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すっかり目も覚めたことなので、チャラ男としての武装を始める。染めた髪の毛が戻りかけてないか確認し、いくつかヘアピンを取り出し片方の前髪を止める。
いにしえのチャラ男を装いつつ畑の世話に邪魔にならないような服装である、さすが俺。
「あ? お前ジャージかそれ……」
「おしゃれジャージだよ~。どうせ汚れんのに制服着れるわけないじゃ~ん」
洗面所から戻ってくると、武藤様はスマートなウォッチをつけている。朝ジョグの用意ができたのだろう。
俺はといえば私服に見えるジャージの中に無地の白T。修学旅行の際、スキー研修で入り用になったものをまだ使っている。
「……今日肌寒いぞ」
「え? まさかぁ! 確かにちょっと寒いけど、寒さにもだいぶ慣れてきたしいけるって~!」
「室内だからな」
武藤様がリモコンを操作し、ガラス張りの窓を開ける。小さな駆動音と共に入り込んでくるありえんくらいの冷たい空気。
「寒い!!!!!!!!!」
「雪の日に調子乗って外出る犬じゃねぇか」
ウィーーーーン……と窓が閉じる。武藤様はだいぶ平気そうである。どういうこと? イエティの末裔とかなの? めちゃくちゃ美形のイエティなの?
「走りに行くから防寒対策してんだよ。おい、蹲るな。寝たら死ぬ寒さでもねぇだろ。寒さに乗じて怠けを出すな。お前雨だから外出なくていいって言うタイプか?」
言うタイプである。中学にトラウマはないが、雨で公共交通機関が停止することを待ち望み入念に天気予報とか見てた。
ぐだぐだしてても仕方がないので、部屋に戻って作業用の上着を着て戻ってくる。長靴とかは向こうに置いてあるので手ぶらだ。
上着を着てきた俺を見て、武藤様は何がどうしてかちょっと残念そうな顔をした。えっそんなダサい? ブランドのやつなんだけど……
「会長さま、もう出るの~? 俺も出ちゃおっかな~」
ウワサになっちゃうかもね~と笑えば、武藤様はいつも通り堂々推した、どこか冷徹な匂いの感じる表情で鼻を鳴らした。
「フン。テメェこそ、あの転校生は良いのかよ? 噂になってるぜ?」
「……へぇ~」
へぇ~~~~!
そゆこと教えてくれる友達がいないので知らなかった。
俺はまぁそこそこ有名人(悪い意味で)だが、俺なんかの噂をして何が楽しいのだろうか。おぼこい転校生たぶらかした最低男としてめちゃくちゃ悪口とか言われてるのかな。死にたい
「ッハ、知ってるくせに白々しい」
「……まぁね?会長さまがわざわざそんな噂を気にするなんて~って思っただけ~。なぁに? 気に入っちゃった?」
扉に鍵を差し込み、閉める。早々にエレベーターを呼び出した武藤様に小走りで駆け寄って笑えば、否定されると思ったのに何やら考え込んでいる様子。
えっ? まって? ほんとに?
「気に入った……なぁ?」
じろり、と金色の瞳が俺の全身を検分するようにざっと見つめた。
「最悪だとばかり思ってたが……ハン、想定よりは悪かねぇ」
──王道学園、という文化がこの世にある。
全寮制男子校で圧倒的な権力を持つ、美麗な男ばかりが揃った生徒会。
そんなところに芋臭い男が転校してきて、あれよあれよという間に学校の有名人に気に入られる、そういう文化。
(……え?)
エレベーターが一階に着く。さっさとジョギングに行ってしまった武藤様を眺めながら、俺はエレベーターの中に立ち尽くしていた。
悪くはない。あんなにもメンチを切り合って喧嘩したというのに、武藤様の心情は悪くないらしい。
「転校生に……俺たちの武藤様が……?」
由々しき事態である。
王道学園──この私立超王道高校は、名に違わぬラブストーリーを始めようとしているのかもしれない。
いにしえのチャラ男を装いつつ畑の世話に邪魔にならないような服装である、さすが俺。
「あ? お前ジャージかそれ……」
「おしゃれジャージだよ~。どうせ汚れんのに制服着れるわけないじゃ~ん」
洗面所から戻ってくると、武藤様はスマートなウォッチをつけている。朝ジョグの用意ができたのだろう。
俺はといえば私服に見えるジャージの中に無地の白T。修学旅行の際、スキー研修で入り用になったものをまだ使っている。
「……今日肌寒いぞ」
「え? まさかぁ! 確かにちょっと寒いけど、寒さにもだいぶ慣れてきたしいけるって~!」
「室内だからな」
武藤様がリモコンを操作し、ガラス張りの窓を開ける。小さな駆動音と共に入り込んでくるありえんくらいの冷たい空気。
「寒い!!!!!!!!!」
「雪の日に調子乗って外出る犬じゃねぇか」
ウィーーーーン……と窓が閉じる。武藤様はだいぶ平気そうである。どういうこと? イエティの末裔とかなの? めちゃくちゃ美形のイエティなの?
「走りに行くから防寒対策してんだよ。おい、蹲るな。寝たら死ぬ寒さでもねぇだろ。寒さに乗じて怠けを出すな。お前雨だから外出なくていいって言うタイプか?」
言うタイプである。中学にトラウマはないが、雨で公共交通機関が停止することを待ち望み入念に天気予報とか見てた。
ぐだぐだしてても仕方がないので、部屋に戻って作業用の上着を着て戻ってくる。長靴とかは向こうに置いてあるので手ぶらだ。
上着を着てきた俺を見て、武藤様は何がどうしてかちょっと残念そうな顔をした。えっそんなダサい? ブランドのやつなんだけど……
「会長さま、もう出るの~? 俺も出ちゃおっかな~」
ウワサになっちゃうかもね~と笑えば、武藤様はいつも通り堂々推した、どこか冷徹な匂いの感じる表情で鼻を鳴らした。
「フン。テメェこそ、あの転校生は良いのかよ? 噂になってるぜ?」
「……へぇ~」
へぇ~~~~!
そゆこと教えてくれる友達がいないので知らなかった。
俺はまぁそこそこ有名人(悪い意味で)だが、俺なんかの噂をして何が楽しいのだろうか。おぼこい転校生たぶらかした最低男としてめちゃくちゃ悪口とか言われてるのかな。死にたい
「ッハ、知ってるくせに白々しい」
「……まぁね?会長さまがわざわざそんな噂を気にするなんて~って思っただけ~。なぁに? 気に入っちゃった?」
扉に鍵を差し込み、閉める。早々にエレベーターを呼び出した武藤様に小走りで駆け寄って笑えば、否定されると思ったのに何やら考え込んでいる様子。
えっ? まって? ほんとに?
「気に入った……なぁ?」
じろり、と金色の瞳が俺の全身を検分するようにざっと見つめた。
「最悪だとばかり思ってたが……ハン、想定よりは悪かねぇ」
──王道学園、という文化がこの世にある。
全寮制男子校で圧倒的な権力を持つ、美麗な男ばかりが揃った生徒会。
そんなところに芋臭い男が転校してきて、あれよあれよという間に学校の有名人に気に入られる、そういう文化。
(……え?)
エレベーターが一階に着く。さっさとジョギングに行ってしまった武藤様を眺めながら、俺はエレベーターの中に立ち尽くしていた。
悪くはない。あんなにもメンチを切り合って喧嘩したというのに、武藤様の心情は悪くないらしい。
「転校生に……俺たちの武藤様が……?」
由々しき事態である。
王道学園──この私立超王道高校は、名に違わぬラブストーリーを始めようとしているのかもしれない。
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