22 / 201
21
しおりを挟む
食堂に行くと、水瀬はとっくにテラス席の近くに座っていた。いつも通りの位置である。
「げ、また座るところがねぇ」
「まったく、大月のせいだぞ! お前が暴れるから……」
二年生二人の言う通り、食堂内はとっくに混み合っている。二人とも顔がいいのだし、その特権を活かせばどこでも座れるだろうと思うが、誠実な二人はそれもできないのだろう。
「生徒会役員だったら席自由なんだけどね~……二人とも、そういえばクラスどこなの~?」
「Aです」「A」
「A!? エリートじゃ~ん……」
我が校は家柄や美醜によってAからFまでクラスが分かれている。
家柄が由緒正しく、見目の美しい人間はAクラス。
家が貧乏で見目のよくない人間はFクラス。
カスのルッキズムである。
まぁしかし、これは成績も大いに関係してくるので一概にこうとは言えない。
いわゆる不良はいくら家柄が良くても下位クラスに落ちることだってあるし、いくら家柄が悪くとも特待生とかは簡単に最上位クラスに行ける。
ちなみに俺はCクラスです! 一家が一代成り上がりの成金だし成績もそこそこなので!
「役員だからAクラスの場所でご飯食べてるだけなんだよね~。日光浴大事」
「植物みてぇな奴だな……」
「あはは。この学校、家柄は何より重視されますからね……」
そう。クラス査定のよくわからんところはこれもある。見目より家柄の方が重視されるが、具体的に何代続けば由緒正しいとかはないのだ。
まぁ、俺に関しては全然妥当なので不満もないが。
「ま、難しい話はナシナシ! 今日もおれんとこでご飯食べていきな~。ゆっくり座って友達と食べる、これが心の健康にはいちばん!」
水瀬に手を振ると、読書から顔を上げて振り返してくれた。駆け寄ってグデンとした獅童くんを椅子に座らせる。
「なんでそんな面白いことになってんだ、この坊ちゃんは」
「薬盛られたってさ」
「ここって時々法律通用しないよな」
気に入ったらしく、新しい味のパニーニを既に食べている。テラス席で読書しながら片手にパニーニて。おしゃれか。
「おれもご飯買ってこよ~。ちょっと荷物見てて」
「おう。じっと見とくわ」
「嘘でしょ? この流れで見ておくだけなことある?」
「俺たち見ておきますんで」
早よ行けの圧がすごい。しれっと後輩二人は獅童くんの両脇を確保してしまい、長方形の六人掛けテーブルなので水瀬の隣に座るしかなくなった。
ちなみに普段はテラスの方が見やすいよう、水瀬の正面に座っている。水瀬は頑なにテラスに背を向けるので。
なんとなく疎外感を感じつついつも通り餃子定食を買う。
「あ、食券これ、」
「モウ出来てーるヨ!」
相変わらず提供が早い。ちなみにこの独特な喋り方の人はここで三十年勤めている三つ星シェフのリョーリ=ウマーイさん。
三メートルを超える巨躯に爆速調理、爆速提供で生徒たちの人気を博している。
身長が高すぎるために食堂の窓から足くらいしか見えず、誰も顔を知らないという。
「さ、みんなのとこ戻ろ、うわ!」
ウキウキと熱い餃子定食を持って戻ろうとすれば、誰かにぶつかった。どん! という音と共に目の前の人が少しよろける。
支えようと手を伸ばし、こちらに引き寄せたはいいものの餃子定食を取り落としかけた。危ない!
思わず目を瞑って、衝撃を待つ。
「……っえ、無事……?」
──誰かによって餃子定食が支えられ、無事な姿で手元に戻ってきた。
この無骨だけど少し温かみのある、力強い手は……
「ンン~Mr.田中! 落とすとアッツイからネ! 気をつけてーネ!」
「ウマーイさん! ありがと~!」
流石ウマーイさんは三メートルあるだけあって手も長い。
餃子定食を受け取って無事なのを確認し、感謝の意味を込め握手をすればウマーイさんも力強く握り返してくれる。
この人足部分以外存在してたんだ
「……この人足部分以外存在してたんか」
「びっくりしたよね、ってうわ!? 会長さま!?」
すぐそばから聞こえてきた声にギョッとして見上げる。ほど近い距離に武藤様、率いられている生徒会執行部の面々。
餃子定食に気を取られて気が付かなかったが、周囲の視線がこちらにじっと集まっていた。
「……はぁ、またあのチャラ男?」「ちょっと信者が多いからって調子乗って」「今の見た? 武藤様の腰に手当ててさ」
ひぇ~~~~信者に殺される!!
てか俺今武藤様の腰に手当ててた!?
支えてたもんね!?
