王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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そんなこんなで一週間ほど経ち、同居生活も板についてきた。最近の俺は料理をしてもらう代わりに洗濯や掃除は俺が請け負っている。

「田中さまー!! 獅童がテストやらかして呆然としてます!!」
「それも俺なのォ? え、何やった?」
「めちゃくちゃ自信満々に書いたら解答欄全部ずれてて小テ0点やりました」
「あーーしばらく引きずるやつ……」

獅童くんに関しても、他人に暴力を振るう事は無くなってきた。たまにウズウズする事はあるが、嫌がらせをしてきた相手には仁川先生に言うなりして適切に対応しているらしい。

俺が怒った翌日仁川先生に頭下げたらしく、何をしたんだと詰められたのはそろそろ思い出になっている。

「声かけてもぜんっぜん動かなくて! 移動教室なんで引きずって行こうかと思ったんですが」
「筋肉あるから重いよねぇ~……」

協力して世話をするとみんなの前で宣言した親衛隊の子──島田くんというらしい──はどうやら元来世話焼きな気質らしく、積極的に獅童くんが何かやらかすたびに対処し、無理そうだったら俺に教えてくれている。

三年教室から一階下がって二年教室に行くのもそろそろ手慣れてきた。
Aクラスの教室を覗くと、後ろの方で魂が抜けている獅童くんを発見する。

「獅童くーん」
「センパイ!」
「ごふ」
「うわこいつ動きやがった! 現金!」

飛びついてきた指導くんを受け止めると、島田くんが嫌そうに顔を顰めた。

しかし、この取り乱しようも理解はできる。

我が校において成績とは明日の立場を分けるものであり、ただの小テストされど小テスト。普通の高校における中間テストみたいな認識だと思って欲しい。

「……みたいなことを説明したら、今日の小テストにやけに怯えてたんだよね~」
「獅童、意外と成績気にするからね……」
「やって……やって、祐司が……あんまりにも成績悪なったら進級できんって言うとった……」

い、市ヶ谷くん!!
最近わかったが、市ヶ谷くんは意外と性格が悪い。成績がいいのは事実なので信じ込んでしまったのだろう。ちなみに東郷くんもわりといい。

「だいじょーぶだよ~。確かに二年の前期で一定水準までいかなかったら再履修だけど、まだそんな焦る段階じゃ」
「田中さま、僕たち二年です」
「あっ…………」

島田くんの言葉に一瞬言葉を失う。そういえばそうだった。転校生ってなんとなく一年下に見ちゃいがちなんだよな。

そして俺の情報が追い打ちになったらしく、獅童くんが小刻みに震え始めた。

「ど、どうしよ。進級できんかったら俺オヤジに殺される」
「獅童ってそれがガチそうで怖い。別に気にすることなくない? 獅童、転入時の成績主席じゃん」

そう。獅童くんは実はめちゃくちゃ頭がいい。緊張してたり焦ってたりすると本来の実力が発揮できないだけで、落ち着いて臨めるテストだと優秀な結果を残している。

「ま、授業の欠席が一番良くないと思うけど~……成績的に?」
「!! 次移動教室やん!!」
「さっきから言ってるだろー!!」

俺の言葉に飛び跳ねた獅童くんが、俺に一礼したのち教室を飛び出した。それに怒りながら島田くんもついていく。市ヶ谷くんと東郷くんはもう向こうにいるのだろうか。
廊下走ると危ないよ、と口にしようとしてやめた。なぜなら俺も走るからです。

──昼食時も、今までの二年間からは考えられない状況に落ち着いている。現状は。

「よーおクソガキマリモ。今日もきゃんきゃん元気そうだな」
「どーーも? えーっと、俺様? パイセ~ン笑。今時ウケねっすよそのキャラ~」
「飼い主に似て生意気になってきたじゃねぇか。タンカの切り方でも教えてもらったんか?」
「アンタこそマリモ以外語彙力ないんか? お遊戯みたいなメンチしか習わんやったみたいやなぁ」

