王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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監禁! 最後の文化祭

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「てか、そろそろ人も増えてきたね。忙しそう」
「見応えのあるところ多いからな、あんま回れてない気がする」
「例年そうでしょ」

別クラスのやっていたフルーツ飴を食べながら周囲を見回す。入校許可証をつけた見知らぬ人たちがゾロゾロと食べ歩いたり地図を見ながら小休憩していたり。今は校舎内エリアなので店員代わりの生徒も見えるが、外に出ると本当に校外の人でごった返しているのだろう。

「お姉さんたち来てそうだな~、去年も来てただろ。差し入れもらったし」
「あのゴリラ、外で恥晒してないと良いんだけど」

ウチは文化祭になると一家総出で遊びに来る。体育祭にはなかなか来れないのだが、どうせ活躍しないので──今回はともかく──来ないでもらって結構だ。

「水瀬の家族とかきてねーの?」
「……ハッ、あいつらは来ねーよ。犬神は?」
「来られても」
「だな。今更何話すってんだ」

おわ、一瞬空気がピリついた。どっちも家族のこと嫌いなんかな。あんま話したことなかった気がするそういうの……

「ふーん。そういえばくじ引きあるって」
「ここのくじ引き豪華そうだな」

そして今回も触れない。触らぬ神には祟りなし!
校内マップを開いて小休憩スペースでぎゅっと固まる。人が増えてきたのでだらだらできない。

クレーンゲームやくじ引き、ゲームセンターを模した出し物らしい。金があるなぁ。
ちょっと覗いてみるも、子供でごった返している。クレーンゲームやらはダンボールと裏方が手動で動かしてるっぽい。中はお菓子なので、余程じゃなければ一回の挑戦で取れるように調節されている。

「やったぁ! お菓子だー!」「すげ~!」

「子供の楽園って感じだな」
「あはは。別のところ行こっか」
「元気」

ゲームセンターとはいえ子供向け。ここで俺たちが入っていっても興醒めだろう。休憩中らしい親御さんに会釈して、踵を返したその瞬間。

わぁぁあん、と泣く声が遠くで聞こえた。
それも一人ではなく、数人程度。

思わず振り返ると、クレーンゲームが壁になってよく見えない奥の方にカードゲーム用っぽいコーナーがあるのが見える。
そこで高校生くらいの男が、小学生程度の子供たちからカードを奪っていた。

「ヒャッハァ!! ガキからカード奪うのは気持ちいいゼェ!!」
「わぁーん! 返してよぉ僕のカード!」
「あーん? もうお前のじゃねぇ、勝負に勝った俺のカードなんだよクソガキァ! ガキのくせにこーんなレアカード持っちまってヨォ! こりゃぁ高く売れるゼェ!!」

世紀末すぎるだろこいつ。よく見たらモヒカンだし。よく見ないとわからんくらいちっさいモヒカンならすんなよどういう情緒なんだ。
三人で顔を見合わせる。

「あれ何?」
「たまに場末で見かける光景なんだけど、子供相手にカード奪うのはちょっとどうかな」
「勝負……」
「そう、一応子供が自由意志でカード賭けた可能性もあるからね」

何はともあれ子供は泣かせてるわけだし、この泣き声で親御さんが不安そうな顔をしている。ああいう迷惑客はいる方が損失になるだろう。何より態度が悪い態度が。神聖なカードを振るな。スリーブにしまえ。

仕方がないので立ち上がった親らしい女性を愛想笑いで制して、懐からデッキを取り出して男に近付く。

「自然とデッキ出してくるのおもろすぎるだろお前」

水瀬がなんかウケてるが知らん。

「おにーさんっ! カード好きなんだぁ?」
「……ああん? 誰だテメェ」
「いやいや、別に誰とかはないよ。ちょっとカードが好きなだけぇ。ね、おれと勝負しない?」

言いながら、デッキの中からあるものを取り出す。男の目の色が変わった。気が付いたようだな、この、マニアに見せたら数万相当のレアカードに……
駆け寄ってこようとする生徒も俺の顔を知っていたのか足を止め、様子を見守っている。

泣いている子供達が鼻を啜りながら俺を見上げてきて、その頭を撫でた。

「賭けるカードは手持ち全て。さっきまでそうしてたんでしょ? 文句ないよね?」
「いーやダメだねェ! 割に合わね~ぞ! デッキひとつ分、これでどうだ」
「……まぁいいよ」

教室の角っこ、簡易的に作られたフィールドにつく。デッキひとつ分なら、数人から巻き上げたカードはある程度取り返せるだろう。まぁ取り返せなかったとしても、何度か勝てばいいだけだ。

不安そうに見守る子供達に視線を向ける。
次から大事なカードは絶対賭けちゃダメだからな。

「え、田中さま? なんで??」「田中さまってこういうオタクの遊びできるの……?」「なんか失望」

外野の生徒は静かにしておいてほしい。オタバレした後の反応がこの時代とは思えんほど冷たいんだが!? 俺に変な偶像を見出すんじゃない!! ホビーオタクのコミュ障に変な期待をかけるな!!
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