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密着! 夏休み旅行!
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もうすっかり二十階にくるのも慣れたものだ。少し長い待ち時間も、静かなエレベーターの駆動音も、鍵を回す時の軽い音も聞き慣れた。
「ただいま~」
「おう」
扉を開ければおいしいご飯。リビングにたどり着くための廊下すら長いと思えるくらいだ。腹の底がキュルルと唸った。
「今日冷やし中華? 良いねーやけに暑かったし、お腹もすいたー」
腹を摩りながら仕事着を洗濯機に放り込む。
元々は自分で洗っていたのだが、三人で暮らすようになってからは洗濯機を回すペースも上がり、二度手間だからと纏めての洗濯になった。
「ああ? バイト先で食ってきてねぇのか」
「え? 何で、ごはん入んないだろ」
ここ最近は締めまで仕事を教えてくれるようになり、店を閉めた後は賄いも振る舞われる。
元々こうちゃんが働いていたのもあり、閉店も結構早いので時間もあるのだ。
今日はイブキが賄いを作る日だったので少し勿体なかった。まぁでも武藤様のご飯美味しいもんな。
そんなことをとりとめもなく話せば、武藤様が明らかに機嫌を上向ける。
「ほぉー」
「どしたん」
「ンでもねーよ。ま、イブキの吠え面が目に浮かぶぜ」
なるほど……
武藤様はけっこう些細なことで機嫌が良くなる。今回はイブキより自分の料理が優先されて嬉しいやつだな。
可愛い人なんだよ、意外と。
「あ? 何だそのカオ」
「何でもない」
帰り際真道(努力して敬語をやめさせた)に聞いた話だが、武藤様は元々真道の弟分だったらしい。というか、今の生徒会はわりと末扱いしていたそうだ。
『箱入りな奴なのだが、俺が家の事業や学業にかかりきりになって拗ねているのだ。昔からアイツは自分を一番に構ってもらえないと地団駄を踏み吐くまでギャン泣きする奴でな……』
かわいいエピソードすぎる。当然推しフィルターはかかってますなんだ文句あんのか。ない? ありがとう。
そうしてそれを甘やかし放置してきたからか、高校生になった今でも一番を競う性質が変わっていないらしい。
「いつだって武藤様が一番だよ。俺は武藤様強火担なんだから」
「……にしてはアイツの時テメーやけに喜ぶよな……」
え~拗ねてんのかわいい~~!
絵面だけで見たらデケェ男をデケェ男が睨みつけている全く可愛らしくはない光景なのだが、そして武藤様の睨みは眼光鋭く相当怖いため目の前の光景に可愛さ要素もないのだが。
「やだなー、俺が武藤様のご飯好きなのわかって言ってるだろ? 実際今日は武藤様を優先したわけだし」
「前は賄い食べてきただろうが…………」
「賄い制度はイブキが増えてから始まったやつだし、武藤様がご飯作って待ってくれてるなんて分かんなかっただろ?」
締め作業がいくら早いとはいえ、普段の生活リズムとは違う。
賄いが始まった最初あたりは、武藤様も流石に用意していないだろうとしこたま食べて帰ってきていたのだ。
俺たちが満腹なのを知った瞬間の、武藤様がしょげた顔といったら。あの瞬間俺は歴史改変のために地球をも割れた。
いただきます、と声をかけて箸を取って冷やし中華を口に入れる。うーん美味い。冷やし中華ってあの酸味と錦糸卵のまろやかさときゅうりの爽やかさ、そしてよくわからんハムと麺がうまく調和している気がする。
「ん」
個人的に紅しょうがはあってもなくても良い。が、武藤様は嫌なようで自分で作っておきながら俺の皿に寄越しがちだ。
「まぁ俺好き嫌いないから良いけどさぁ~……」
「皿並べた時に彩りが良くねぇと座り悪ィ」
「そういうもんかね」
トマトで彩りはクリアしてると思うけど。
紅しょうがは夏の味がする。冷やし中華もそうだが、焼きそばパンとかね。乗ってるよね紅しょうが。
「こういうさぁ、別に季節限定とかでもなくいつでも食べれる食材あるじゃん」
「おん」
「だからいつでも食べてるわけなんだけど、その割には思い出が書き換わることってなくない?」
腹が減ったら購買で焼きそばパンを買って早弁するが、その時についてきた紅しょうがに夏の味を感じている。夏以外に食べたことの方が多いってのに。
「だから俺たち、ある一定の年齢を過ぎたら思い出とか新しくなくなって、思い出の味を反芻して食べて生きてるんだなーと思った」
「怖いこと言うな、急に」
武藤様もこういうの怖いって思うんだ。
「ただいま~」
「おう」
扉を開ければおいしいご飯。リビングにたどり着くための廊下すら長いと思えるくらいだ。腹の底がキュルルと唸った。
「今日冷やし中華? 良いねーやけに暑かったし、お腹もすいたー」
腹を摩りながら仕事着を洗濯機に放り込む。
元々は自分で洗っていたのだが、三人で暮らすようになってからは洗濯機を回すペースも上がり、二度手間だからと纏めての洗濯になった。
「ああ? バイト先で食ってきてねぇのか」
「え? 何で、ごはん入んないだろ」
ここ最近は締めまで仕事を教えてくれるようになり、店を閉めた後は賄いも振る舞われる。
元々こうちゃんが働いていたのもあり、閉店も結構早いので時間もあるのだ。
今日はイブキが賄いを作る日だったので少し勿体なかった。まぁでも武藤様のご飯美味しいもんな。
そんなことをとりとめもなく話せば、武藤様が明らかに機嫌を上向ける。
「ほぉー」
「どしたん」
「ンでもねーよ。ま、イブキの吠え面が目に浮かぶぜ」
なるほど……
武藤様はけっこう些細なことで機嫌が良くなる。今回はイブキより自分の料理が優先されて嬉しいやつだな。
可愛い人なんだよ、意外と。
「あ? 何だそのカオ」
「何でもない」
帰り際真道(努力して敬語をやめさせた)に聞いた話だが、武藤様は元々真道の弟分だったらしい。というか、今の生徒会はわりと末扱いしていたそうだ。
『箱入りな奴なのだが、俺が家の事業や学業にかかりきりになって拗ねているのだ。昔からアイツは自分を一番に構ってもらえないと地団駄を踏み吐くまでギャン泣きする奴でな……』
かわいいエピソードすぎる。当然推しフィルターはかかってますなんだ文句あんのか。ない? ありがとう。
そうしてそれを甘やかし放置してきたからか、高校生になった今でも一番を競う性質が変わっていないらしい。
「いつだって武藤様が一番だよ。俺は武藤様強火担なんだから」
「……にしてはアイツの時テメーやけに喜ぶよな……」
え~拗ねてんのかわいい~~!
絵面だけで見たらデケェ男をデケェ男が睨みつけている全く可愛らしくはない光景なのだが、そして武藤様の睨みは眼光鋭く相当怖いため目の前の光景に可愛さ要素もないのだが。
「やだなー、俺が武藤様のご飯好きなのわかって言ってるだろ? 実際今日は武藤様を優先したわけだし」
「前は賄い食べてきただろうが…………」
「賄い制度はイブキが増えてから始まったやつだし、武藤様がご飯作って待ってくれてるなんて分かんなかっただろ?」
締め作業がいくら早いとはいえ、普段の生活リズムとは違う。
賄いが始まった最初あたりは、武藤様も流石に用意していないだろうとしこたま食べて帰ってきていたのだ。
俺たちが満腹なのを知った瞬間の、武藤様がしょげた顔といったら。あの瞬間俺は歴史改変のために地球をも割れた。
いただきます、と声をかけて箸を取って冷やし中華を口に入れる。うーん美味い。冷やし中華ってあの酸味と錦糸卵のまろやかさときゅうりの爽やかさ、そしてよくわからんハムと麺がうまく調和している気がする。
「ん」
個人的に紅しょうがはあってもなくても良い。が、武藤様は嫌なようで自分で作っておきながら俺の皿に寄越しがちだ。
「まぁ俺好き嫌いないから良いけどさぁ~……」
「皿並べた時に彩りが良くねぇと座り悪ィ」
「そういうもんかね」
トマトで彩りはクリアしてると思うけど。
紅しょうがは夏の味がする。冷やし中華もそうだが、焼きそばパンとかね。乗ってるよね紅しょうが。
「こういうさぁ、別に季節限定とかでもなくいつでも食べれる食材あるじゃん」
「おん」
「だからいつでも食べてるわけなんだけど、その割には思い出が書き換わることってなくない?」
腹が減ったら購買で焼きそばパンを買って早弁するが、その時についてきた紅しょうがに夏の味を感じている。夏以外に食べたことの方が多いってのに。
「だから俺たち、ある一定の年齢を過ぎたら思い出とか新しくなくなって、思い出の味を反芻して食べて生きてるんだなーと思った」
「怖いこと言うな、急に」
武藤様もこういうの怖いって思うんだ。
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