武藤様と獅童くんはどうやら相性がはちゃめちゃらしい。目が合うと絶対喧嘩し始める。しかも悪口がめちゃくちゃネチネチしてる。ちなみに武藤様は水瀬とも仲が悪いが、ここ最近は口の悪い獅童くんが噛み付くのが面白いのか水瀬の方はご機嫌である。

「ハッハー! キミ、見てごらんこれ! ボクの弟さ!」
「おっ、掴まり立ち。こんな偶然撮れたの~?」
「三日三晩はったよ! 大変だったね! だが、上の妹のような過ちは二度と繰り返したくなくてね!」

弟妹がいっぱいいるらしいレオさまは俺を気に入ったらしく妹や弟の写真を毎日見せてくれる。
弟妹がいる人間が赤ちゃんの頃の弟妹を見せるのは親愛表現である。猫飼いや犬飼いがペット見せる感じと一緒。
めっちゃ可愛いのを一緒に見て欲しい。
ちなみに持論だ。

「ねぇねぇ大月くん!」
「あそぼ~大月くん!」
「「どーっちだ!」」

双子は獅童くんが二人を見分けられるのが面白いらしく、くるくると二人で回ってどっちだゲームを仕掛けている。

「ッチ、いつか目ん玉引っこ抜いて奥歯ガタガタ言わせたるからな……んで双子は右が椿左が桜ァ!」
「「わー! すごいすごい!」」

なんだろうこの、子供がそんな好きでもない親戚のおじさんが懐かれてる感じ。
獅童くんって子供そんな好きじゃないけどわりと優しくしてくれる親戚おじさんのポテンシャルあるんだよな。

双子は二年生のはずなので獅童くんと同い年なのだが。

「田中クンもしよ!」
「田中クンも遊ぼ!」

そして教育係が俺だからか俺にも遊びを仕掛けてくる。もうすでにどっちがどっちだかわからん。
くるくると回る姿は花の妖精のように可愛らしいけれど、どーっちだ、とされても、線対象にそっくりなのだから。

「え~、じゃあクイズで~す」
「「?」」

なので俺は攻略法を編み出した。

「サンタさんが、ある男の子にサッカーボールをプレゼントしました。でも男の子は喜びませんでした。なーんででしょ」

初見のクイズらしい。双子は全く同じように首を傾げて、目を合わせて、少し考える。
数秒後同時に手を上げて、せーので答えた。

「ほしくなかったから? ゲームの方が好きだったらそっちのが良かったんじゃないかな?」「男の子に足がなかったのかなっ!」
「はい、左が桜くん、右が椿くん」
「椿!?」「あれーっ?」

そう。
サイコパス診断においてサイコパスの回答をした方が弟の椿さまだ。怖すぎる。なんなんだこの双子。
いや、兄の方はめちゃくちゃ困惑している。というか双子で破天荒なことしてる方が大抵椿さまでそれに困惑したり困ったりしてる方が桜さまである。

「うう、また引っかかっちゃった! 田中クンのクイズは魔法のクイズだね?」
「今度は負けないもんねー!」

わー、と今度は市ヶ谷くんたちに絡みに行く。副会長がそれに対してドン引きした顔をしていたが気にしたことではないのだろう。

俺は武藤様からもらった弁当箱を出し、ぱかりと開ける。今日はテーマ『遠足』らしく、三つ編み型のほうれん草とかレゴブロックっぽいベーコン? とかが入ってる。

「おお……」

砂糖ガン入れの甘い卵焼き。艶々の黄色に目を輝かせていると、目の前から視線を感じた。

「へぇ、今日もうまそうだな」

武藤様の名誉のために、俺の保身のために同居人であることは他の生徒には秘密である。しらばっくれた武藤様にちょっと笑いが漏れた。

「料理のうまい同居人がいるからね~」
「言ってろ」

そのまま武藤様はすぐ、煽り散らかしてきていた獅童くんと喧嘩し始めた。人が喋ってる時に煽り散らかすんじゃない。
甘い卵焼きを満足してもふもふと食べながら、俺は考えた。

(やっぱ、武藤様って獅童くんのこと好きなんだろうな)

だって今まで二年間、獅童くんがいないと絡んでくることなかったし……さ!
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