王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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激動! 体育祭!

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──男は、猛獣であった。

学がない、遠慮がない、常識もない。世間の外れもの。ただ獰猛に、自分の正義に従う獣であった。
正義のためならば、何をするのも厭わなかった。男は男自身の道理に生きていた。

「痛……い……体が……」
「どうして、どうして……」
「母さん、父さん」

この学園はおかしい。そう気が付いたのは一年生の時。その時の生徒会長に連れられ、旧体育用具室の付近を見せつけられた。
そこには、到底口に出せないようなを振るわれた生徒たちが、見るも無惨に転がっていて。

「な、なんじゃ、こりゃあ……」
「居場所が無いのですよ、彼らには」

生徒会長は穏やかな男であった。いつも優しげな笑みを浮かべていたが、彼に逆らえるものは誰もいない。
彼の目に見据えられればただ俯き、冷や汗を垂らすしかない。田舎から出てきて、男は散々それを叩き込まれた。

「可哀想に。この学校は学力、家柄、見目……その三つのみが全てです。それは毎日を競争社会と変え、あぶれた人間はこんなふうに打ち捨てられる」
「な──なんちゅーことを。ア、アンタが助けちゃらんのやか?」
「僕が? 彼らを助ける? どうして?」

どうしても何も、なかった。だって目の前で傷ついているのだ。しかし確かに生徒会長強者がわざわざ生徒弱者を助ける理由は無い。少なくとも男の狭い常識であればそうで、生徒会長はそれをよくわかっていた。

「聞きなさい、イブキ。可愛いイブキ」

男は誰にも従わない。
ただ己の正義だけを──



耳に吹き込まれた言葉を、男の正義は拒絶できない。
生徒会長は、用意周到なひとであった。現一年生の生徒会長を目の敵にしているのも、よく知っていた。

「分かるでしょう? おまえが助けたいと思ったのだから、その責はおまえにあるのです」

しかし、会長は決して直接的な指示は出さず。肩に優しく手を置き、男が目を逸らすのを防いだ程度で。

それで充分だった。

「生徒会は彼等に、助けの手など差し伸べない」

ではどうするべきか。
この、邪魔なものは切り捨てられる絶対的な世界で、邪魔なものに成り下がった彼等は。
単純明快で、よほど小学生のさんすうを解くより簡単なこと。

「おんしら、居場所が無いんか?」

傷つき果て、少し動く体力もないような彼等に手を差し伸べる。ひとまずは休ませてやらねばならない。
良識に従ったのではない。会長に言われたのでもない。男は男の正義に従っている。
──その正義が深く歪んでも。


そうして、綿密に準備をしていたはずの体育祭。
仕掛けをほぼ全て看破され、体育祭に打撃を与えることは難しいと報告が入った。仕掛けをするのに使ったイブキ派の人間が捕まる前に残していた連絡。

(まぁ、構わん)

ハナからうまくいくとは思っていない。
今までで最もでかいことを成すつもりなのだから。

イブキはいつもの学ランを羽織った。ばさり、とカラスの羽のように空気を含んで翻る。

『昼休憩の終了時刻、五分前です』

「あ、もうそんな時間かー」「やべーまだ疲れ取れねー」「大丈夫? 足捻った?」「弁当めちゃくちゃ美味かった」「あいつトイレから帰ってこんな」

恵まれた生徒の喧騒が聴こえる。
居場所がある、何かに秀でた人間たち。
居場所のない人間を、奴隷のように扱った奴らの。

『──

イブキは今日も、イブキの正義に従っている。
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