王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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密着! 夏休み旅行!

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ひとまずある程度の打ち合わせを終わらせて、今日の日程である街歩きに入った。基本的に周囲とはバラバラにならなくてはいけない──密着して親睦を深める行事のため──ので、ルールに従ってみんなとは別れる。

一番ビビっていたイブキ副会長コンビには、迷惑をかけるからと打ち合わせに遅れて参加したユキちゃんがガイドとして付いている。

「ユキ殿、可憐だ……」
「まぁーユキちゃんは可愛らしいよね」

じんわりと染み入っている真道に呆れつつ同意を返す。ユキちゃんは確かに可愛らしい。まぁ童貞の夢に童貞が食いついているというのもあるが。

神社を降りると、和やかな港が見える。遠くの方では釣り人が糸を垂らしており、ここからしばらく行くと泳げるビーチがある。
地元の子供はここではなく、もっと奥の灯台周辺から飛び降りて度胸試しなんて言うのだけれど。

「泳いでみる~?」
「三日目の昼に予定があるだろう。今日はいい」
「ふーん。まぁいいならいーけど」

ここは別に俺たちだけの貸切というわけではなく、観光客はやはりほどほどにいた。楽しそうにカップルが波打ち際ではしゃいでいるし、日焼けをしたいのか寝転んでいる人間もいる。海の家は今日も盛況だ。

そんな様子を手錠に繋がれ、コンクリートでできた歩道から少し眺める。直射日光がじりじりと肌を焦がし、露出している部分が熱をもつ。

真道のシミひとつない真っ白な夏服が太陽に反射していて、その輝かしさが面白かった。

「はは! あっちいねー。涼めるところにでも行こ~」
「む、しかし観光は……」
「砂月屋と神社でじゅーぶん! 山と海しかねーとこだから!」

観光名所なんてほとんどない。古びた灯台が登れて珍しいくらいだが、老朽化によって今はもう封鎖されている。とことん何もないのである。

けれど、ぐっと伸びをすると潮風をはらみバタバタと制服がはためいた。穏やかな海の音と遊ぶ声、潮の香り。車の音、豆腐売りの放送。
遠くから聞こえる、町に一つしかない小学校のチャイムは今日も聞き取りづらい。

「のどかでいーとこでしょ。コレがあるんだから、都会になんて染まんなくていーのにね」
「……お前は家が好きなんだな」
「あは、まぁねー」

実家が嫌いなわけがない。地元に帰った時はいつもほっとした心地でいるし、風鈴の音を聞きながら冷房のない自室で風にあたり昼に起きて漫画を読む生活を素晴らしいと思っている。
呆れながら冷やした麦茶を渡してくれる母の愛も含めて。

「羨ましい。俺は家が嫌いだ」
「……それ、ふくかいちょーとかじゃなくておれに言うのであってる~?」
「ふむ。師匠は政界に関わらないからな……瑛一や刑部には逆に気を使う」
「そんなもんかね~」

予期しないところで武藤様の名前が出てどきりとする。この旅行中忘れようと勤めていたあの綺麗な目が脳裏に浮かんで頭を振った。忘れなければいけない。俺なんかが想いを寄せていい相手ではないのだ。帰ったら同居解消を持ち出せばいい、できれば自然に。

「ところで、今はどこに?」

ずんずんと進んでいった俺に繋がれて真道が困惑したように声をかける。
足が勝手に歩を進めていたらしい。こう言う時なかなかに地元というものは便利だ。

「そりゃ、休憩できるところ──サッと体を隠すな不快だなー。普通にカフェだよ。喫茶店」
「ふ、ふむ。喫茶店とは……りんご飴専門店か?」
「そんなん都会に行けばいくらでも見れるだろ。その場にしかないもので楽しむのが旅行上級者なんだよ」

言いながら浜辺を離れ住宅街に入る。ここの道々は気まぐれなので時折見たこともない路地裏が出現するが、これらは基本的に探そうとしても見つからない駄菓子屋や貝殻売りに繋がっている。お面もここから買い付けるのだ。

そんな路地裏をさっさと抜け、本来の曲がり角をいくつか曲がる。

「もともと空き地だったんだけどね~。立地がそこまで良くない代わりに安くてうまい喫茶店ってわけ~」

和モダンな外観の喫茶店が、路地裏を抜けた先へ唐突に現れる。知らない制服を着た男たちが中にいるのが見えた。他校の観光客だろうか。

カラコロ、とドアベルを押して入る。

「なぁーいいじゃねぇーか店員さん! 連絡先だけ、なっ!」
「困りますっつってんだろボケが……」

見覚えのありすぎる金髪とどすの利いた声。俺はそっとカウンターに座った。

「マスター、ホットミルクとかある?」
「師匠、あれ姉上殿では」
「めあわせちゃダメだよ食われるから」

見えてない見えてない。猛獣に喧嘩を売るチワワなんて一つも見ていない。そんな不幸な存在。俺はいつでもメニュー表にしか目がいっていない。良い材質だ。

「おいクソ弟何平然としてんだ? あん? テメーから海の藻屑にしてやっても良いんだぞ」

クッッソこの暴君が!!!!!!!!!
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