王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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食堂に行くと、水瀬はとっくにテラス席の近くに座っていた。いつも通りの位置である。

「げ、また座るところがねぇ」
「まったく、大月のせいだぞ! お前が暴れるから……」

二年生二人の言う通り、食堂内はとっくに混み合っている。二人とも顔がいいのだし、その特権を活かせばどこでも座れるだろうと思うが、誠実な二人はそれもできないのだろう。

「生徒会役員だったら席自由なんだけどね~……二人とも、そういえばクラスどこなの~?」
「Aです」「A」
「A!? エリートじゃ~ん……」

我が校は家柄や美醜によってAからFまでクラスが分かれている。

家柄が由緒正しく、見目の美しい人間はAクラス。
家が貧乏で見目のよくない人間はFクラス。
カスのルッキズムである。

まぁしかし、これは成績も大いに関係してくるので一概にこうとは言えない。

いわゆる不良はいくら家柄が良くても下位クラスに落ちることだってあるし、いくら家柄が悪くとも特待生とかは簡単に最上位クラスに行ける。

ちなみに俺はCクラスです! 一家が一代成り上がりの成金だし成績もそこそこなので!

「役員だからAクラスの場所でご飯食べてるだけなんだよね~。日光浴大事」
「植物みてぇな奴だな……」
「あはは。この学校、家柄は何より重視されますからね……」

そう。クラス査定のよくわからんところはこれもある。見目より家柄の方が重視されるが、具体的に何代続けば由緒正しいとかはないのだ。
まぁ、俺に関しては全然妥当なので不満もないが。

「ま、難しい話はナシナシ! 今日もおれんとこでご飯食べていきな~。ゆっくり座って友達と食べる、これが心の健康にはいちばん!」

水瀬に手を振ると、読書から顔を上げて振り返してくれた。駆け寄ってグデンとした獅童くんを椅子に座らせる。

「なんでそんな面白いことになってんだ、この坊ちゃんは」
「薬盛られたってさ」
「ここって時々法律通用しないよな」

気に入ったらしく、新しい味のパニーニを既に食べている。テラス席で読書しながら片手にパニーニて。おしゃれか。

「おれもご飯買ってこよ~。ちょっと荷物見てて」
「おう。じっと見とくわ」
「嘘でしょ? この流れで見ておくだけなことある?」
「俺たち見ておきますんで」

早よ行けの圧がすごい。しれっと後輩二人は獅童くんの両脇を確保してしまい、長方形の六人掛けテーブルなので水瀬の隣に座るしかなくなった。

ちなみに普段はテラスの方が見やすいよう、水瀬の正面に座っている。水瀬は頑なにテラスに背を向けるので。

なんとなく疎外感を感じつついつも通り餃子定食を買う。

「あ、食券これ、」
「モウ出来てーるヨ!」

相変わらず提供が早い。ちなみにこの独特な喋り方の人はここで三十年勤めている三つ星シェフのリョーリ=ウマーイさん。
三メートルを超える巨躯に爆速調理、爆速提供で生徒たちの人気を博している。

身長が高すぎるために食堂の窓から足くらいしか見えず、誰も顔を知らないという。

「さ、みんなのとこ戻ろ、うわ!」

ウキウキと熱い餃子定食を持って戻ろうとすれば、誰かにぶつかった。どん! という音と共に目の前の人が少しよろける。
支えようと手を伸ばし、こちらに引き寄せたはいいものの餃子定食を取り落としかけた。危ない!

思わず目を瞑って、衝撃を待つ。

「……っえ、無事……?」

──誰かによって餃子定食が支えられ、無事な姿で手元に戻ってきた。
この無骨だけど少し温かみのある、力強い手は……

「ンン~Mr.田中! 落とすとアッツイからネ! 気をつけてーネ!」
「ウマーイさん! ありがと~!」

流石ウマーイさんは三メートルあるだけあって手も長い。
餃子定食を受け取って無事なのを確認し、感謝の意味を込め握手をすればウマーイさんも力強く握り返してくれる。

この人足部分以外存在してたんだ

「……この人足部分以外存在してたんか」
「びっくりしたよね、ってうわ!? 会長さま!?」

すぐそばから聞こえてきた声にギョッとして見上げる。ほど近い距離に武藤様、率いられている生徒会執行部の面々。
餃子定食に気を取られて気が付かなかったが、周囲の視線がこちらにじっと集まっていた。

「……はぁ、またあのチャラ男?」「ちょっと信者が多いからって調子乗って」「今の見た? 武藤様の腰に手当ててさ」

ひぇ~~~~信者に殺される!!
てか俺今武藤様の腰に手当ててた!?
支えてたもんね!?
光栄と喜びと恐怖と畏れの狭間でどうにかなりそう!!
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