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監禁! 最後の文化祭
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「そういうわけで付き合った」
「脅して付き合わせたの間違いじゃねぇの?」
休学明け放課後、久方ぶりの旧校舎。特に俺の動向を疑問に思うことなく部活に下町のサークルにと精を出していた水瀬が、いつものベンチに座る俺を半眼で眺めていた。
何勝手にショック受けてんだお前お前俺はお前が暫く見ない俺に疑問を覚えなかった方がショックだよ。
「監禁されとった割に健康そうですねぇセンパイ」
「ああ、ジムで鍛えてたし三食しっかり食べてたから」
「おっ、自由な時より良い暮らししてんな」
三年生は大変だなぁと思いながら旧校舎の世話をしてくれていたらしい獅童くんが、俺の膝の上で丸まりながらそんなことを言う。
監禁されていたと告げた時はもう今にも武藤様を殺しに行きそうな怒り具合だったが甘やかして意識を逸らしている。
マジで武藤様並びに武藤様ファンクラブの奴らは俺に感謝して欲しいものである。
「しっかし、あの箱入りもなんてやつに目付たんだ。流石に同情するぜ……」
「まぁ八割くらい脅しやもんな。脅される方が悪いんやけど」
「おーーい監禁されてた俺への同情は??」
「いいのか? 本気にしたら水瀬の総力を上げて反旗を翻すが」
「いやぁ武藤様も大変だよね」
“ガチ”の目をしている。水瀬も結構心配してくれていたらしい。
なるほど、俺が監禁されてたと言った時どっかに電話してたのはそういうことだったか。武藤様、もう少ししたらちょっと痛い目を見るかもしれない、申し訳ないぜ。
俺が慌てて言い繕うと、水瀬は久々に見たような気がする飄々とした笑みを浮かべた。
「ははは。お前は自己肯定感の低いコミュ障で自分の行いに自覚的でないから嫌われがちなわけだが、俺はお前に救われてるからな」
「……、……んっ!? 褒められてる!?」
「褒めフェーズに入るまでに貶しが入りすぎとる」
「アクティブな陰キャなんて碌なもんじゃないが、大事なダチでもある。お前が思ってるより俺は怒ってるからな」
めちゃくちゃ良いこと言われてるのに貶しすぎだろ!! ああ~~~~懐かしい本家正論パンチ。相変わらず酷いが本当のことである。なんか安心するなもう。
なんか、水瀬に貶されても傷付かないんだよな、思ったことしか言ってないし結局俺のこと見捨てないし?
「まぁ~お前にとっては唯一の友達じゃねぇみたいだけどな。俺はお前のこと唯一だと思ってんのに」
「水瀬がいつもの俺みたいなこと言ってる!?!?」
「水瀬先輩はたまにやから許されとるけどセンパイはいつもこれ言っとるからメンヘラなんよな」
急に事実を言うなびっくりするだろ。
大体水瀬こそ俺のこと唯一じゃないし。なんだこいつは。仲のいい友達なんていっぱいいるくせに……
「俺は水瀬のことめちゃくちゃ好きだけど水瀬には唯一いっぱいいんだろ。ホストの使う手口みたいなんやめろよ」
「マジで言っとります?」
「え? うん」
そうだろ。だってこいつ俺のこと放っておいてほかの友達と遊びに行くんだぞたまに。
膝の上で好き勝手寛いでいた獅童くんがびんぞこ眼鏡の奥で信じられないみたいな顔をした。宇宙キャット……。
「な? おチビ。こいつの頭は満開なんだよ」
「園芸委員長やからって頭にまで咲かせんでも……」
こいつら……!
