこそ、その聡明さが仇になる。
持ちうる手段をうまく使い、どれほど的確にオトそうとしたところで無駄なのだ。
だって──
「生徒会長は、ダメ人間が心の底から好きですからね」
──ということでところ変わって瑛一と田中の部屋である。
瑛一はキッチンの方をチラリと見て、焦りをようやく言語化する。
(ヤベェな、コイツもしかして)
田中はすっかりケロリとして、律儀にじゃがいも四個をふかして晩ごはんにしていた。
別に一気に入れるなと言っただけだが、何をどう勘違いしたのか四個しか食べれないと思っているらしく大事にちまちまと食べている。
しかもまたキッチンで雑に立って食ってるし。ラップを洗い場に運んで剥く短い時間で指先を火傷したらしく、人差し指が変に浮いていた。
(めちゃくちゃダメ人間なんじゃねぇか──)
どうなる同居生活。
俺様生徒会長こと武藤瑛一。圧倒的なカリスマに運動勉強ともにトップクラスの実力、抱かれたい男ランキング一位の美貌と経済界を掌握する名家の御曹司。
そんな瑛一は今、たいそう焦っていた。
「うう……何もせずにごはんがたべたい……あんまり働きたくもない……」
原因はコレ。料理が苦手だと叫びそのままソファに沈み込んだ、現在の同居人であり園芸委員長のチャラ男──田中宗介だった。
園芸委員長といえば、一代で旧校舎のビオトープを完成させた緑の手の持ち主。
人好きのする笑顔に柔らかな少し掠れた声、快活だがどこか色気の孕む整った顔立ちは美しいというより危うい。
案外力強く体格も良いが、それも男らしい艶やかさに変換されていながらも態度は軽い。黄金色の髪が自然光に輝き、植物で覆われた旧校舎にいる姿は一種の芸術作品──
そんな評価をされている、生徒会執行部からは警戒対象の男だ。
(園芸委員会は権力こそ弱いが、だからこそ生徒会としての制約も働かない……その上でコイツは、シンパを増やす愛想と見た目も兼ね備えている)
圧倒的な存在である執行部や他役員と違って、田中宗介はフランクかつ近い立ち位置で生徒と関わっている。かと思えば格の違いを見せつけるように離れるのだ。
その気まぐれな態度から熱狂的なシンパも多い。
今日会った転校生もその部類だろう。
その上で生徒会執行部には手を出さない。そうして腹を見せながら虎視眈々と首元を狙っている──そういう賢い男だと。
思われていたのだが。
「でも餃子定食はおれが食べてあげなきゃダメなんだ……」
食堂のナンバーワン不人気定食に依存している男は、本当に田中宗介なのだろうか。
パタパタと男の足元でスリッパが揺れる。100円均一で五百円のスリッパである。
他に三百円のものもあったのに、唯一何故かほんのり高かったやつを買ったのだろうか。
瑛一の脳裏に焦りという文字が高速で浮かんでは消えていく。最悪の音ゲーみたいだった。
背筋に脂汗が伝った──
そのころ、生徒会執行部。
席務の双子と副会長は残って事務処理を行っていた。権力があるのでもちろん仕事も多い。
「しかし、田中宗介……なかなか油断できない相手でしたね」
各々デスクで報告書を作ったり書類にサインをしたりしていた双子が、刑部の言葉に手を止める。そのまますぐ作業に戻りながらも気になるの、と楽しそうに笑った。
「ボク、田中クンってもっとジュージュンだと思ってた!」
「そうかなぁ? ボクはけっこー期待してたけど? 桜は人を信じすぎっ!」
双子は割と意見が割れる。享楽主義の弟、椿と堅実主義の兄、桜とで考え方が違うから。
「同室にしたのは失敗だったでしょうか? 田中宗介は賢い男です──我らが会長が骨抜きにでもされたら、たまらない」
「もうりょーたろーちゃんったら! 会長のこと嫌いなんだからっ」
「コラ椿、刑部は会長を心配してるんだよっ? でもボク、流石に心配はないと思うなぁ?」
双子はそうしてくすくすと笑い合う。椿はともかく、桜には基本悪意がない。その様子に毒気を抜かれて、刑部もふ、と吐息を漏らした。
確かに田中宗介は賢く、立ち回りの上手い男だ。成績もそこそこを維持しながら目立たないようにしており、着実にシンパを増やしている。
「そうですね、だって」
しかしだからこそ、その聡明さが仇になる。
持ちうる手段をうまく使い、どれほど的確にオトそうとしたところで無駄なのだ。
だって──
「生徒会長は、ダメ人間が心の底から好きですからね」
──ということでところ変わって瑛一と田中の部屋である。
瑛一はキッチンの方をチラリと見て、焦りをようやく言語化する。
(ヤベェな、コイツもしかして)
田中はすっかりケロリとして、律儀にじゃがいも四個をふかして晩ごはんにしていた。
別に一気に入れるなと言っただけだが、何をどう勘違いしたのか四個しか食べれないと思っているらしく大事にちまちまと食べている。
しかもまたキッチンで雑に立って食ってるし。ラップを洗い場に運んで剥く短い時間で指先を火傷したらしく、人差し指が変に浮いていた。
(めちゃくちゃダメ人間なんじゃねぇか──)
どうなる同居生活。
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