光栄と喜びと恐怖と畏れの狭間でどうにかなりそう!!
「げ、また座るところがねぇ」
「まったく、大月のせいだぞ! お前が暴れるから……」
二年生二人の言う通り、食堂内はとっくに混み合っている。二人とも顔がいいのだし、その特権を活かせばどこでも座れるだろうと思うが、誠実な二人はそれもできないのだろう。
「生徒会役員だったら席自由なんだけどね~……二人とも、そういえばクラスどこなの~?」
「Aです」「A」
「A!? エリートじゃ~ん……」
我が校は家柄や美醜によってAからFまでクラスが分かれている。
家柄が由緒正しく、見目の美しい人間はAクラス。
家が貧乏で見目のよくない人間はFクラス。
カスのルッキズムである。
まぁしかし、これは成績も大いに関係してくるので一概にこうとは言えない。
いわゆる不良はいくら家柄が良くても下位クラスに落ちることだってあるし、いくら家柄が悪くとも特待生とかは簡単に最上位クラスに行ける。
ちなみに俺はCクラスです! 一家が一代成り上がりの成金だし成績もそこそこなので!
「役員だからAクラスの場所でご飯食べてるだけなんだよね~。日光浴大事」
「植物みてぇな奴だな……」
「あはは。この学校、家柄は何より重視されますからね……」
そう。クラス査定のよくわからんところはこれもある。見目より家柄の方が重視されるが、具体的に何代続けば由緒正しいとかはないのだ。
まぁ、俺に関しては全然妥当なので不満もないが。
「ま、難しい話はナシナシ! 今日もおれんとこでご飯食べていきな~。ゆっくり座って友達と食べる、これが心の健康にはいちばん!」
水瀬に手を振ると、読書から顔を上げて振り返してくれた。駆け寄ってグデンとした獅童くんを椅子に座らせる。
「なんでそんな面白いことになってんだ、この坊ちゃんは」
「薬盛られたってさ」
「ここって時々法律通用しないよな」
気に入ったらしく、新しい味のパニーニを既に食べている。テラス席で読書しながら片手にパニーニて。おしゃれか。
「おれもご飯買ってこよ~。ちょっと荷物見てて」
「おう。じっと見とくわ」
「嘘でしょ? この流れで見ておくだけなことある?」
「俺たち見ておきますんで」
早よ行けの圧がすごい。しれっと後輩二人は獅童くんの両脇を確保してしまい、長方形の六人掛けテーブルなので水瀬の隣に座るしかなくなった。
ちなみに普段はテラスの方が見やすいよう、水瀬の正面に座っている。水瀬は頑なにテラスに背を向けるので。
なんとなく疎外感を感じつついつも通り餃子定食を買う。
「あ、食券これ、」
「モウ出来てーるヨ!」
相変わらず提供が早い。ちなみにこの独特な喋り方の人はここで三十年勤めている三つ星シェフのリョーリ=ウマーイさん。
三メートルを超える巨躯に爆速調理、爆速提供で生徒たちの人気を博している。
身長が高すぎるために食堂の窓から足くらいしか見えず、誰も顔を知らないという。
「さ、みんなのとこ戻ろ、うわ!」
ウキウキと熱い餃子定食を持って戻ろうとすれば、誰かにぶつかった。どん! という音と共に目の前の人が少しよろける。
支えようと手を伸ばし、こちらに引き寄せたはいいものの餃子定食を取り落としかけた。危ない!
思わず目を瞑って、衝撃を待つ。
「……っえ、無事……?」
──誰かによって餃子定食が支えられ、無事な姿で手元に戻ってきた。
この無骨だけど少し温かみのある、力強い手は……
「ンン~Mr.田中! 落とすとアッツイからネ! 気をつけてーネ!」
「ウマーイさん! ありがと~!」
流石ウマーイさんは三メートルあるだけあって手も長い。
餃子定食を受け取って無事なのを確認し、感謝の意味を込め握手をすればウマーイさんも力強く握り返してくれる。
この人足部分以外存在してたんだ
「……この人足部分以外存在してたんか」
「びっくりしたよね、ってうわ!? 会長さま!?」
すぐそばから聞こえてきた声にギョッとして見上げる。ほど近い距離に武藤様、率いられている生徒会執行部の面々。
餃子定食に気を取られて気が付かなかったが、周囲の視線がこちらにじっと集まっていた。
「……はぁ、またあのチャラ男?」「ちょっと信者が多いからって調子乗って」「今の見た? 武藤様の腰に手当ててさ」
ひぇ~~~~信者に殺される!!
てか俺今武藤様の腰に手当ててた!?
支えてたもんね!?
光栄と喜びと恐怖と畏れの狭間でどうにかなりそう!!
242
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる