王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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監禁! 最後の文化祭

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さて、こうして無事に旅行から戻ってきた俺は話があり、武藤様とイブキを集めた。とはいえご飯を食べながらの話ではあるが。

帰ってくるのは実に……一週間くらいぶりである。いうてあんまり家出しなかったな。

「ああ、家出しちょったなそういやぁ」

イブキもこの反応だ。特にこいつは旅行で普通に一緒に居たので、ちょっと家空けてたなくらいの認識だろう。

獅童くんの部屋に常にお邪魔になるわけにもいかないし──獅童くんはずっと居ていいと言ってくれたが、先輩が常に一緒にいるのってプレッシャーでは?──だからといって好きな人と同室でいられて耐え切れる俺ではない。

ユキちゃんに『素敵な人』と言われたからにはそうなのだろう。
が、それはそれとして好きな人近くで寝てて襲わない自信がないのでまいったなコリャ。性欲猿は困るぜ。

「…………なんだと?」

デミグラスソースのかかったオムライスをパクつけば、卵が口の中でとろとろと踊っている。デミグラスってなんで無条件に美味しいんだろうか。久々の武藤様ご飯は鈍り切った俺の舌をまた新たに感動させてくれた。

「いや、だから、部屋を分けないかって提案なんだけど」
「なんか支障でもあんのかよ」
「いや別に……ただ、流石に園芸委員会に身が入ってないなと思ってさ。後期は旧校舎に住むかなと思ってんだわ」

元々そうであったし、昔の生活に戻るだけだが。一緒に聞いていたイブキはそんなもんかと納得してでかいあくびを一つこぼした。腹が満ちてきて眠くなってきているのだろう。

ダイニングテーブルの正面に座り、同じオムライスを食べていた武藤様はぎっと眉間に皺を寄せる。機嫌が悪い……というか、俺には分かるが我儘を通そうとしている時の顔だ。

「断る」

ほらね~~~~。
武藤様と暮らし、真道からも保証され、俺自身が友人として──とまではいかなくとも、ちょっとした隣人として受け入れられているのは知っている。

(絶対ごねられると思った~!)

懐の狭い武藤様なので、隣人として受け入れられるだけでも相当許容されている方だ。そんな相手が急に離れようとすれば駄々を捏ねるに決まっていた。

「断るって言ってもな。この判断に関しては俺に権利があるはずだろ? 会長絶対って学校ではあるけど、生徒の自由は保障されて然るべきだ」
「俺は束縛なんてしねぇ。夜遊びがしてぇならすればよかっただろ」
「待て待て何でそうなる! 俺は童貞だって言っただろ!? 自由って言ったのは言葉の綾だ、謝るよ」

これが生粋の弟分のだだこねか。確かに真道が甘くなる訳だ。眼光鋭くこちらを見つめる姿はそれはそれは威圧感があるが、慣れてしまえば──それか恋フィルターがつけば可愛いものだ。

「料理だって、コイツの担当を増やしてもいい」
「わしの意見は?」
「いや、武藤様のご飯美味しいって。そうじゃなくて、ほら、武藤様からしたら急に二人も増えて手狭だろ?」
「改築すればいいだろ」
「オワーッイカれ金銭感覚。オタクとしては心配になる」

真道とかどうにかしないのかこれ。しなさそうだな。あいつも大概いかれてるし。
流石に俺のために改築させるわけにもいかないし、留まっちゃおっかなと思わないでもないが、しかしこのままでは確実にヒモになる。ダメ人間になってしまう。

好きな男にそんな醜態晒せるかよ。いや、今がカスなのは置いておいてね! 挽回の余地とかあるじゃん! あります!

「大体、お前は何も出来ねぇだろ。炊事洗濯もしないし放っておいたら同じものを毎日食べて帰って寝るだけ。そんな奴が今更一人で暮らせるかよ。新しい同室にも迷惑かけるんじゃねぇのか?」

ダメかも!
美味しいオムライスだけど、武藤様の圧が怖すぎてろくに味もわからない。嘘である。美味しいものはいつでも美味しい。

しかしこれで折れるならそもそも同居改称を持ち出してはいなかった。俺は懐からこれは出したくなかったけど、と書状を出す。

「これ」
「……、は?」
「旧校舎への入寮許可書。あそこ、正式に寮として認められたんだよ」
「ほぉ! 何も聞いちょらんなぁ!」
「言ってないからな。もともと居場所がなかった子の場所だから、審査は厳しいんだけど。色々と……学園としてまずい部分を洗い出して、理事長と話したら快く許してくれたよ」

寮として成立したので、一応旧校舎にいる彼らは寮生として守られる立場にあたる。部外者を入れるのを怖がる生徒も当然いるので、管理は自分たちでやってもらうことになるが。

ちなみに真道が協力してくれた。一年生の時からコツコツ記録を取っていたらしい。生真面目風紀委員長万々歳である。

「旧校舎に関しては、完全に自治を認められてる。こーいうの言ったら謀反かと疑われそうでさ、できれば隠しときたかったんだけども」
「……俺に口出しする権利はないって?」
「平たく言えばそう」

武藤様もネガティブなのか何なのか、物言いが幾分か刺々しい。
うーん……流石に諸手を挙げて歓迎されるというほどまで思ってはいなかったが、ほどほどに受け入れられると思っていたので驚いた。

「武藤様に危害を加えるつもりはない。これは本心だ。別に関わりを断とうってワケじゃなくて、そろそろ一人暮らしに慣れときたいなーって思ってんの」
「就職志望やったっけ?」
「そう! 社会人になるから……ね?」

慌てて言い繕い、何も知らないイブキからも援護射撃が飛ぶ。何やらむっつりと黙り込んでた武藤様は、俺の言葉に敵意はないと感じ取ったのか、深くため息をついた。

「…………いつだ」
「明後日くらいからならいつでも、荷物もまとめれるし……」
「一週間献立作ってんだよ、それ消費してからいけ」
「あ、はい」

ご飯は作ってくれるんだ。優しい。いや、一人暮らしにはいらないってことなのかな。

「イブキはどうすんだ」
「わしか? おーん、寮が出来たんやったらそこに住むで」

そうなんだ。継続して住み続けるもんだと思ってた。でも確かにイブキは世話焼きだし、旧校舎に移り住んで管理人みたいな形になるのも悪くはないかもしれない。

「なら今度管理人届け出せや。てめー、イブキ派に詳しいんだろ。入りたい奴の審査をお前がすりゃぁいい」
「わしが? えいのか?」
「お前ほど適任もいないだろ」

武藤様は基本的に正しいな。書類の書き方やもらい方を口頭で軽く伝え、晩御飯を冷やさないように食べ切る。
一週間後からは旧校舎での生活になる。せっかく新しく寮が出来ていくつか設備も整ったし、早く慣れないとな。


──そんなこんなで二週間後。

「ねぇこれもしかして監禁されてる?」
「今か」

俺は監禁されていた。

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