獅童くんと水瀬は波長が合うらしく、良く連携攻撃を仕掛けてくる。俺はノーガードである。ガードできる所以がないので。
「いっ、いやでも今回の俺はクレバーだったくない? 心配かけたのは悪かったけどさ……」
「心配もしたが、今ここにいる人間から“監禁されてるんだよね”とか言われても夢? って思うだろ。生き霊かと思ったわ」
「監禁された後自力で脱出してくる人間は初めて見たかもしれんですね」
それはそう。監禁から解放された後俺はその足で休学届を取り下げ、旧校舎に居を移した。少し大変だったが彼氏が積極的に手伝ってくれたのでどうにかなったのだ。彼氏、良い響きである。
「鍵開けが二種類できて良いのは盗賊だけなんだよ。脱出ゲームですら鍵見つけたりパスワード探したりするんだぞ」
「あれ俺共感できないんだよな。開ければ良いじゃんって思う」
「ゲームに向いとらんお人やなぁ」
それはそう。
監禁の話題にはもう飽きたのか、水瀬がそういえば、と話を切り替える。そういえばじゃないよ。
「文化祭ってお前ら何すんの。特に二年」
「えっ、俺らすか?」
「おう。三年はお前らの出し物を見て回るくらいしかやることないからな」
「ああ、確かに……俺たち三年はもうそろ受験とか就活だからなぁ……凝ったもんは出来ん」
文化祭当日楽しむくらいならできるが、もう秋になっていよいよ受験シーズンだ。俺たちは一応名門校なわけで、受験にしろ就活にしろ準備はとっくに進めておかなければならない。
実質最後の行事なのだ、文化祭は。
「インターン行けなかったんだよな、監禁で……武藤様の会社に入ろっかなとも思ったけど、コネ入社すぎるし……」
「妥当ではあるだろ。大事な時期殺されてんだから」
「それはそう」
インターンももちろんだが、説明会をリモートでするという会社も電子機器を封じられていたので受けられなかったし。でも恋人になった今、そんなおんぶに抱っこでいいのかという疑念が。
まあいっかあとで考えよ。
「とりあえず現実から逃げるか! それで、何すんの二年生」
「ヒョエ~三年は大変やな……。俺はメイド喫茶の予定ですねぇ」
「なんでナチュラルに尊厳破壊を?」
メイド喫茶て。毎年絶対どこかのクラスはするんだよな。Aクラスのメイド喫茶えげつないな顔面美が。えっじゃあ後の三馬鹿もするのか。
「まぁ見栄えのいいやつだけホールなるんで俺はキッチンに」
「いいね~、俺も行っちゃおっかなぁ」
「えっアッ俺“本気”でホール回すんで見とってくださいね!! 文化祭中ずっと!!」
「二年Aクラスで終わってしまう俺の文化祭が」
この口ぶりからすると変装を解くのだろうか。楽しみだ。文化祭誰と回ろうかな、こうちゃんとか誘ってもいいけど断られたら泣くし、誘っても優しく応えてくれそうな佐藤くんとか誘おかな。
「いや、あの箱入り誘えよ」
「ハッ……!!」
天才か?
「脅して付き合わせたの間違いじゃねぇの?」
休学明け放課後、久方ぶりの旧校舎。特に俺の動向を疑問に思うことなく部活に下町のサークルにと精を出していた水瀬が、いつものベンチに座る俺を半眼で眺めていた。
何勝手にショック受けてんだお前お前俺はお前が暫く見ない俺に疑問を覚えなかった方がショックだよ。
「監禁されとった割に健康そうですねぇセンパイ」
「ああ、ジムで鍛えてたし三食しっかり食べてたから」
「おっ、自由な時より良い暮らししてんな」
三年生は大変だなぁと思いながら旧校舎の世話をしてくれていたらしい獅童くんが、俺の膝の上で丸まりながらそんなことを言う。
監禁されていたと告げた時はもう今にも武藤様を殺しに行きそうな怒り具合だったが甘やかして意識を逸らしている。
マジで武藤様並びに武藤様ファンクラブの奴らは俺に感謝して欲しいものである。
「しっかし、あの箱入りもなんてやつに目付たんだ。流石に同情するぜ……」
「まぁ八割くらい脅しやもんな。脅される方が悪いんやけど」
「おーーい監禁されてた俺への同情は??」
「いいのか? 本気にしたら水瀬の総力を上げて反旗を翻すが」
「いやぁ武藤様も大変だよね」
“ガチ”の目をしている。水瀬も結構心配してくれていたらしい。
なるほど、俺が監禁されてたと言った時どっかに電話してたのはそういうことだったか。武藤様、もう少ししたらちょっと痛い目を見るかもしれない、申し訳ないぜ。
俺が慌てて言い繕うと、水瀬は久々に見たような気がする飄々とした笑みを浮かべた。
「ははは。お前は自己肯定感の低いコミュ障で自分の行いに自覚的でないから嫌われがちなわけだが、俺はお前に救われてるからな」
「……、……んっ!? 褒められてる!?」
「褒めフェーズに入るまでに貶しが入りすぎとる」
「アクティブな陰キャなんて碌なもんじゃないが、大事なダチでもある。お前が思ってるより俺は怒ってるからな」
めちゃくちゃ良いこと言われてるのに貶しすぎだろ!! ああ~~~~懐かしい本家正論パンチ。相変わらず酷いが本当のことである。なんか安心するなもう。
なんか、水瀬に貶されても傷付かないんだよな、思ったことしか言ってないし結局俺のこと見捨てないし?
