王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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監禁! 最後の文化祭

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大浮かれしている俺を置いて行こうとした水瀬達に追いついて、俺は鼻高々と武藤様に褒められた話をする。

「子供想いだって。武藤様、子供好きなんかなぁ。いやぁこれは俺のこと好きになってくれるかも」
「会長、が? ……ローストチキンはガーリック味が一番」
「ほら見ろよこの輪投げで最終的に取った虹色のよくわからん輪っかが連なってるやつ。めっちゃ長い」
「ローストチキンに関しては何本食うんだって話だしそれレインボースプリングな。うわでっか」

俺を置いて行った輪投げで得たおもちゃ、でっか。
縁日とかで買えるやつだ。レインボースプリングという。
未だにどうやって遊ぶか定かではなく、その割に子供の頃やけに好きだった思い出が大抵の人間にはあるのではないか。

「伸ばしたら二メートルくらいある。こんな長かったっけ?」
「見たのが子供の頃、不明瞭」
「子供の頃って何もかもがデカかったよなキッ○カットとか」
「キット○ットは実際に小さくなってるぜ」
「「!?!?」」

そうなの!?!? 水瀬の発言に俺とコウちゃんが同時に驚いた。マァムの方は知っていたが。チョコレート高くなってんのかな。まぁ今どき高級チョコとかあるしな……この間贈答用で買ったチョコ、一枚で八百円だった。

レインボースプリングをしゃかしゃかとさせて遊んでいる水瀬とクソデカチキンを貪るこうちゃんを抱え、俺たちは二年教室へと向かった。
まぁめぼしい一年教室は見てきたし、昼のシフトが入る前に顔を出しておきたかった。

「Aクラスだとあそこかな? ……おお、呼び込みのメイドだ」
「違法」
「はは。客のキャッチは禁止されてるんだよな、本来だと。まぁここは治外法権な訳だが」

それは常にそうである。常に治外法権。

「あっ♡田中様、きてくださったんですね♡」
「ん~? あーうん、約束してたから~……」

誰だっけ……
あーいや、覚えてる。去年園芸委員会に入ってきた子だ。その場のテンションでメッセージ交換したんだよな。でもそれ以降一回も話してない。そういう人がごまんといる。

園芸委員会も来なかったし、逆に覚えてるのが奇跡ということでね、だめですか。

「約束? 誰と約束してるんです? なつくんかな、はなちゃんかな」

いや全然知らん……
Aクラスに所属するだけある可愛らしい外見。栗色の髪をハーフアップにしたその子は少年と呼べるほど小柄で可憐で、庇護欲を刺激される見た目をしている。マスクで隠れている部分もAクラスなのだから整っているだろう。
とても男子高校生とは思えなかった。しかも二年生だしな。

「あ、あの、約束した子が見当たらなかったら、ボクと……」
「おー、モテてるなぁ宗介」
「通行の邪魔」
「ッ、水瀬ひろし……に犬神様!?」
「何で俺は呼び捨てなんだ? コラ後輩」

ちなみに俺の親衛隊から水瀬はほんのりと恨まれている。ずっしりと両肩に手を掛けて体重までかけてくる二人に文句を言いつつ、へらりと薄笑いは崩さない。

「そういうわけだから。案内してくれる~?」
「あっは、はい。でも田中様、ボク……」

物欲しそうな目で見られても、あまり人の通る往来でファンサするのもな。地元の人に見られるのが最悪の極み乙女だがそうでなくとも知り合い、ひいては知らん人に見られて調子乗ってんなと思われるだけで心折れる。拡散とかされたらもう舌噛むしかない。

俺は鞄をガサゴソと漁り、Aクラスに案内してくれたその子を呼び止めた。

「チップ……は、難しいから……。
まぁ、喉気をつけてね~? 合唱、やってたでしょ~?」
「ひゃ、覚えててくれたんですか……っ!」

水瀬が俺に寄りかかったまま胡乱な目を向けてくる。

(覚えてたのかよ)
(いや……)

覚えてない。これは俺の悲しき処世術だが、覚えていない相手は観察してプロフィールを把握する傾向にある。
店内をさっと見た限りマスクを着けている人は少なく、多分調理場に回っているのだろう。

キャッチに出るほど顔に自信があるのに、マスク。どうしてもつけなければいけない理由があると考えるべきだ。
可愛らしいフリフリのメイド服にもあっているかわいい猫型マスクだが、風邪をひいてそうな声ではなかった。

(後頭部につけてたの見たか? シリコン製のマスク用フック。あれを使うのは普段マスクをつけるやつだけだ。耳が爛れるのを防止するためだからな)
(それで、喉の保湿を怠ってない相手だと思ったわけか)

シリコン製の、百均で買える耐久性の高いシンプルなマスク用フック。俺も風邪引いた時に購入を検討してたことはあるが、それ以外にも使い勝手の悪い見た目重視のフックもあった。
声の通りも良かったので、あれは真剣に声楽をやっている人間の姿だ。

と感じ、偶然持ってたのど飴を渡したというわけだ。

俺の推理を披露すれば、水瀬は憐れんだような顔をした。

「お前の推理力、普通にすごいと思う反面人の顔を覚えられないのが欠点すぎるな」
「素直に褒めろや~~い」

こいつは一旦貶さないと他人を褒められないのか? この捻くれ者めっっ!

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