「まぁ~お前にとっては唯一の友達じゃねぇみたいだけどな。俺はお前のこと唯一だと思ってんのに」
「水瀬がいつもの俺みたいなこと言ってる!?!?」
「水瀬先輩はたまにやから許されとるけどセンパイはいつもこれ言っとるからメンヘラなんよな」
急に事実を言うなびっくりするだろ。
大体水瀬こそ俺のこと唯一じゃないし。なんだこいつは。仲のいい友達なんていっぱいいるくせに……
「俺は水瀬のことめちゃくちゃ好きだけど水瀬には唯一いっぱいいんだろ。ホストの使う手口みたいなんやめろよ」
「マジで言っとります?」
「え? うん」
そうだろ。だってこいつ俺のこと放っておいてほかの友達と遊びに行くんだぞたまに。
膝の上で好き勝手寛いでいた獅童くんがびんぞこ眼鏡の奥で信じられないみたいな顔をした。宇宙キャット……。
「な? おチビ。こいつの頭は満開なんだよ」
「園芸委員長やからって頭にまで咲かせんでも……」
こいつら……!
獅童くんと水瀬は波長が合うらしく、良く連携攻撃を仕掛けてくる。俺はノーガードである。ガードできる所以がないので。
「いっ、いやでも今回の俺はクレバーだったくない? 心配かけたのは悪かったけどさ……」
「心配もしたが、今ここにいる人間から“監禁されてるんだよね”とか言われても夢? って思うだろ。生き霊かと思ったわ」
「監禁された後自力で脱出してくる人間は初めて見たかもしれんですね」
それはそう。監禁から解放された後俺はその足で休学届を取り下げ、旧校舎に居を移した。少し大変だったが彼氏が積極的に手伝ってくれたのでどうにかなったのだ。彼氏、良い響きである。
「鍵開けが二種類できて良いのは盗賊だけなんだよ。脱出ゲームですら鍵見つけたりパスワード探したりするんだぞ」
「あれ俺共感できないんだよな。開ければ良いじゃんって思う」
「ゲームに向いとらんお人やなぁ」
それはそう。
監禁の話題にはもう飽きたのか、水瀬がそういえば、と話を切り替える。そういえばじゃないよ。
「文化祭ってお前ら何すんの。特に二年」
「えっ、俺らすか?」
「おう。三年はお前らの出し物を見て回るくらいしかやることないからな」
「ああ、確かに……俺たち三年はもうそろ受験とか就活だからなぁ……凝ったもんは出来ん」
文化祭当日楽しむくらいならできるが、もう秋になっていよいよ受験シーズンだ。俺たちは一応名門校なわけで、受験にしろ就活にしろ準備はとっくに進めておかなければならない。
実質最後の行事なのだ、文化祭は。
「インターン行けなかったんだよな、監禁で……武藤様の会社に入ろっかなとも思ったけど、コネ入社すぎるし……」
「妥当ではあるだろ。大事な時期殺されてんだから」
「それはそう」
インターンももちろんだが、説明会をリモートでするという会社も電子機器を封じられていたので受けられなかったし。でも恋人になった今、そんなおんぶに抱っこでいいのかという疑念が。
まあいっかあとで考えよ。
「とりあえず現実から逃げるか! それで、何すんの二年生」
「ヒョエ~三年は大変やな……。俺はメイド喫茶の予定ですねぇ」
「なんでナチュラルに尊厳破壊を?」
メイド喫茶て。毎年絶対どこかのクラスはするんだよな。Aクラスのメイド喫茶えげつないな顔面美が。えっじゃあ後の三馬鹿もするのか。
「まぁ見栄えのいいやつだけホールなるんで俺はキッチンに」
「いいね~、俺も行っちゃおっかなぁ」
「えっアッ俺“本気”でホール回すんで見とってくださいね!! 文化祭中ずっと!!」
「二年Aクラスで終わってしまう俺の文化祭が」
この口ぶりからすると変装を解くのだろうか。楽しみだ。文化祭誰と回ろうかな、こうちゃんとか誘ってもいいけど断られたら泣くし、誘っても優しく応えてくれそうな佐藤くんとか誘おかな。
「いや、あの箱入り誘えよ」
「ハッ……!!」
天才か?
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